セカイ系とは何か (ソフトバンク新書 125)

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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797357165

作品紹介・あらすじ

セカイ系とは、『新世紀エヴァンゲリオン』以後を指し示す言葉に他ならない。アニメ、ゲーム、ライトノベル、批評などなど-日本のサブカルチャーを中心に大きな影響を与えたキーワード「セカイ系」を読み解き、ポスト・エヴァの時代=ゼロ年代のオタク史を論じる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • p26ぼくときみを中心とした小さな関係性が、具体的な中間項を挟むことなく、世界の危機など、抽象的な大問題に直結する作品群のこと

    p83 シンジの戦場はいつもどおり学校もあればコンビニもある場所で、なぜ敵は襲ってくるのか、なぜ戦わなければならないのか、まったくわからないのである。結果的に思考は空転し、抽象化し、自分の問題に行き着いてしまう。

    p117たかだか語り手の了見「世界」という誇大な言葉で表したがる

    p92 「ふたりの遠距離恋愛」という主題のためだけに、ありとあらゆる要素が配置され、それ以外は潔く排除されているのである。

    p170 半透明な文体=アトムの命題は、登場人物によって、作中の事態がチープで荒唐無稽で虚構的な自体だと名指され(揶揄され)なければ、立ち上がってこない。だからこそ、セカイ系は定義され、認知され、あるいは揶揄されればこそ、隆盛したのである、と結論することができる。

    具体的な内実、技術背景の説明の省略。「エヴァ的」。自意識の物語。SF、ミステリの舞台を借りた自意識と恋愛の物語。ループものとセカイ系の親和性。読者との共有の前提に基づいた、メタ的な語り口による日常と非日常の融合。戦争系、(学園)都市物語以上に目立つのが、日常系、空気系。
    これが書かれたのがニコニコ動画、ボカロ全盛期だから、また今書かれると違う考察が出ると思う。異世界転生ものとかチート主人公ものとか。

  • 所謂「セカイ系」と呼ばれる作品は未履修のものが多く、言葉の意味もなんとなく「自分語りの作品」というくらいにしか思っていませんでした。
    しかしそれはごく一面的なものであり、セカイ系という言葉の意味自体が拡散され変遷されていった。そのことが具体的に作品や人々の言葉を引用して説明されています。

    謂わばエヴァンゲリオン以降のオタク文化史、ゼロ年代オタク文化史の体を成しており、その時代のオタク文化に疎い身には参考資料として実にありがたいのです。
    読んでいない小説(ラノベ)や見ていないアニメは今でも読んだり見たりはできます。しかしその作品がその時代に於いてどのように受け止められていたか、どのような位置に属していたのかという、時代の空気感のようなものはわからないのです。
    その空気感がまとめられることで、作品への接し方も多重的になり、これから読んだり見たりする時により一層楽しめるでしょう。

    で、結局「セカイ系」とは何なの? となると、一言で表わせられないからこの本を読むのだよとなってしまうのですけどね。それだけ変遷され拡散された言葉なのですね。ゼロ年代のオタク文化に於けるムーブメントとでも表わすのがいいのか悪いのか。

  • 前島賢氏が2010年に発表したセカイ系について解説した著作。ある時期、さかんにサブカル論で使われていた「セカイ系」という言葉がありました。エヴァの影響下で、ぼくときみの問題が「世界の危機」「この世の終わり」などといった抽象的な大問題に直結する作品群のことで、代表作としてハルヒなどが挙げられていました。あれから10年経ちましたが「セカイ系」って聞かなくなりましたね。でも、データベースとしては残っているようなので、似たような作品は量産され続けているような気がします。

  • ポスト・エヴァの時代=ゼロ年代のオタク史を論じる一冊。

    <blockquote>セカイ系への一般的な批判は、この作品には大人たちの社会が書かれてないという「社会の欠如」を指摘するものだ。(中略)
    なぜ『ドラクエ』がセカイ系と呼ばれないのか、それはそのような構造自体が、作中で言及されないからだ。
    セカイ系は社会領域が欠如していることを作中であからさまに述べてしまう。(P.224)</blockquote>

    「作中で言及してしまう」というのは作者がそこに負い目を感じていることの証だろう。それは別にいいんだけれど、フィクションの中でそれについて直接語ってしまうというのは自己保身や弁明に思える。

    「わかってますよ。でも、仕方がないんですよ」と冷笑的な態度はそのままセカイ系を愛好する人たちにも重なる。

    <blockquote>・セカイ系は、宇野常寛の登場により、オタク文化ではなく論壇における主要なトピックとなり、またそれを並行するように、オタク文化以外の、社会批評などでもセカイ系という言葉が用いられるようになった。
    ・オタク文化のなかでは、セカイ系の流行は終わり、基本的には、ひとつのサブジャンルとして定着した。(P.226)
    </blockquote>
    セカイ系はオタク文化というより世代的な事象なのではないか?
    エヴァンゲリオン以降"オタク"趣味なんて特別なものでもないし。

    社会性の欠如やそれを何かの所為にする態度は思春期には往々に見られる態度だから、セカイ系世代がまさに思春期だった頃には目立たない。
    セカイ系世代(00年代に思春期を迎えた世代)が20代半ばに差し掛かろうとした時分でも、それが顕著だったのでオタク文化の問題ではなく論壇(社会の問題)に扱いが切り替わったのだと思う。

    下の世代は上の世代の文化がダサく時代遅れなモノに思えて否定する。
    それが世の常だ。
    二世代くらい交代すれば再評価も起きるが(否定をした下の世代も更にその下の世代に否定されるから)。

    00年代の終わりから10年近くの月日が経とうとしている今、セカイ系をはじめとする00年代のカルチャーも古い時代のカルチャーになる。

    その時に再評価や普遍的なカルチャーになるかどうかは上の世代や下の下の世代からの共感や支持が得られるかが鍵だ。

    "君と僕、ふたりぼっち"なセカイ系にはそれは難しいんではないか…と思う次第である。

    ゲームが物語を如何に語るかという点で苦戦しているという指摘が興味深い。
    なるほど『FF』など流麗なCGで語るある種紙芝居的なRPGは高騰する制作費ほど受け入れられているとは言えないように見える。
    その反面、ソシャゲなど現実の対人関係・承認欲求を満たすゲームの売上が目立つ。MMORPGは物語消費と承認欲求、両方の要素があるのだろう。

  • マンガやアニメのようなサブカルチャー(オタク文化)を真面目に考察していて、それが新鮮で面白かった。セカイ系、エヴァというキーワードで社会(?)を考察しているような。

    エヴァンゲリオンは見たことがあるが、初めて見た時に感じたことがそのまま書かれていた。前半は使徒との戦いや細かく組み上げられた世界観が面白かったが、いつの間にかよくわからない流れになる。最終回ではシンジが周りに「おめでとう」と言われるわけのわからない展開。当時は、なんだこれはと理解できずにいたのを思い出す。

    エヴァは第19話あたりをピークに、映像の質はどんどん下がる。これは制作体制上の問題から、スケジュールが破綻したためとある。併せて、物語の視点はどんどん登場人物の内面へ移り、「アダム」、「リリス」、「人類補完計画」といった謎への解答は放棄される。こういった点が、実は大ヒットに繋がったと書かれている。

    セカイ系とは、(後半の)エヴァっぽいもの。少年の自意識。自分を中心とした世界。なるほどなと思う。そういったものがヒットするようになっていたんだなと。

    エヴァは社会的にも大きな影響を与えたが、この本ではそのひとつとして「作品受容の態度」が挙げられている。自分が見た時は、エヴァの前半・後半でのギャップについていけなかったんだなと思う。今はエヴァは面白いと思うが、その理由なんかが納得できたように思う。

    この本を読んでいると、5年や10年で流行や作品の傾向、視聴者の考え方や好みは大きく変わるんだなと感じる。昔の作品が新たにアニメ化されたり、時間を経て続編が出たりというのはよくある。今はルパンやおそ松さんのアニメが放送されている。制作側は、そういった時代の変化をどう捉え、作品に反映しているのか。昔の作品とはどう変わっているのか、これからそんなことを考えながら見てみたいなと思う。

    昔のエヴァと新劇場版のエヴァとの違いも、調べてみると面白そうだ。

    なんとなく思ったが、中二病とセカイ系はどこか似ている。

  • -

  • セカイ系について一通り押さえるべき所を押さえられてると思う
    著者には空気系についても同じような切り口で本を書いてほしい

  • 1回読んだだけだとよく理解できなかった部分があるので、少し時間がたったら読み直したい。次はメモを取りながら読んだほうがいいかも。

  • 「セカイ系」の意味がわかってスッキリしたという気分にはなれなかったが、とりあえずこのバズワードに関連している’90〜’00年代の『作品(アニメやラノベ、ゲーム)』のタイトルだけは心に留めておくことにする。

  • 資料ID: C0031338
    配架場所: 本館2F新書書架

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著者プロフィール

ライター、評論家。1982年生まれ。国際基督教大学教養学部卒。2000年、NHK『真剣10代しゃべり場』第一期レギュラーメンバー。東浩紀発行のメール・マガジン『波状言論』の編集スタッフを経て、2005年、ユリイカ増刊号『オタクVSサブカル!』(青土社)掲載評論「僕をオタクにしてくれなかった岡田斗司夫へ」にて文筆活動を開始。現在、『朝日新聞』夕刊のコラム「茶話」にてラノベを担当中。

「2014年 『セカイ系とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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