生命科学の静かなる革命 (インターナショナル新書)

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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本棚登録 : 206
感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797680041

作品紹介・あらすじ

25名のノーベル賞受賞者を輩出してきたロックフェラー大学。同校で研鑽を積んだ著者が、その歴史と偉業を繙_ひもと_き、生命科学の本質に迫る。さらに『生物と無生物のあいだ』執筆後の新発見についても綴る。

感想・レビュー・書評

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  • 私自身は高校の理科の知識(の残り滓)しかないから、分かったような分からんような感じです。
    でも、ロックフェラー大学院の研究者との対話を通じて、研究者ってどんな人たちなのか、垣間見えた。
    研究者って好きな研究ばかりやってお金もらえて…なんで仕事では全くない。
    福岡さん自身の研究は、「日の当たらない研究室に籠もり」「仮説の大半は間違ってるし」「実験の九十九パーセントは落胆に終わる」「心が折れて、すべてを投げ出したくなることもある」そうだ。
    報われるのは本当に一瞬。
    それでも、科学にまだ分かっていないことがある限り、研究者は実験に挑んでいく、冒険者だ。

  • 2021/07/29
    生命科学の大きな流れとその先人たちへのインタビュー。
    研究成果も説明できる言葉が大事というだけあって、いつも判りやすく読みやすい文章が有難い。
    特に印象に残ったフレーズを。
    「…情報の解体こそが消化の本質的な意味である…」

  • 福岡氏の筆力のお陰でエイブリー、ウィーゼル、ヒューベルといった科学者の存在をとても身近に感じられるようになりました。さすがです。

  • ロックフェラー大学の研究者へのインタビューがまとめられている。各研究者がどのような思いで研究をしているのか、研究環境についての考えについて語る。


    それぞれの専門分野がありつつ、生命のなぞについて解明しようという熱い姿勢は変わらない。
    生命とは、という問いへの答えには、それぞれの科学者としての専門や研究内容にとどまらず、これまでの生い立ちや価値観が反映されているように思った。

  • 『生命科学の静かなる革命』 福岡伸一

    生命科学の権威である福岡教授による、近年の生命科学の革命的偉業についての概略書。氏がかつて在籍していた“科学村”ことロックフェラー大学を中心に、ストーリー形式で親しみやすい文章で偉業が説明される。
    近年の生命科学におけるパラダイムシフトは、「生命を情報として捉えるという新たな思考方式」にあった。ワトソン・クリックによるDNAの二重らせん構造の発見は、ACGTによる特異的な「対」によって情報の相補性が保たれるという構造の発見であり、生命現象の根幹である自己複製において、情報がどのように保存され、どのような形で流れるのかを指し示していた。
    DNAが遺伝情報の根幹であるという着想は、ロックフェラー大学のオズワルト・エイブリー氏による発見であり、ワトソン・クリックの発見もさることながら、エイブリー氏の功績も大きい。
    そして、DNAの二重らせん構造の発見以上の革命的な発見が、本書で中心的に語られるヒューベル・ウィーゼルのコンビによる発見である。HWは「脳がどのように世界を捉えているか=この世界を構成する要素をどのように取り出し、そんな形でコード化されているか、そして、コード化された情報をいかにデ・コードしているのか」ということを発見した。
    我々は、自分の眼球が捉えた映像は、そのままシャッターを切るように網膜に映り込み、脳内に投影されることによって、ありのままの世界が見えていると思っている。しかし、それは事実ではない。
    画素数1億のセンサーが捉えた情報が150万程の神経細胞によって受け取られ、それが脳の奥へ伝えられている。しかし、この150万程の神経細胞は写像を平等に切り分けているわけではない。HWが発見したのは、ある一定の傾きを持つ線だけに反応している神経細胞があるということであった。様々な反応特性を持った神経細胞は、フラットな光情報を、それぞれが対応する特別な性質にいちいち徹底的にバラしている。そして、一旦バラした光情報を再構築することによって、世界を捉えている。アナログで、切れ目のない情報を一度徹底的にデジタルに切り刻み、そしてそれを一定の基準で再構築することによって、人間は世界を捉えている。決してアナログをアナログのまま捉えているわけではない。
    筆者は、この発見を元に、この革命についてこう結論付ける。
    生物を単なる個物として考えるのではなく、情報の流れだと捉え直したことに、革命の本質はある。外界からの情報を取り入れて適切な応答をすることが、生きているということである。別のところでは、生命とは絶え間なくエントロピーを汲み出す「動的平衡」(=相反する二つの逆反応が、同時に存在することで保たれる平衡状態のこと)であると筆者は言う。世界の捉え方も、一種の動的で可変的な仕組みによってなりたっており、生命とは、たしかに、情報の流れ(運動的な何か)であるということは十分に理解できた。福岡氏は、動的平衡や相補性という概念と、生命科学の二つ革命が、ワトソン・クリックやヒューベル・ウィーゼルのような、二人の偉大なコンビによって成し遂げられていることの類似性も指摘していた。生命というもの自体が、相補的な「対」による動的ものであるというのであれば、それは人間社会においても、そうなのかもしれない。二大政党制や、ヘーゲルのテーゼ/アンチテーゼ、中世ヨーロッパの楕円的世界(ランケ)などなど、二つの相反する概念や考え方の動的平衡によって保たれた均衡状態というものはいくつか挙げることができる。W・リップマンは、社会学や哲学は、科学の発見をフォローしていると『世論』に書いていたが、動的平衡という概念も社会や人間の生き方を捉える上で、重要な示唆となることだろう。

  • 著者がポスドク時代を過ごしたロックフェラー大学の、生命科学の偉大なる業績を語った書。同校のノーベル賞受賞者は、25人に上る。

    同校は、小規模ながら才能が集まり自由で家族的な雰囲気を醸し出す「小さな科学村」という。研究環境の素晴らしさが伝わってくる。

    第三章では、著者が取り組んでいる、GP2タンパク質の設計図、GP2遺伝子の解析に纏わる苦労譚。

  • 著者である福岡伸一さんが若き頃学んだロックフェラー大学。この大学で学んだ科学者との対談も楽しいが、生命科学は何を解明してきたのか?の章は序章と合わせて、必見。平易な言葉で科学の最前線を知ることができる。

  • 細胞に含まれる高分子のうち、一番複雑なのはタンパク質だ。だから遺伝子は特殊なタンパク質であるに違いない。これが当時の常識だった。
    核酸は高分子であるけれども、4種の構成単位だけを持つある意味で単純な物質だった。だからこそそこに複雑な情報が含まれているなどとは誰も考えていなかった。
    20世紀、生命科学の最も劇的な変革は、生物を単なる個物として考えるのではなく、情報の流れだと捉え直したことにある。

    糸巻きのようにDNAを巻きつけるためのタンパク質としてヒストンがある。ミルスキー(エイブリーの核酸説を否定していた)は、DNA結合タンパク質であるヒストンの状態と、遺伝子のスイッチのオン・オフが関係するのではないかという問題について、1950ー60年代に早くも示唆的な洞察を行っているのだ。

    これはエピジェネティックスという。
    ES細胞やiPS細胞では、エピジェネティックな変化がいかに初期化されているのか。

  • ロックフェラー大学での著者の経験や研究環境など、興味深い内容は多々あり。
    DNAの発見に至る経緯は楽しく読むことができました。

    ただ、ロックフェラー大学の科学者へのインタビューで、生命とは何か?と尋ねるところは、少し自身の研究視野に閉じた問いで異質な内容に感じ、相手によってはおそらく著者が求める回答とはほど遠いものもあるように思いました。

  • 読みやすくていいんですが、中身はあまりないですね…

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著者プロフィール

福岡伸一 (ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2013年4月よりロックフェラー大学客員教授としてNYに赴任。サントリー学芸賞を受賞し、ベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『できそこないの男たち』(光文社新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)、『せいめいのはなし』(新潮社)、『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』(文藝春秋)、『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)、『生命の逆襲』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『フェルメール 隠された次元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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