イスラームの論理と倫理

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  • 晶文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794971951

作品紹介・あらすじ

イスラームは、穏健で寛容で民主的な、平和の宗教か?

かたや男性・イスラーム法学者にしてイスラム教徒=中田考。かたや女性・イスラム思想研究者にして非イスラム教徒=飯山陽。ともにイスラームを専門としつつも、立場を異にする二者が交わす、妥協を排した書簡による対話。

IS、トルコ・クルド問題、アフガニスタン中村哲氏殺害、ハラール認証、イラン情勢、コロナ禍の影響……。同じトピックを論じても、これだけ世界の見方が違う。はたして日本人は、イスラームをどれだけ理解しているか? 
神の前の自由・平等?
人が獲得した自由・平等?
誰も教えてくれなかった、イスラーム世界の真実をめぐる、火花を散らす対話の記録。

「20年以上前に初めて出会った時から今に至るまで、中田先生は私にとって、全く分かり合うことのできない異質な他者です。中田先生だけでなく、私は日本の中東イスラム研究業界に属する多くの研究者と、ほとんど全く分かり合うことができません。(…)私はこの往復書簡を通して、中田先生と分かり合おうとも、中田先生を説得しようとも全く思いませんでした。私の目的は、ひとつにはもちろん、それぞれのテーマについての分析を提示することですが、もうひとつは中田先生と私の議論が徹頭徹尾嚙み合わないことを読者の方々によくよくご覧いただき、その上で、なぜこうも嚙み合わないのかについての理由を明らかにすることです。」(飯山陽 まえがきより)

「人文社会科学の他の分野と比べても職業的専門家の絶対数が圧倒的に少なくマーケットも小さいイスラーム研究が学問の名に値するものに成長するためには、どんなにレベルが低く誤解と偏見に満ちていようとも、イスラームを理解できない人、理解しようとも思わない人にさえも広く読まれる作品ができるだけ多く生み出され、流通することが不可欠だと私は信じています。(…)本書ができるだけ多くの読者の目に留まり、読者の中からたとえ一握りほどの数であったとしても、本書に書かれたことの背後にある「誰の目も見たことがなく耳が聞いたともなく心に浮かんだこともない」(預言者ムハンマドの言葉)広大で深淵な世界を垣間見、彼らに続こうと志す者たちが現れることを願ってやみません。」(中田考 あとがきより)

【目次】
第一書簡 あるべきイスラーム理解のために
第二書簡 イスラム国をめぐって
第三書簡 トルコ、クルド問題について
第四書簡 タイのイスラーム事情
第五書簡 中村哲氏殺害事件をめぐって
第六書簡 ハラール認証の問題
第七書簡 イラン/アメリカ関係の深層
第八書簡 コロナウイルス禍がもたらしたもの
第九書簡 トルコのコロナ対応をめぐる考察
最終書簡 インシャーアッラー それぞれの結語として

感想・レビュー・書評

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  • タイトルと裏腹な内容にのぞくイスラーム研究者“業界”分布図 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/655848

    異論・反論 イスラームを巡る10の書簡 | 読書人WEB
    https://dokushojin.com/reading.html?id=7732

    中田考+飯山陽『イスラームの論理と倫理』YouTube【開封動画】 | 晶文社
    https://www.shobunsha.co.jp/?p=5893

    イスラームの論理と倫理 | 晶文社
    https://www.shobunsha.co.jp/?p=5879

  • 結構面白い本です。
    本書の本質は最終書簡Aに収斂しています。
    長くて面倒と思われる方、時間が経って古いと思われている方、そこだけでも読みましょう。

  • 「エジプトの空の下」(飯山陽)を読んで、イスラムっていったいどうなっているんだろうと思い、読んでみる気になった。
    著者は二人ともイスラムの研究者だが、中田考は男性でイスラム教徒、飯山陽は女性で非イスラム教徒。異なる立場から二人が紙上で議論を戦わせるのかと思ったらそうではなかった。テーマをいくつか選び(イスラム国とか、アフガンでの中村哲氏殺害事件とか)二人がそれぞれの考えを書くという構成で、しかも二人の主張?はかけ離れている。共著にした理由がいまいちわからない。あるいは前文で飯山陽がいうように、「異質な他者が共存するためには、適切な距離を保ち、できるだけ衝突を避けるべく行動すること」を本書の中で実践しているということなんだろうか?

    飯山陽のパートはわかりやすく、参考になったが、中田考のパートは何が言いたいのかいまいちわからない。それにこの人、「一般的な」イスラム教徒なんだろうか? 判断する材料を持たないけれど、相当過激派なのでは? いずれにしても、中田考が考えているらしい政治体制の下で暮らすのはゴメンだ。

  • 面白え。

    中田先生っちゅうのは、イスラム研究の第一人者としての地位にある方らしい。

    こいつ、気持ち悪い。

    この本は、同じテーマについて、飯山先生と中田先生がそれぞれ論ずる形を取っている。まあ、本の半分が飯山先生で、半分が中田先生なのだが、この中田部分が気色悪い。
    全くの論点ずらし、訳のわからんグダグダな語りで何言ってるかわからん上に、我こそ絶対正義、立場の違う奴は愚民と言い切ってしまう。
    飯山先生の論が、ことの正否はともかくスッキリ判りやすいのと全く色を分ける。にで、飯山先生の方が、真っ当だと考えるわけだ。

    世に、イスラムこそが現代社会を越える、優しい、理論だと考える奴が多い(?)のだけど、これ読んでからの方が良いと思う。
    ぶっちゃけ、飯山パートはしっかり読んだが、中田パートは、落書きだと思っていいわ。

  • イスラーム研究者界隈有名人のお二人の往復書簡。何年もずっとフォローしているが、もともとTwitterでもお互い名前を出したり出さなかったりしつつバチバチやりあっていて、最近はアフガニスタンのタリバン政権の絡みで全く正反対の主張をツイート・リツイートしあっている。はたして往復書簡なんて成り立つのか?という感じだったけど、やっぱり早々に往復形式は放棄されて同じテーマで書く方式になっていた(笑)。その違いの大きさは鮮烈と言っていいレベルだ。
    ハサン中田先生はカリフ制再興のためのポジショントーク的な面をスルーすれば…とはいってもイスラム国はテロをやってない!とかあまりにひどい詭弁も多いのだが、やはり中東の歴史・情勢の分析は素晴らしく勉強になる。飯山さんのわかりやすくデータに基づいた話も面白い。高度な話になって内容について行けなかったらどうしようと思ったがそんなこともなく、楽しく読めた。

    これは完全に余談だけど飯山さんの言う通りイスラーム界隈はイスラム擁護派が圧倒的で(自らの研究の意義を証明する必要があるからそうなるのもしょうがないのだが)自分の極端なリベラル的主張を織り込む人も多すぎる。中田先生は今回の話でも主張をのぞかせていたけどコロナ以降しょっちゅう反ワクチンRTしているし、Twitterは苦痛に感じてフォローできる人が少なすぎる。
    近年は反イスラム擁護派の池内先生や飯山さんもアンチとやりあって急激におかしくなってしまったし、Twitterは人を暗黒面に落とす何かがあるのだろうかと思わずにはいられない。
    今回そういった雑音なしに書籍で落ち着いてお二人の話を読むことができてなんだかほっとしてしまった。また書いてほしい。

  •  お二人の往復書簡を拝読して、他者を理解し意思疎通するのは、大変難しいことなのだと、あらためて痛感しました。
     それはまさに、個人のレベルも含め、イスラームそして異文化一般への相互理解にも通底するものだと思いに至りました。
     
     そして、研究対象として資料による客観的研究のみでは誤謬を招きかねないこと、その一方で、対象にずっぷりと入ってしまうことにより理解促進を妨げる要因にもなり得ることを再認識しました。

  • 活動家と研究者の往復書簡本です。
    対立するそれぞれの意見が一つの本の中にあるというのは、中々面白いですね。
    ただ一つを除き二人の意見が一致しないのが笑えます。

    https://seisenudoku.seesaa.net/article/480806265.html

  • 話が通じないというのはどういうことか、というケーススタディ。

    おそらく飯山さんの論の進め方の方が一般的な感覚では受け入れられやすいのであろうが、中田さんの論にも不思議な魅力と一貫性が感じられる(決して賛同しているわけではないが)。
    わたしの読書経験から似たような感覚を引っ張り出すとするなら、G.K.チェスタトンの『正統とは何か』のような。

  • 【内容紹介】
    著者:中田 考
    著者:飯山 陽
    版型:四六判並製
    頁数:360
    定価:本体1900円+税
    ISBN:978-4-7949-7195-1 C0014
    〔2020年10月〕

    ◆イスラームは、穏健で寛容で民主的な、平和の宗教か?
     かたや男性・イスラーム法学者にしてイスラム教徒=中田考。かたや女性・イスラム思想研究者にして非イスラム教徒=飯山陽。ともにイスラームを専門としつつも、立場を異にする二者が交わす、妥協を排した書簡による対話。
     IS、トルコ・クルド問題、中村哲氏殺害、ハラール認証、イラン情勢、コロナ禍の影響……。同じトピックを論じても、これだけ世界の見方が違う。はたして日本人は、イスラームをどれだけ理解しているか? 神の前の自由・平等? 人が獲得した自由・平等? 誰も教えてくれなかった、イスラーム世界の真実をめぐる、火花を散らす対話の記録。

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    「20年以上前に初めて出会った時から今に至るまで、中田先生は私にとって、全く分かり合うことのできない異質な他者です。中田先生だけでなく、私は日本の中東イスラム研究業界に属する多くの研究者と、ほとんど全く分かり合うことができません。〔……〕私はこの往復書簡を通して、中田先生と分かり合おうとも、中田先生を説得しようとも全く思いませんでした。私の目的は、ひとつにはもちろん、それぞれのテーマについての分析を提示することですが、もうひとつは中田先生と私の議論が徹頭徹尾嚙み合わないことを読者の方々によくよくご覧いただき、その上で、なぜこうも嚙み合わないのかについての理由を明らかにすることです。」(飯山陽 「まえがき」より)


    「人文社会科学の他の分野と比べても職業的専門家の絶対数が圧倒的に少なくマーケットも小さいイスラーム研究が学問の名に値するものに成長するためには、どんなにレベルが低く誤解と偏見に満ちていようとも、イスラームを理解できない人、理解しようとも思わない人にさえも広く読まれる作品ができるだけ多く生み出され、流通することが不可欠だと私は信じています。〔……〕本書ができるだけ多くの読者の目に留まり、読者の中からたとえ一握りほどの数であったとしても、本書に書かれたことの背後にある「誰の目も見たことがなく耳が聞いたこともなく心に浮かんだこともない」(預言者ムハンマドの言葉)広大で深淵な世界を垣間見、彼らに続こうと志す者たちが現れることを願ってやみません。」 中田考 「あとがき」より
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    https://www.shobunsha.co.jp/?p=5879

    【主要目次】
    まえがき
    第一書簡 あるべきイスラーム理解のために 
    第二書簡 イスラム国をめぐって 
    第三書簡 トルコ、クルド問題について 
    第四書簡 タイのイスラーム事情 
    第五書簡 中村哲氏殺害事件をめぐって 
    第六書簡 ハラール認証の問題 
    第七書簡 イラン/アメリカ関係の深層 
    第八書簡 コロナウイルス禍がもたらしたもの 
    第九書簡 トルコのコロナ対応をめぐる考察 
    最終書簡 インシャーアッラー それぞれの結語として
    あとがき


    ◇中田考(なかた・こう)
    1960年生まれ。イスラーム法学者。灘中学校、灘高等学校卒業。早稲田大学政治経済学部中退。東京大学文学部卒業。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。カイロ大学大学院文学部哲学科博士課程修了(Ph.D)。山口大学助教授、同志社大学教授を経てイブン・ハルドゥーン(在トルコ)大学客員教授。1983年にイスラーム入信、ムスリム名ハサン。著書に『イスラーム法とは何か?』(作品社)、『カリフ制再興』(書肆心水)、『イスラーム 生と死と聖戦』(集英社新書)、『みんなちがって、みんなダメ』(KKベストセラーズ)、『イスラーム国訪問記』(現代政治経済研究社)、『13歳からの世界征服』『70歳からの世界征服』(百万年書房)、『俺の妹がカリフなわけがない!』(晶文社)、『ハサン中田考のマンガでわかるイスラーム入門』(サイゾー)などがある。

    ◇飯山陽(いいやま・あかり)
    1976年生まれ。東京都出身。イスラム思想研究者。東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化研究専攻イスラム学専門分野単位取得退学。博士(東京大学)。著書に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『イスラム2.0 ──SNSが変えた1400年の宗教観』(河出新書)がある。Twitterとnoteで、イスラム世界の最新情報と情勢分析を随時更新中。

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著者プロフィール

中田考(なかた・こう) イスラーム法学者。イブン・ハルドゥーン大学客員教授。著書に『イスラームの論理』『帝国の復興と啓蒙の未来』『13歳からの世界制服』『ハサン中田考のマンガでわかるイスラーム入門』『タリバン 復権の真実』『俺の妹がカリフなわけがない』『宗教地政学から読み解くロシア原論』など多数。

「2023年 『みんなの宗教2世問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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