街場の憂国論 (犀の教室)

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  • 晶文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794968111

感想・レビュー・書評

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  • 日本の未来を憂う内田氏の歯に衣着せぬ分析と思考。
    確かな知識と見識に裏打ちされた言説はまさに目から鱗的
    思考が目白押し。
    今後の論説にも期待。

  • 毎度同じことを書いているような気がするが、内田本はまえがきをよく噛んで味わうのがよい。本書もまた、朝日新聞に二度と頼まれたくないと思って書いただとか、仕事を減らしたかったなどの説明がついているが、僕の気持ちを汲んだかのように、『では、また「あとがき」でお会いしましょう』とある。
    さて、あとがきには、堤防の蟻の一穴に小石を詰めて塞いでいこう、ということが述べられています。本文中に繰り返し出てくる企業の恫喝による人件費低下へのプレッシャーと、互恵社会の形成のこと。マーケットから転落するのではなく、自発的で静かな「市場からの撤収」のこと。
    世論じみたことは言わないほうがいい、それが「呪い」からの身のそらし方だ、と。内田本で結局僕がいつも反省するのは自ら振りまく呪いのことだ…。

  • この時代を覆っているグローバリズムの欠点と、そこから抜け出すための「倫理」というものの観点から政治・経済・教育を述べる本。

    このところ読んでる(ブクログに登録してる本)や話題の公共図書館の活動、地域で少しずつ創り出されつつある地域コミュニティの拠点の話などと絡めて、そのような「倫理」的活動が市井の人々の間で復興しつつあるとともに、この本を読むとそれらを論理的に捉えることができる。しかしそれらの活動に政治家がついていけていない、日本という経済活動のスケールとの齟齬がまだまだあるように思う。あれ?レビューじゃなくて個人的な思いになってしまったな…9

  • 今の日本社会に対する考え方がするすると整理されていく。
    加えて、教育現場で励む人たちへの温かいエールも。

  • 著者が日本の現状に思うところを、エッセイの形で論じていく。
    明快な語り口で、滑らかに問題点を論じていくので楽しく読めた。

    中身のない発言であったとしても、その発言をせざるを得ない背景から読み取れることはある、という考え方のアプローチは面白かった。
    一方で、各論を行うときに、極論ではなく中庸を目指す必要性を訴えておきながら、橋本市長の行動や原発論を行うときには極端な事例を引き出し、それがさも全体全てに当てはまるような論じ方はずるいと思う。

    TPPや脱グローバル論、「廃県置藩」といった具体論は納得できなかった。
    小さい単位で経済を営み、コンテンツではなく贈与の過程こそに価値があるというが、そのシステムなら必要最低限の生産しかできず、非効率なものになってしまうだろう。

    「自然に成熟した公民たりうろうとする環境をつくれ」という、まず内面を成長させる発想自体は必要だと思った。
    もちろん、だからといって教員が起立させることが、その内面成長を阻害させるという発想は納得出来ないが。

  • 2014年1月25日

  • 「人間は自己利益を排他的に追求できるときではなく、自分が人のために役立っていると思えた時にその潜在能力を爆発的に開花させる。…今の日本社会に致命的に欠けているのは、他者への気づかいが、隣人への愛が人間のパフォーマンスを最大化するという人類と同じだけ古い知見です。

  • 素材は2011〜13年のブログから選出された政治・教育アンソロジー。内容は繰り返しになっているが、根底にあるのは全体を貫く深い危機感。ぜつぼう的状況のなか複雑に絡まった呪いを解毒するうえで必要なことが幾つか。先天的な能力のシェア、身近な人との連帯、「蟻の穴を塞ぐこと」、など。「能力主義的な思想が内面化した世代は、世代間の不公平に『怒り』を感じ、同世代間の不公平に『あきらめ』を、社会的不備の原因を質し、解決策を講ずることについて『無関心』を感じている」。実感としてあるだけに、指摘の一つひとつが重い。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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