ざらざらをさわる

著者 :
  • 晶文社
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794971838

作品紹介・あらすじ

なめらかには進めなかったけど、とんでもないでこぼこでもなかったざらざらたち

独自の世界観で人気を集め、数多くの装画やグッズデザインなどを手掛けるイラストレーター、三好愛による初のイラスト&エッセイ集。
くだりのエスカレーターが苦手、あの子がお味噌汁とご飯に降格しますように、卒業直前に突然会えなくなった同級生、子供のころ好きだった食べ物「物体A」、人のよい空き巣に遭遇する、『スラムダンク』22巻を繰り返し読む、ドライヤーが動くのをただ見ている……。

身近な日常から淡々とながらも少しずつ退出していく様子は、読みながら半歩外へ小旅行しているような感覚を味わえる。
33篇の文章と33点の挿画、さらにカラーのミニストーリーも収録!
ことばからイラストの着想を得るという著者の「ことば」と「イラスト」の宇宙へ。

【もくじ】
ざらざらをさわる

まぎれたいのに
さだまらない
じょうずに集中
記憶ずるずる
だいすきだけど
逃がせない
わかりあえない
気づけばそばに
読みすがる
朝が憎いよ
ごはんは眠る
呪いの先に
フカッとさせる
名前をうばう
受け止める
ひとりでしゃべる
寝ててもいいよ
アイスのやさしさ
つながらないと
人のよい空き巣
動きつづける
噓みたい
その場しのぎの
食べるのを見る
せまってくるよ
赤福襲来
疑似恋愛
私のゆくえ
言葉の性格
あからさまな幸せについて
かなわない
どなたですか
やわらかいもの

あとがき

感想・レビュー・書評

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  • 川上弘美さん『某』、伊藤亜紗さん『どもる体』など、一度見たら忘れられない、ふわりもわりとした生き物の絵を描くイラストレーター・三好愛さんの哲学味を帯びたエッセイ&イラスト集。

    イラストから受ける印象そのままの文章の方でした。

    日常の些細な違和感を流すことなく受け止め、自分の中で大切に留めておいて、それを他者に理解できるように、ちゃんと言語化できる人なんだな、と。

    最初の方のエッセイはまだこなれていない感じで、幼子がトコトコと歩く姿を眺めているハラハラ感があるけれど、稿を重ねるにつれ、だんだんと筆が乗ってきてるように思う。←偉そう。

    『ひとりでしゃべる』は、こんなことやってるの私だけかと思っていたので、驚きを隠せない。
    感想/
    イマジナリーフレンドとはまた、違う、でも全く遠くなくはない、どちらかというと、「亡くなった、もう会えない人と心の中で話す」に、近いのかも。
    過去に交流があって、もう一生会わないであろう人って、自分にとって、生きているような死んでいるような、生者というより幽霊に近い立ち位置になっている気がする。
    私とはまるで関係のないところで、生活しているだけなんだろうけれど。

    『つながらないと』は、自分の不安に思っていたことを、そのまま三好さんに言語化してもらった気分。
    感想/
    インターネットによって、ずっとつながってる気分がするのは、心強さと、心弱さが同時にある。
    「自分の毎日から孤独がなくなってしまい、ついでに物語もなくなっていきました」p108
    孤独な時間というものを、自分ひとりで愉しめていたのに、いちいちネットを覗く人になった自分は、あまり心地好いものではない。
    今だって、つながろうと、必死で言葉を紡いでいる。

    ネットって不思議ですよね。
    画面の向こうにいるのは人間のはずなのに、”人間味“が抑えられてて、テキストだけのやりとりだけで、想像を膨らませたり、膨らませなかったり。

    個人的には「本を読むのと現実で対面するのとの中間」だと思ってます。

    まあ、現実で対面したら、こんなこと喋らない(喋れない)な、と、いうのもあります。

    ネット書店で買ったら、帯が付いてて、帯文が大好きな岸本佐知子さん!ラッキー!表紙もざらざらしていて触っていると安心する、私にとって心地好い本でした。

    • 5552さん
      111108さん、おはようございます。

      おお、111108さんが思っていたことと近いかも、ですか!
      『ひとりでしゃべる』や『つながら...
      111108さん、おはようございます。

      おお、111108さんが思っていたことと近いかも、ですか!
      『ひとりでしゃべる』や『つながらないと』は、エッセイのタイトルで、そのあとの文章は、エッセイを読んだ上の、私の雑感、感想です。
      こんなこと思ってたの私だけ?と思ってたことが本の文章になってる…って、嬉しさがあります。
      帯の岸本さんは納得の人選でした。
      機会がありましたら是非♪
      2022/11/18
    • 111108さん
      5552さん、お返事ありがとうございます。

      エッセイのタイトルも上手いですが、それを読んだ5552さんの感想にもとても惹かれましたよ。自分...
      5552さん、お返事ありがとうございます。

      エッセイのタイトルも上手いですが、それを読んだ5552さんの感想にもとても惹かれましたよ。自分とおんなじ事考えてる人いたのかと嬉しくなるの、わかる気がします。
      『某』のインパクトある表紙のようにこの本も独特な感じしますね。浸ってみたいです♪
      2022/11/18
    • 5552さん
      111108さん、こんにちは。

      ひとめで、あ!と、分かる特徴的なイラストを描かれる方ですよね。
      イラストも多数収録されています。
      ...
      111108さん、こんにちは。

      ひとめで、あ!と、分かる特徴的なイラストを描かれる方ですよね。
      イラストも多数収録されています。
      どうぞ、三好ワールドに浸ってください♪
      2022/11/19
  • この本の表紙のようなイラストが三好愛さんの画風なんですね。
    美大にいっているのに、人の顔などがリアルに描けないと自他ともに認めているようです。

    1つのエッセイに、もやもやっとした1つのイラストが添えられています。
    イラストを見て感じられることがエッセイとして綴られているとも言えます。

    タイトルの「ざらざら」って何?と気になりますが、今までの経験だそうです。
    「なめらか」には進めなかったけれど、とんでもない「でこぼこ」でもなかった。
    しいて言えば「ざらざら」といった感覚。
    「ざらざら」という言葉で表現しちゃうところが芸術家ならではですね。

    はっきりと何であるか表せないけど、気のせいではなく確かに感じたもの、その時の気持ちが伝わって来ます。

    このようなほんのりとしたエッセイには、13×17という本のサイズは似合っていて、なかなか良いなと思いました。

  • 川上弘美さんの「某」で知った
    イラストレーター三好愛さんのエッセイ。
    イラストがゆる可愛い。
    短い文章なので軽く読めます。
    内容は共感できたりできなかったり。

  • 繊細な感受性と、キャッチした何かを咀嚼し言葉で表現する技術。
    自分になくて、あればいいのになと願う美しい表現が文章という形でそこにありました。
    「私も、みんなも、どうしようもなくわかりあえないまま、今日を元気に生きています。」
    さらっと読めるのに、ところどころ残る。
    彼女の体験は彼女のものなのに、自分の過去の忘れていた記憶が蘇る。
    ああ、たしかにあのとき、わたしはそんなふうに感じたな、と。
    「呪いの先に」は、増田ミリさんの「どうしても嫌いな人」を思い出しました。どこにでも呪いをかける人はいます。
    途中で気になってたまらず、著者の生年月日を調べにいってしまいました。わからなかったけど、たぶん調舒星。戌亥天中殺もあるかも。敏感さを大切に、強みにしている好例だと思いました。
    こういうエッセイを、また読みたい。

  • イラストレーターのエッセイ集がないわけではないが、大抵は売れている(知名度の高い)イラストレーターだからこそ売れる本。この三好愛さんは、絵を見たら本をよく読む人、書店によく行く人なら、「ああ『どもる体』『某』の人だ」とわかる。(クリープハイプというバンドのグッズデザインも手がけているそうだが、私はこちらは知らなかった。)が、私はお名前だけではどんな絵を描く方が分からなかった。そういう方がエッセイ集を出したとなると、読む価値ありそうだと判断。
    読み始めは、あれ、そんなに文章が上手いというわけではないな、と思う。もう、初めっからすごく上手い、文章書くために生まれたんじゃないか、という人もいるが、そういうタイプじゃないな、と。しかし読み進めるうちに、いや、こういう文章は書こうと思って書いたり、練習して書けるようになったりするものではないな、いや、これは凄い、と変わっていった。
    いや、ホントに、こうは書けない。
    読んでいて、そういう感じ、分かるなあと思うけど、こういう風には書けない。
    小学生のとき、授業中に吐きそうになって、付き添ってくれた先生が、嘔吐く三好さんの前に「両手をお椀型にして」差し出した。ここに吐け、と。そこで、差し出された先生の手に仕方なく吐いた。その瞬間「先生も多分本気で手を差し出したわけじゃなかったんだな」と分かった。「差し出されてしまったK先生の善意と、K先生の善意に真っ向から対応してしまった私に対するK先生のとまどいのニュアンスは、のちのちまで心に残りました。そのときの気まずさは、小学校四年生の私にはかなりせつないものでした。
    K先生には悪いんですけど、その場しのぎのやさしさというのは、誰の役にもたたないんだな、ということを、私はその一件で強く感じました。」(P92-93)糾弾するでもなく、嘆くでもなく、それでいてそのときの気持ちが如実に伝わってくる書き方。
    この調子で、結婚して夫の姓になったときの違和感についても、「夫婦別姓を!」と声高に主張するわけではないのに、その事で起こるアイデンティティのゆらぎが、胸苦しくこちらにも伝わる。

    もちろんイラストもたっぷりあるし、繊細な感覚を持つ方へのプレゼントにもいいんじゃないか、と思う。
    三好さんの文章はもっと読みたい。

  • あっという間に読める、ライトなエッセイ集。
    寝る前の時間とか、脳が疲労しているときとかにちょうどいい。
    人生は些細な出来事のつみかさね。

  • “ざらざら”は、あなたが生きている証拠――気鋭のイラストレーター初の著書 | ダ・ヴィンチニュース
    https://ddnavi.com/review/648910/a/

    三好愛
    http://www.344i.com/

    ざらざらをさわる | 晶文社
    https://www.shobunsha.co.jp/?p=5783

  • 「怪談未満」がとても良かったのでさっそく取り寄せてみた。現実との間にある異和を、やり過ごしはしたけど腑には落ちていません…みたいな話がどこか遠いとぼけた文章で語られている。好き。
    ぼんやりとぼけた語り口なのでするっと読めてしまうが、よくよく考えるとけっこういやな目にあっている話が多い。空き巣が入ったり、タンメンにコバエがたくさん入っていたり。
    「怪談未満」の時にも思ったけれど、抜群にサイズ感が良い本。少しがっかりした気分の時に手に取ったりすると良いかもしれない。

  • さくらももこさんのエッセイ本以来
    久しぶりに声を出して笑った本。(特に最後の方)

    三好愛さんのことは元々、イラストレーター三好愛として認識していた。本の装画がとても好きで楽天のお気に入りに長らく入っていたのだが、今回エッセイ本出版を機に購入した。

    自分がなにかを表現する意味。
    創造意欲、自己表現欲がドバァっと溢れすぎないように、気持ちを引いたり出したりすること。

    苗字の話は特に興味深く、なかなか心がジリジリと動いた。

    ’’気持ち"というふわふわ掴みどころのないものが、三好さんの言葉によって少しずつ具現化されていく様が、とても面白く、自分もわかるなぁと思う部分が多かった。
    それぞれの話の後につくイラストが、三好さんの頭と心を一緒にのぞいているようで、微笑ましく、少し寂しい気持ちを感じた。

    また、三好愛さんご自身がかなり面白い感性を持った人間であった。

  • なんだか少しずつ氷が溶けていくような感じをおぼえる文章。三好さんとともに小さな出来事に敏感であり続けたい。

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著者プロフィール

1986年、東京都生まれ。イラストレーター。ことばから着想を得る不思議な世界観のイラストが人気を集め、『どもる体』伊藤亜紗(医学書院)、『某』川上弘美(幻冬舎)をはじめ数多くの本の装画や挿絵を担当するほか、クリープハイプのグッズデザインも手がけるなど、幅広く活動している。今作が初の著書。

「2020年 『ざらざらをさわる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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