エジプトの空の下 わたしが見た「ふたつの革命」

著者 :
  • 晶文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794972811

作品紹介・あらすじ

「アラブの春」で言われた「民主化」や「自由」は、私たちが通常思い浮かべる「民主化」や「自由」とはまったく違っていた!
1歳になったばかりの娘を連れて、夫とともに「アラブの春」の只中にエジプトの首都カイロに降り立った著者。そこで体験した強烈な出来事、危険な事件の数々。
・運が悪ければ即死!頭上からバルコニーが落ちてくる
・イスラム大物指導者から「おまえは全身恥だ」と言われる
・女性一人で街を歩けばセクハラの嵐
・異教徒は下級市民として人頭税を払わされる?
・エジプトのスラム街の悲惨な実態……
「アラブの春」の渦中、独裁政権が倒れたあとの波乱万丈の日々を、持ち前のタフなメンタリティで生き延びた日本人女性イスラム研究者の日常を描く、ノンフィクション・エッセイ。混乱の時代に出会った人たちと、いつかどこかの空の下で再会できますように!

【目次】
1 娘と親友とサラフィー運転手
2 ピラミッドを破壊せよ
3 頭上注意
4 バット餅
5 出エジプト
6 髪を隠す人、顔を隠す人
7 ファラオの呪い
8 エジプトのアルカイダ
9 牛の腹
10 ふたつの革命

私が住んでいた2011年から2015年にかけてのエジプトは、政治、経済、社会、治安の全てが不安定で、あらゆる面において混乱していました。治安がいい時期というのはあまりなく、悪い状態が恒常化しており、時には極めて悪くなりました。爆弾テロや銃撃、誘拐などが頻発する時期もありました。自宅の近所を含め、カイロ市内で毎日数回これらの事件が発生するようになると、私は被害にあうのを避けるために極力外出を控え、「家にいる」ようになりました。(本文より)

感想・レビュー・書評

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  • 飯山陽さんの主張は、一貫している。
    「イスラム教」に関しては、中高社会の社会科レベルの知識しかない。
    学校の先生もはっきり詳しく教えてくれた覚えもない。
    触れてはいけないアンタッチャブルなイメージがあって、よく分からない&複雑で難しい感じを受けていた。
    飯山さんの本を読んで、もやもやが晴れた。

    娘さんの親友エピソードは感動。

    普段、オシャレでファッション好きなイメージがあったので、家事は不得意なのかなと勝手に思っていたけも、めっちゃ料理上手。
    日本の食材が簡単に手に入らない環境で、代用したり、その地域の料理を覚えたりなど、とにかく「生きる力」が溢れた方なのだと思った。
    異国でも、「娘さんには日本食を感じてほしい」と出汁をとるところから料理するのは本当にすごい。(日本に住んでても、出汁とるところからはなかなか始まらない!)

    「闘うイスラム思想研究家」と紹介されるけど、最後の一文がまさにそれでした。
    最初の一文でもグッと心を惹きつけられました。
    さすが「まえがきの女王」!

    飯山さんが、家族でエジプト在住の時に実際に体験したことと、その時の「気持ち」がコミカル(もちろん真剣もある)に書かれていて、とても読みやすかった。
    飯山さんの本が売れるのがよく分かる!!
    初めて飯山さんの本を読むなら、この本がいいかも!

  • 著者は女性イスラム学者(本人はイスラム教徒ではない)。

    「異教徒」の上に「女性」という立場からみたイスラム世界は、男性からみた世界とはまた異質な感がある。
    これまで読んできたイスラム関係の本とは違う世界があった。

    女というだけで面と向かって存在を否定されるようなこと、まず最近経験しないことだわ…。

  • 飯山陽さんのエジプト生活時代のエッセイ
    日本人にあまり馴染みのない生活者視点のエジプトとイスラム社会の実相が書かれています
    エッセイではあるもののイスラム思想研究者の筆者ならではの内容でイスラム社会の理解に大いに役立ちます
    イスラムというと一面的なイメージしか浮かばないことが一般的かもしれませんが、日本人も国内では様々な意見と対立があるようにイスラム社会も様々な意見や志向の違いがあることが分かります
    また筆者のパーソナリティと娘さんのエピソードは楽しく朗らかで、時折ユーモラスなのでエッセイの楽しみも十分に味わえる良書でした

  • とてもおもしろかった。
    あまり馴染みの無いイスラム社会のこと、実際に住んでみないとわからない、エジプトでの生活。
    読みやすく、興味深い。
    友だちにも薦めました。

    すべてファラオのせい、とにやり

  • イスラム教研究者が綴る、エジプトですごした数年間の記録

    ・「アラブの春」その後
    ・女性差別
    ・原理主義vs世俗主義
    等々の実態

    日本にいては想像もできない

    今年は「テヘランでロリータを読む」、「イラク水滸伝」などイスラム系の本を読んだのでその〆として

  • 浅薄な正義を振り回す得意顔が嫌いなので、大変共感できた。

    「物事にも政治にも、その時、その場で優先されるべきことがあります。テロで愛する者を失った経験などあるはずもなく、テロの差し迫った危機を感じたことも、それを想像したことすらもない人間が、「テロリストとは話し合うべき」などと主張しているのを聞くと、私は憤りを覚えます。「理想」を語る人の言葉は、うっとりするほど美しいかもしれません。自分もまたそうした「理想」を語ることで、あたかも善良で高尚な人間であるかのような気分に浸れるかもしれません。
    しかし私にとってそれらは偽善の言葉であるだけでなく、現実の脅威に立ち向かう他者を見下し、あるいは他者が現実を理解するのを阻害する不遜で無責任な言葉に聞こえます。
    私は偽善が嫌いです。それは文字通り、「偽ものの善」にすぎません。偽善の政治では市民が次々と死ぬのを止められない世界というのが、今の世の中には存在します。私はその現実に背を向けることはできません。」p86

  • イスラム研究者がエジプトに住んだ体験をつづったエッセイ。
    エジプトの日常生活は私たちの日常と違い過ぎて圧倒されるが、イスラム社会の民主化や自由化の意味することが、メディアで言われること、自分自身が理解していることとこれまた違いすぎて驚いた。
    神の作った法と言っても、現実に適応するには人の解釈、運営が必要で、結局それは指導者層にとっての都合の良さに容易に転じるように思うが、これも西洋的な民主主義の視点なのだろうか。話せばわかるどころか、同じ言葉で話すことにも、圧倒的な障壁があるように思えた。
    本書の最後に「偽善的で偏向したイスラム研究者やイスラム報道に向き合い続けています」とある。ぜひぜひ、お願いします。
    カバーの写真は、ピラミッドと著者の長女と思える女の子が歩く姿。このコントラストがとっても印象的だ。

  • 飯山氏の著書を読むのは、「イスラム教再考」に続いて2冊目となった。
    「イスラム教再考」もイスラム教の本質を知るのには非常に良い本であったが、本書は読みやすくて楽しみながらイスラム教を知ることができる。
    イスラム研究者である飯山氏がイスラム教国家であるエジプトに家族とともに暮らしていた数年間の実体験をまとめたエッセイ。
    宗教の違い、文化の違いによって、こんなにも"当たり前"が変わるのか。日本では考えられないことが日常的に起こる。著者が女性ということもあるが、女性に対するある種の偏見、イスラム教的女性差別の実体験も生々しく書かれている。
    食生活などの軽い話は思わず笑ってしまう一方、サラフィーへのインタビューやスラム街でのエピソードは、恐ろしくもある。
    イスラム教と一言で言っても普通のイスラム教徒と過激派組織は非なるものである。
    それを理解していないと、イスラムとの向き合い方、考え方も分からないと思う。
    著者の視点を通じて、イスラムの国での生活を擬似体験し、読み終えた頃にはイスラムとは何かということが見えてくるとても良い本だ。


  • ふむ

  • エジプトといえば、ピラミッドやスフィンクスなど観光名所として日本では有名だ。個人的には、エジプトで仕事もしたことがあるので、エジプトのことはそれなりに分かっているつもりであった。それでも、本書を読むことで女性ならではの視点であったり、イスラムの指導者へのインタビューを敢行した様子など、非常に興味深かった。

    エジプト入門者も経験者も、エジプトの新たな一面を教えてくれる稀有な本だと思う。

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著者プロフィール

飯山陽(いいやま・あかり)
1976年生まれ。東京都出身。イスラム思想研究者。アラビア語通訳。上智大学文学部史学科卒。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。著書に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『イスラム2.0』(河出新書)、『イスラム教再考』(扶桑社新書)、『イスラームの論理と倫理』(共著、晶文社)がある。

「2021年 『エジプトの空の下 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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