- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794973863
作品紹介・あらすじ
人はなぜ自殺するのか? 人はなぜ自殺しないのか?そのあわいをみつめつづけてきた精神科医、春日武彦による不穏で不謹慎な自殺論考。自殺は私たちに特別な感情をいだかせる。もちろん、近親者が死を選んだならば、なぜ止められなかったのかと、深い後悔に苛まれ、悲しむことだろう。だが一方、どこかで覗き見的な欲求があることも否定できない。「自殺はよろしくない」「でも自殺せざるを得なかった人の辛さに思い巡らせるのも大切」「あなたの命は決してあなただけのものではない」など、さまざまな意見を持つ人に読んでもらいたい、自殺についての深掘りエッセイ。自殺されたクライアントとの体験や、さまざまな文学作品、遺書、新聞報道記事などを下敷きにした、自らも自殺に近い位置にいる精神科医による、自殺をめぐる集大成。「強引に言い切ってしまうなら、人間そのものに対する「分からなさ」が身も蓋もない突飛な形で現出しているのがすなわち自殺ということになろう。その突飛さを前にして、動揺した我々は、(情けないことに)つい「ゲスの勘ぐり」やら下品な好奇心至上主義を全開にせねばいられなくことが稀ではない。悼んだり悲しむと同時に、無意識のうちにそんな方向に走ってしまう。だから「その不可解さがもはや珍味と化している事案」と表現してみても、あながち的外れではあるまい。そんな次第で自殺に関して思うこと、感じること、精神科医としての意見、文学的関心などをだらだらと書き連ねていきたい。もっとも、それが正鵠を射た内容であるのか否かは、自殺を遂げた当人ですらはっきりとはしないであろうけれど。」(「はじめに」別バージョンより)
感想・レビュー・書評
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これを手に取った5日後
小学中学仲良かった子が飛び降り自殺をしていたことを知った。
彼女はどのパターンだったんだろう。
重いテーマだが、たくさんの事例が淡々と進んでいく。
深く刺さることはなかった。
ただ、心のどこかにずっと残る本だった。 -
精神科医としてさまざまな自殺者と関わった作者が、過去の患者の自殺例や文学などを通して自殺について考察しているエッセイ本でした。
自殺の決定的な原因のようなものや自殺を止める方法とかは載ってなく、人々が抱く自殺に対するイメージに輪郭をつけようとしているのが本書の特徴かなと感じました。
自殺に対して普段抱くイメージって結構パターン化されてるなと読んでいて感じたし、自殺した人たちもこのパターンにあてはめると理解しやすいなと思いました。本書だとそのパターンによって自分たちが勝手に自殺者を物語化していることを思い知らされ、改めて自殺のわけのわからなさ、不可解さに打ちのめされました。
死にたいなと思うけどどっかでストッパーがかかるのが普通だとは思うけど、そのストッパーがどこかで壊れて自死へまっしぐらになる。その壊れる瞬間ってわかりやすいのだと事業に失敗したとか失恋したとか何かしらの決定的な失敗が挙げられると思う。けれど、そうした決定的なわかりやすくストーリーにできる部分の以前に当事者にしか理解できない物語にならない何かしらのショックがある。
そんなことを本書を読みながらより深く考えていると改めて自殺に対してどう向かい合うべきか悩んでしまう。まさに不条理って感じを味わいました。 -
実際に自殺した人の経緯、小説にある話、自殺する理由7つの解説など。
石鹸体験はどこか納得できる気もした。
自殺はよくないと否定することは簡単だけど、人は必ず死ぬ。
その死因の手段の一つなのは事実であり、そこに至る心境は排除しきれないこともある。
良い悪いを述べる場ではなく、自殺というものについて自身がどう受け止めるか。
他人の本心なんて、本人がいくら口述しようが文を認めようがそれが真意か誰もわからないし、事前・直前で何を感じたのかは知らない。
自分は今後どう思うか、ふいに訪れた心の迷い(?)にどう向き合うか。
312冊目読了。
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自殺について知った気分になれる本
気分がすごく落ち込んで、とにかく死にたい、逃げたいと考えていた時にこの本に出会いました。その時はただ死に近づきたい一心で購入し、活字が読めるぐらい余裕ができた頃に読み始めましたが、この本を購入できて本当に良かったと思います。
著者自身が出会った自殺遂行者だけでなく、過去の事件や文学からの引用もあり、自殺の考察が幅広く、とても面白いと感じました。
読んでいる中で、著者の心情がちらちら出てきているのがとても楽しかったです。ただ考察するのではなく、著者の心情が入っているから読み物として面白くなっているのではないかと感じました。 -
すごく面白かったです。
自分に対して、また周りに対して「なんで自殺したの?自殺できたの?」と不思議に思う人、例えば急に死んだようにしか見えない芸能人のことを度々考えてしまうとか、そんな自殺という行動に興味がある人にオススメ。不謹慎かもしれないが楽しく読めると思います。
医学的研究に基づいた論考!のような小難しい内容ではなくて、文学や過去の事件からの引用も多く、そこに著者自身の臨床の経験を交えたエッセイのような感じ。教養ある方なんだなと感心します。淡々と、でも小気味よく、押し付けがましくなく、時折著者の想いが透けて見えて、文章が好きでした。こんな精神科のお医者様いるんだなあと感動しました。
この本を読んで何か疑問が晴れるといったことはないのだが、人間の奥深さ、怖さ、死との距離感、そういうものを自分とは違う視点で垣間見れた気がします。何より読み物として単純に面白いです。 -
薄口であっさりした風味の中に、春日武彦という書き手が読者として(あるいは診療の場・実地で)体得してきた経験知が込められており決してナメてかかることのできない、「じわじわ来る」本のように思う。ぼく自身生きにくい思いをしているので自殺と親和性の高い思考・妄想を練ってしまう。その意味でこの本を読み「ぼくだけじゃないみたいだ」「ぼくもマヌケだな」とあらためて自分を笑う客観視・客体化を施してもらったようにも思われた。自死を語りつつ、その死を美学にしないで実相を恐れずに、しかし除き趣味にもならず愚直に見据えて書き記す
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数年前からストレス対処の手段の一つとして自殺を想起する頻度が増えるようになった。企図ではなく、あくまで想起。
去年末も相変わらず死にたい気持ちが続き、ふとSNSで目が止まりすぐにKindle購入。
読み始めた頃は仲間がいるような気持ちで本書を、登場人物の物語を読み進めていた。
途中から精神科医の作者の自殺に対する冷静だけれど人間味のある分析が展開され、それが自分と自殺との距離を広げていく。
自殺を辛さに対するコーピングとしてしか見ていなかったけれど、実際にそれを遂げた例から出来上がる考察は全く違っていて。それからどうしても客観的な意見を聞いてコーピングとしての自殺の分の悪さも感じて。
解離と精神的視野狭窄、自殺親和性の高い性格などは新たな学びだった。特に固執は発達特性があるような自分の大きな汚点、欠点、生きにくさのまさに原因と信じていた節があったけれど、どうやらこれも心を守るための機能だったのね、と。そう思うと拘りに対するこだわりが解けていくような、これ以上は考えすぎなくていいや、と思えた。
精神的視野狭窄もそう、追い詰められた時、それだけに目がいき、極端な発想になる。その時はおかしいと思えない。それが起こるのは、心に余裕のない時。
自分に優しい考察を求めているのだと思う、それに一助をくれる本でした。