「熱処理」のキホン (イチバンやさしい理工系)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797363845

作品紹介・あらすじ

本書は、熱処理の世界を図解でわかりやすく解説。粗鋼生産の2割を占める高性能鋼材のつくり方。金属組織を操るための赤め方と冷まし方とは?焼入れ、焼もどし、焼なまし、焼ならしを徹底解説。オールカラー図解でしくみがわかる。

感想・レビュー・書評

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  • 熱処理には焼き入れ、焼き戻し、焼きなし、焼きならしと言う4つの方法に代表される組織全体を制御する一般的な熱処理。それと表面だけを制御する表面熱処理がある。表面だけ硬さが必要な場合、窒化及び軟窒化により表面強化を行う。熱処理は赤づく温度(700度)と黒づく温度(550度)のコントロールにより、鋼の変態を齎す。例えば、一気に冷やすと硬くなる。この作業を焼き入れと呼ぶ。

    高温での鋼の組織はオーステナイトと呼ばれ、温度が下がると、フェライトやパーライト、セメンタイト、マルテンサイトなどと呼ばれる結晶構造が出現する。

    刀鍛冶、を思い出すが、理屈を知らずとも、技術を使いこなしていた職人というのは素晴らしい。前述の方法はつまり、熱の入れ方と冷やし方の違いにより、鋼に特性を付与するような技術だ。

    現在、日本の熱処理業界は、焼き入れ焼き戻し処理や浸炭焼き入れ焼き戻し処理が半分以上であり、用途は一般機械と輸送機械の機械部品、自動車部品で約8割を占めるそうだ。

    技術は理屈を読み取られる事で更に発展し、現代に生き続けている。マニアックな領域の専門書にも見えるが、重要な事である。

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    熱処理

  • もうかなり前のことになりますが、大学で金属工学というものを学びました。学部卒業と同時に「材料工学」に学科の名称が変わり、それから何年かしてさらに変わったという通知を受けましたが忘れました。1年ほど前に出身大学のサイトを覗いてみたら、名前が殆ど変わっていて本当にこの大学を卒業したのか不安になりました。

    さておき、大学で学んだ知識も何年も経つと殆ど忘れるものですが、当時の授業の科目名程度は覚えているので、図書館でこの本のタイトルを目にして何気なく手に取ってみました。

    学んだ当時、あれほどわかりにくかった熱処理及びそれの基礎である鉄の状態図・組織変態について、こんなに分り易く丁寧に書いてあるなんて、今学ぶ人は羨ましいです。

    熱処理の仕事ではありませんが、金属材料については打ち合わせで名前が登場することもあり、話の流れで熱処理の知識が活かされることもありますので、そのようなときにはこの本があったことを記憶していたいと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・熱処理は加熱と冷却の組み合わせ、重要温度は、加熱中の約700℃(赤づく)と、冷却中に黒づく550℃である(p12)

    ・赤づく温度は鋼の変態開始温度、黒づく温度は冷やすスピードで、オーステナイト組織から、硬いマルテンサイトとなるので、550℃は冷ませ方の重要温度(p12)

    ・鋼の組織は、炭素濃度と鋼の温度で決まる、高温での組織はオーステナイト、温度が下がるとフェライト、パーライト、セメンタイト、マルテンサイトと呼ぶ結晶構造が出現する(p14)

    ・JIS鋼材の種類は、大きく普通鋼と特殊鋼にわかれる(p17、55、59)

    ・変態とは、金属成分は不変で、温度や圧力変化により、結晶構造が変わる現象、溶鉄は1536℃で、δフェライト(体心)へ、1394℃で、γオーステナイト(面心)、911℃で、アルファフェライト(体心)へ変態する(p26)

    ・γ鉄は炭素なら2%固溶する、α鉄は0.0218%しか溶けない、余分はセメンタイトという鉄炭素化合物として析出(p26)

    ・水冷は焼入れ、油冷は焼きもどし、空冷は焼なまし、炉冷は焼ならし(p37、53)

    ・鋼材は、1)化学成分、2)形状(鋼板、線材、鋼管等)、3)鋼の組織(フェライト等)から成立する(p48)

    ・鋼材の性質を整える元素は、大きく4種類のグループがある、第1グループは、C・Si・Mn・P・S、第2グループは、鉄の不純元素(O,N,H,P,S)、第3グループは合金を形成する元素(Cr,Ni,Co)、第4グループは炭化物などを生成する元素(Mo,V,W,Nb,B)がある(p50)

    ・ステンレス鋼において、マルテンサイト系はクロムを13%含有、フェライト系はクロムを18%含有、オーステナイト系はクロムを18%、ニッケルを8%含むSUS304が有名(p74)

    2012年3月3日作成

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著者プロフィール

1956年大阪生まれ。1982年京都大学大学院資源工学科修了、新日本製鉄株式会社入社。1996年技術士(金属部門)取得。鉄鋼協会、環境資源工学会、失敗学会所属。

「2021年 『図解入門 最新金属の基本がわかる事典[第2版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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