防災行政と都市づくり: 事前復興計画論の構想

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  • 信山社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797291667

作品紹介・あらすじ

災害に備えた都市改修と事前復興計

感想・レビュー・書評

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  •  全体を通して、事前段階、災害予防の段階で都市計画がもっとがんばれという主張。

     たとえば、避難所、仮設住宅、がれき処理・処分場の都市計画決定(スペア都市計画)、事前復興計画、都市計画法上の防災目的の明示化、緊急防災活動用都市施設の都市計画、土地の交換分合手法の改善(照応原則はずし)、マスタープラン化が都市計画の課題としてあげられている。(p364)

     都市計画は、計画を決定した段階で土地利用の制限がかかり、最終的には強制力をもって実現するところが味噌。たとえば、避難所や仮設住宅などの用地を公有地や公有施設を前提にする限り、あまり都市計画決定の意味はないし、民有地だとすれば、強制力をもって決定するよりも、むしろ、地権者との協議、同意をもって、地道にその空き地を仮設住宅用地に使わせてもらう同意形成をつみあげていくしかないのではないか。

     今回、東日本大震災の津波被害、南海トラフ巨大地震の被害想定から、防災集団移転に強制力を与えるべきという主張が地方公共団体からも寄せられているが、いつくるかわからない巨大地震のために、自分たちの生活を犠牲にして強制的に高台に避難することを行政が義務づけることができるのだろうか。

     都市計画で強制力を与えてもいいが、実際には、相当丁寧な地元調整、合意形成が必要となる。その合意形成の助けになるのであれば、いいと思うが、かえって強制手段、収用手法などは逆効果にならないか。

     それに対して、災害がおきたあとの復興手法については、被災者に対して迅速に生活再建を実現するために、強制力のある都市計画手法も、もっと充実する必要があると思う。もちろん、丁寧な地元合意形成は当然だが、ぴったりとした手法がないので、復興事業ができません、という地元市町村の職員のいいわけを押さえるためにも、できるだけ使いやすい制度は用意したいと思う。

     先輩に対して辛口のコメントになり失礼します。

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著者プロフィール

三井 康壽(みつい・やすひさ):元国土事務次官(昭和38 年建設省入省、都市局都市計画課、区画整理課、都市総務課、茨城県企画部長等を歴任)

「2015年 『筑波研究学園都市論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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