- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794970619
作品紹介・あらすじ
いま私たちの社会では、多様な信仰を持つ人たちが暮らしている。でも仏教、キリスト教ならなじみはあっても、その他の宗教となるとさっぱりわからない。異国にルーツを持つ人たちは、どんな神様を信じて、どんな生活習慣で、どんなお祈りをしているのか? イスラム教、ユダヤ教、ヒンドゥー教からコプト正教まで、気鋭の宗教学者と取材班がさまざまな信仰の現場を訪ね歩いて考えたルポ。読めば「異教徒」もご近所さんに。毎日新聞大阪本社版で大好評の連載を大幅加筆のうえ単行本化。
感想・レビュー・書評
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タイトルの通り、地域にある様々な宗教のコミュニティの場に出向き、信者たちの様子などを丁寧に取材した記録。
各宗教の成立ちなどを掘り下げる本ではなく、信者たち個人にスポットを当て、その生活にどのように宗教が寄り添っているのかを描いている。
とても優しく、敬意に溢れた本。
イスラム、ユダヤ、仏教、シク、ヒンドゥーなど身近で巨大な宗教から、ジャイナ教など私は初めて耳にするものまで取材されており、入門編として軽く素直に楽しめた。
漫画でのレポートも数ページあって、絵柄がとてもかわいくてほのぼのする。
とにかく取材対象に対し、徹頭徹尾愛と敬意に溢れているのが本当に素晴らしかった。
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私たちは すぐ隣に暮らしている
異教の人のことを ほとんど知らない
十数年前に 日本にやってきた
チャイニーズ・アメリカンと友達になった時に
真っ先に聞かれたのが
彼が通いたい教会のことだった
その時は あまり深く考えもせずに
一緒に調べて、一緒にその教会まで
なんとなく行ったのだが…
今から思えば
日本に来たものの
自分の信仰のよりどころがちゃんと
あるだろうか
と 彼がかなり不安な思いでいたことが
わかるような気がする
暮しの中に
信仰がちゃんと溶け込んでいる
人たちから見れば
私たち日本人は相当奇妙に見える部分が
多いのでしょうね
そんなことを
今年の12月24日に
思ってしまう一冊です -
このコロナ渦に限らずだけど、昨今宗教の存在意義みたいのが改めて見直される時代に来ているのかなと感じた。
日本で自殺率が高いのは、特定の宗教が根付いて無い影響もかなり占めているのでは?と考えさせられた一冊。 -
『「結びつける」「つなげる」は宗教の本質の一つ』
と前書きに書かれているように、異国の人たちが、日本でアイデンティティを保つ場所、つながる場所として、宗教施設が大きな役割を担っている事について少し理解する事ができる本。 -
日本(主に関西)にある宗教施設を訪ね、信仰とともに生きる人々へインタビューをしている。
自分の住む土地の近くに、これほど多種の宗教施設があると知り驚いた。
しかし、あくまでも一施設への取材記録であり、語られている内容は個人の主観であるため、この本だけで各宗教や宗派の概要を把握することはできない。
異なる宗教を知るきっかけとしては、良い本である。 -
毎日新聞での連載(2015年04月〜2017年03月)を加筆し書籍化したもの。
【書誌情報】
著者:釈 徹宗
著者:毎日新聞「異教の隣人」取材班
マンガ:細川貂々
対談ゲスト:三木 英[みき・ひずる] 宗教社会学。
版型:四六判並製
頁数:288頁
定価:本体1650円+税
ISBN:978-4-7949-7061-9 C0095
〔2018年10月〕
〈https://www.shobunsha.co.jp/?p=4882〉
【簡易目次】
目次 [003-008]
0 異教の隣人の声を聞く[釈徹宗] 009
■Ⅰ■
1 イスラム教 ご近所に溶け込む茨木モスク[中本泰代] 030
釈の眼 イスラーム 038
2 ジャイナ教 非暴力・不殺生を説く2500年の歴史を持つ宗教[清水有香] 040
──釈の眼 ジャイナ教 048
3 ユダヤ教 神戸のシナゴーグ 安息日の祈り[花澤茂人]050
──釈の眼 ユダヤ教 058
◎ユダヤ教の安息日に入る前の礼拝に行きました 細川貂々 060
4 台湾仏教 北京語が飛び交う兵庫・宝塚の寺院[棚部秀行] 064
──釈の眼 台湾仏教 064
5 神戸の外国人墓地 さまざまな宗教の墓碑が共存する場[中本泰代] 074
──釈の眼 神戸外国人墓地 080
6 修道女 生涯を神に捧げる生き方とは[中本泰代] 082
──釈の眼 カトリック修道院 090
■Ⅱ■
7 シク教 異教徒も排除せず、違いを尊重する宗教[花澤茂人] 094
──釈の眼 シク教 102
8 「奇跡の主」の祭り ペルー発祥の聖行列を大阪で[清水有香] 104
──釈の眼 ペルーのカトリック 112
9 ベトナム仏教 姫路に根ざした元難民らの寺院[棚部秀行] 114
お布施、募金、ボランティアで運営
電飾と音楽でショーアップされた法会
日本のベトナム仏教の聖地に
──釈の眼 ベトナム仏教 122
◎シク教の日曜礼拝に行きました 細川貂々 124
10 ヒンドゥー教 インドを体現する宗教の教えと暮らし[花澤茂人] 128
神様には名前も形もない
神様からパワーを
儀式がつなぐ助け合う精神
──釈の眼 ヒンドゥー教 136
11 韓国キリスト教 大阪・生野に95年、関西最大級の教会[棚部秀行] 138
1世からニューカマーまで幅広い年代が集う
「老人大学」や釜ヶ崎での炊き出しなど多彩な取り組み
人権問題、社会問題に積極的に関わる
──釈の眼 韓国キリスト教 146
12 日本人ムスリム イスラム教に改宗した女性たちの暮らし[清水有香] 148
ムスリムになって得た解放と自由
ハラール認証にはこだわらず柔軟に対応
日本ハラール教会を通して社会の益に
尊厳を持って女性も生きている
──釈の眼 日本人ムスリム(ムスリマ) 156
■Ⅲ■
13 ブラジル教会 ハレルヤ!の声が響く元倉庫の教会[中本泰代] 160
教会は心の病院、礼拝は心の車検
信仰は表現しなければ意味がない
「心が満たされない」という悩み
──釈の眼 ブラジル教会 167
14 華僑 民間信仰と先祖供養の拠点[花澤茂人] 169
歴史や習慣を次世代に伝える
清明節で墓参りで先祖を思う
先人への祈りが力強さの源に
──釈の眼 道教 177
15 ムスリムと衣服 高まるファッションへの意識[清水有香] 179
着物にヒジャブをつければムスリム服に
動画サイトでヒジャブの巻き方を公開
ファッションを通じた友好関係を
神様が男性の目から守ってくれる
──釈の眼 ムスリムと衣服 186
◎イスラム教のモスクに行きました 細川貂々 188
16 ラマダン明け 断食終えた一体感が伝わる祝祭[棚部秀行] 192
水のありがたさを再認識する
日本のお正月のようなお祝い
貧しく飢えた人に思いを至らせる
──釈の眼 ラマダン明け 200
17 正教会 外国人らも集う厳かな祈りの聖堂[花澤茂人] 202
ロシアや東欧出身者が多数
意識せずする宗教的行為に戸惑い
母国の文化を子どもたちにどう伝えるか
歴史の重み感じる祈りの時間
──釈の眼 正教会 210
18 「みとりの場」 タイの専門家と死生観を学び合う[棚部秀行] 212
末期にあっても施しをすることが大きな喜び
来世を意識したタイ人の死生観
共感と違和感からアイデアが見つかる
──釈の眼 みとりの場 タイ仏教 220
■Ⅳ■
19 コプト正教会 原始キリスト教の典礼様式いまも受け継ぐ[清水有香] 224
伝統を重んじる姿勢が随所に
生活の中心にあるのは教会
教皇の歴史的な初来日
──釈の眼 コプト正教会 232
20 イラン人の名物店主 イスラムの教えとオープンマインド[中本泰代] 234
厳しくも柔軟で自由な宗教
ムスリムに息づく助け合いの精神
──釈の眼 イラン・イスラーム革命がもたらしたもの 240
21 朝鮮半島の巫俗〔ふぞく〕 大阪の住宅地に息づく母国の民間信仰[花澤茂人] 242
元クリスチャンの巫堂
悩みを吐き出し落ち着く場所
生駒山麓にも儀式スペース
──釈の眼 朝鮮半島の巫俗 250
◎日本にコプト正教会ができて1周年記念の礼拝に行きました[細川貂々] 252
22 在日クルド人 住民間の交流が進む埼玉の「ワラビスタン」[棚部秀行] 256
クルド人・日本人合同の安全パトロール
相互交流のために日本語教室も
移民・難民問題は身近にある
──釈の眼 在日クルド人 265
23 春節祭 華やかで楽しい「ザ・祭礼」[清水有香] 267
一年の平安と健康を祈る
日中友好イベントとして地域の風物詩に
しなやかな宗教のありよう
──釈の眼 春節祭 274
24 宗教への感性を身につける[三木英×釈徹宗] 276
次世代に胴伝えていくか
人間にとって必要な場
新しい文化が生まれる可能性
宗教センスの必要性
著者について [286] -
図書館で借りてようやく読むことができました!兵庫・大阪・京都にある数々のお寺・教会・モスクを巡りながら、様々な宗教を知っていくお話です。日本国内に住む外国人の数は年々増加の一途を辿っています。無宗教な我々日本人には理解しずらい“信仰”について、各宗派の人々の話を通じて易しく解説してあるのでとても読みやすい一冊です。単に神様を信じているだけではないということがこの一冊を読み終える頃には伝わってくると思います。
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異教徒、と言ってしまうと、語気が強くてなんだか怖い存在みたいに思ってしまうが、隣人、というと途端にやわらかくなって、そうだな、私たちはもう隣人同士なんだなと腑に落ちた。
神戸などで通りすがりに見た不思議な寺院が、実はこんな歴史やコミュニティをもっていたのかとびっくり。
異文化を知るのは面白いし、互いが理解し合えば歩み寄ることができる。そんな希望を感じさせてくれる本だった。