面白くて仕事に役立つ数学

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797380835

作品紹介・あらすじ

◎人間は合理的な行動をいつも取るか?
◎「企業の寿命は30年」は本当か?
◎男女の相性を数値化するには?

博覧強記の数学者、柳谷晃の日常は数学で溢れている。
なぜなら、数字は言葉であり、式は文章だから。
そう、カリスマ数学者の目に映る世界は、数字という表現で彩られた芸術に満ちているのだ。

しかし、残念ながら数学はわかる人にしかわからない学問。
数学嫌いの凡人は、どこかで限界を感じ、そんなふうに諦め、自分を納得させてきたのだ。
けれども、数学嫌いの凡人だって、数学への憧れはある。
本当は、数学者の目に映るキラキラした世界や、「わかる」という疾走感を味わってみたい!

そんな数学嫌いさんの夢をかなえるのが本書です。
カリスマ数学者の目に映る景色を、数学嫌いさんにわかるように説いてゆく。
博覧強記の数学者の手にかかると、数学の本もどこか文学的で人生訓のよう。

日常に溢れる数学の本質を感じられる1冊です。

感想・レビュー・書評

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  • 数学がいかに役に立つか、ということを伝えるための本。具体的な数学を学びたかった。

  • 1386

    面白くて仕事に役立つ数学
    by 柳谷 晃
    これなのです、人間が実例やデータを必ずしも信じない、ということは。どうやら人間は、データや数字を「経験から読み解く」のではなく、「自分の都合の良いように解釈する」生き物だといえそうです。  人は誰でも自分にとって心地よい話を聞きたい。耳障りなことは聞きたくない。だから数字や事実がどうあれ、自分の嫌なことは信じないし、証明されていても納得しないのでしょう。

    数値は現象のある一面しか表していないものです。その数値をどのように使うかは人間の責任なのです。

    複雑な構造は簡単な構造の積み上げです。簡単なことにこそ本質があるのです。原点に戻って元データを大切にする気持ちをいつでも持ち続けること、それが大切なのです。

    なぜなら、理系における専門用語は、他の事実と混同することがないように使うものだから。使う人によって、意味が変わってしまうというようなとぼけたことを避けるために、言葉を厳密に定義するのです。

    効率の悪さは必ずしも悪いことではありません。効率的でないことで、考える時間をつくるということもあります。人間の頭には、いろいろな場合の中から、大切なことだけを残す、という能力があります。これが「勘」です。

    日本人は、株のようなリスクのあるものに投資をするのはあまり好きではないようです。それは、貯蓄のある世帯がどのようなかたちで貯蓄しているか、その比率を見ても明らかです。通常の貯金や銀行での預金が、なんと 50%を超えているのです。一方、株式、債券、投資信託などの投資関連商品は 20%、保険は 25%くらいのもの。日本人が好む「貯蓄のかたち」は、まだまだ郵便貯金や銀行が定番といっていいでしょう。

    そうはいっても、下手に株に手を出すと、元金まで0になってしまいそうでなんとなく危険な感じがします。日本には昔から「株などに投資するのは、とんでもない」なんていう考え方があったので、なおさら株に対する警戒感が強いのでしょう。

    私たち国民みんなが貯蓄一辺倒になると、日本の経済を悪化させることにもつながります。経済を支えている企業に元気がなくなり、回り回って給料が減る、物価が安定しないなど、私たちの 懐 も打撃を受けることになるのです。

    たとえば株式市場へ過度に資金が入らないと、日本経済に元気が出ません。お金の流動性が失われ、日本経済が健全に回らなくなるのです。

    株を買うときに大切なのが、比較をすることです。比較は絶対評価ではないのですが、次善の策を取るときに大切になります。または、いくつかの選択肢の中から選ばないといけない場合に大切な方法です。

    一方、総資本経常利益率は大きな会社と小さな会社を比べるときに、とても役に立ちます。どのぐらい、自分の資本をうまく利益に結び付ける能力があるかがわかるからです。小さな元手で大きな利益を生み出すことにこそ、商売の上手・下手は表れるというもの。無名の会社でも、この数値の高い良い会社があります。

    自然界からビジネスの世界まで、さまざまなところで不思議とよく見られるのが、「 78 対 22 の法則」というものです。  たとえば「空気中の酸素とそれ以外の気体の比率」がそうです。地球の大気中に含まれる元素は、窒素 78%、酸素 20・9%、二酸化炭素0・03%、アルゴン0・93%という割合になっています。酸素は約 21%ですから、「 78 対 22」からほんの少しずれるだけです。  この比率が崩れるとどんなことが起こるのでしょう。もし酸素が 12%以下になると、火が起こせません。物を燃やせなくなるのです。また 19%以下になると、象などの大型動物が生きられなくなるそうです。さらに、鳥も空を飛べなくなります。少しの数値の違いでも、当たり前に思っていることが、起こらなくなってしまうのです。

    「黄金比」と呼ばれるこの数は、人間にとってとても気持ちのよい数です。理由ははっきりわかりませんが、なぜかきれいに見えるのです。

    有名な画家の絵にも、この数が潜んでいます。たとえばレオナルド・ダ・ヴィンチの自画像では、彼の顔の縦横がこの比になっている長方形にぴたりと入ります。ギザのピラミッドの中にも、広重の版画の中にも、この黄金比率が潜んでいます。そもそも画家が使うキャンバスの縦横の比も黄金分割です。さらに東大寺の大仏殿は、建てられたときの縦横の比が黄金分割です。

    この世界は理屈ではありません。おそらく宇宙ができて、太陽を含む銀河系ができて、その中に太陽系ができて、地球ができたときに、この比が何かの役割を果たしたのでしょう。人間の生命の生物的な仕組みの中にも、この数が潜んでいるのだと思います。この安心できる美しい形に、昔の人は霊的なものを感じた。「この形には聖なる力が宿る」と信じたのです。  これほど誰もが無意識に美しいと感じる五芒星。この形が嫌いだという人は、かなりのへそ曲がりと言えそうです。

    いま、世界は不安定です。そんなときほど、占いや何か人間の力を超えたものに逃げ込みたくなるものです。そこに本当の安心はないはずですが、少しの間でも安心できる部分があるのでしょう。  たとえば「 六曜」という吉凶占い。日付ごとに「 先勝」「 友引」「 先負」「 仏滅」「 大安」「 赤口」の6種類の呼称をつけ、その日の吉凶を占うものです。このようにカレンダーの日付につける注釈を「 暦注」と呼びます。

    もちろん、数えやすくて、計算しやすい便利な「数」が必要ではない、と言いたいのではありません。私たちが当たり前に使っている「数える」という行為ですら、実は当たり前ではなかった時代があったということを知っておいて欲しいのです。

    わざわざ「使わせてもらっている」という表現を使ったのは、そこに至るまでにどれだけの人の工夫と努力があったかわからないほどだからです。毎日使っていることは、あまりに当たり前ですから、毎日とてもお世話になっているのに、どうしてそれができ上がったのかということなど考えません。感謝しなくてはいけないことがたくさんあるのではないかと思います。

    もう一つ、私たちが余り気にしないでお世話になっている数え方があります。コンピュータでよく使われる「2進法」です。  コンピュータでは2の何乗という数が多く、「 16 進法」「 32 進法」「 64 進法」なども使われています。2進法というのは、機械的な処理に向いているのです。たとえば電流が右と左のどちらに流れているのかを使って0と1を区別する、というふうに。  コンピュータだけではなく、私たちが買い物などでよく見かけるバーコードも2進法。白と黒の2種類の色だけで数を表すことができます。バーコードでは、国や製品の種類、値段など、さまざまな情報が2進法で表されています。

    私たちはよく数字で 験 担ぎをします。何か新しいことを始めたり、うまく事を運びたかったりするときに、日付や時刻など、どこかに7とか8の数字を見つけると喜ぶでしょう?「ラッキー・セブンだ」「末広がりの八だ」などと言っています。

    それなのになぜ、平均値は多用されるのでしょうか。ひとことで言うと、「データの真ん中」を知るのにとても便利だからです。さらに、統計理論が展開しやすいのです。

    統計の平均と分散で言えば、この理論は正規分布という分布のもとで展開されている理論です。正規分布とは、データの分布が平均値を頂点とした左右対称の山形で表示される分布のことです。気をつけなければいけないのは、世の中のデータは必ずしも正規分布になっていないことです。それを無視して、どんな場合でも、正規分布をもとにした統計が万能だと思うのは間違いです。  いつでも使えるような方法は存在しないと思ってください。統計は最強ではないのです。

    データマイニング」。山のようなデータの中から、そこに潜むパターンとかルールなどの有用な情報を見つけ出す技術を意味します。

    なけなしのお金を詐欺にかっさらわれてしまう。世の中にはいまも昔も、さまざまな手練手管を 弄 した詐欺事件が横行しています。  その古典的な手口の一つに、いわゆる「ネズミ講」があります。

    ですから複利計算がわかっていれば、当然、詐欺にひっかかることは避けられます。  単純に言えば、等比数列の知識がただの知識のままだと詐欺に遭うなどして不幸になり、知識を活用できれば、幸せにならないまでも不幸にはならない、ということです。

    さらに頭が良いのと知恵があるのとは違います。ここは意外と気づかないところです。  いいかえればそれは、「IQの高い人が、必ずしも人を幸せにするわけではない。知識を現実の世界に使う人が、人を生きやすく、幸せにする」ということ。それこそが仕事であり、ただただ食べるためにする仕事を「しのぎ」と言います。

    金次郎はおじさんの家に引き取られました。このおじさんは「百姓に勉強はいらない。農業の知識だけをつけて、早く一人前の百姓になれ」という考え方。それでも彼はおじさんに隠れて、本を読み勉強をしました。  後の業績から見て、儒教などの生き方の本に加えて、数学を含む科学の本も読んでいたと思われます。そういった学びを通して、「人はなぜ働くのか」「農地を取られた百姓は、それをどうやって取り戻せばよいのか」といった問題の答えを見つけていったのです。  おじさんから独立した二宮金次郎は、 24 歳で自分の家を再興しました。勤勉と倹約と体の強さ、それに数学というよりは経世の力でしょう。お金を貸すことの本当の意味を知っていのだと思います。  そして小田原藩の分家、北関東の桜町領再興をはじめとして、生涯に615の村々を立て直したと言われています。その中には烏山藩、相馬藩の大きな藩も入っていました。しかも日光東照宮の普請では幕府を助けました。

    二宮金次郎はまさに経営コンサルタント。それも本当に商売や経済を知っているコンサルタントの草分けのような人でした。いまの経営コンサルタントのような、大学院を出ただけで社会経験のない半人前とはわけが違います。かなりベテランのコンサルタントにも、半人前のままで会社に邪魔なことばかりする人もいます。

    二宮金次郎のコンサルティングの基本は3つの言葉にあります。 「勤労」は徳に報いるために働くこと 「分 度」は収入の範囲内で支出を定めること 「推譲」は勤労、分度をして、たまったものを将来のために残し、人に及ぼすこと

    等比数列を習って何の役に立つのかという議論、高校までの数学を習って何の役に立つのかという議論がよくあります。現実の役に立つので数学は今まで存在しています。二宮金次郎のような人がもっと増えて、数学を現実の役に立てる方法を見せてあげないといけないようです。

    それに、うまいことを言って周りを言いくるめ、自分だけの利益を捻出しようとする人たちも世の中にはいます。それを見破るために勉強をし、実践的な知識を身につける必要があるのです。

  • 1360円購入2018-03-19

  • 難しい数式は出てこなく、さらっと読めました。

    ■メモしたいところ
    ・「科学的」ということに対して、万能でないことを意識する
    西洋の科学では、一つの考え方で全体を説明しようとする傾向がある。
    人間が方法論を考えたのだから、万能な方法などない。いろんな見方ができるようになろう。例えば「利益が多ければ、会社にとってよい」というのは思い込みで、利益が多くても処理しきれない廃棄物を出したら意味がないという視点ももつ。

    ・GDPが高いと景気がいいといわれるが。。
    そもそもGDPは、国全体で生産した総量を出している。そこには売れていない在庫も含まれている。GDE(国内総支出)は国全体がどれくらい支払いしたかを示しており、GDEも見た方がよい。

    ・投資と投機は違う。
    投資は企業を応援。投機は株価の数字を気にして差額で儲けようとすること。
    投資で知っておくべき指標
     -株式時価総額=株式数x株価 (会社の力とする)
     -EPS(Earnings per share)=利益/発行済株式数(一株当たりの利益)
     -ROE(Return On Equity)自己資本利益率=当期純利益/自己資本x100
    =>当期なので1年しか見ていない未来への投資が見えないので注意!
     -PER=時価総額/純利益 
     (東証1部で、平均15ぐらい。低いと割安感。この数字が回収できる年数を想えばよい)

    ・パレードの法則は80:20だが、78:22もよく見る比率。
     例えば、(79:21ですが)酸素の割合。25以上だとすべて燃える。19以下だと大型動物は死ぬ、鳥は空を飛べない。12以下だと火は起こせない。
     絶妙な割合で生きられる。

    ・調和平均:速度の計算でよくつかう。
     データの個数/データの逆数の和

  • 実学としての数学の大切さを説いた本です。

    「いろんな場面で使われている数学」についての説明は、確かに意味があると思うのですが、「学校で習う数学が、実際にはどのような形で役に立つ、あるいは、役に立っているのか」という視点は弱く、そういう意味では、物足りませんでした。
     ※場面に対応する数学の紹介、という意味ではよいのですが、
      数学に対応する場面の紹介、という点は、物足りませんでした。

    また、経済に関する説明に偏りがち、という印象を受けました。

    とはいえ、全体的に見れば、一貫して、わかりやすい言葉で書かれており、数学が苦手な大人にとって、数学の学び直しのきっかけを与えてくれる、そんな内容になっているとは思います。

  •  数学という学問を学ぶことによってすべての社会を牛耳ることができるという考えを持つのは間違いだと思う。
     
     どのような分野でも絶対的善とする考えを持ってしまうともともとの世界形成の素を否定することになりかねない。

     あくまでも学問としての数学は人間という社会通念上に必要な物であり円滑に発展させるためのただの道具に過ぎないわけでこれをもってどうにかできるという考え方だけは持ちたくない。

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著者プロフィール

柳谷晃(やなぎや・あきら)
1953年、東京生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科数学専攻博士課程修了。数学をわかりやすく教えることに定評があり、その対象は学生からビジネスマン、リタイアした人まで幅広い。一方で、数学や統計学の正しい使い方に注意を喚起している。日本の伝統芸能や西洋史、西洋文明にも精通する異色の数学研究者でもある。現在、早稲田大学高等学院数学科教諭・早稲田大学理工学術院兼任講師、早稲田大学複雑系高等学術研究所研究員。著書に『武器になる「わり算」 知っている人が一生得する計算式』(角川書店)、『面白くて仕事に役立つ数学』(SBクリエイティブ)がある。

「2021年 『円周率πの世界 数学を進化させた「魅惑の数」のすべて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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