病と妖怪 ―予言獣アマビエの正体 (インターナショナル新書)

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  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797680713

作品紹介・あらすじ

災厄を予言する生き物たちを紹介!
病除けの妖怪「アマビエ」が、コロナ禍でSNSを中心に人気大爆発!
では、「アマビエ」とは何者なのか?
本書ではアマビエをはじめとした予言獣や幸福をよぶ瑞獣などの幻の生物たち(妖怪)を紹介し、流行病や災害と日本人がどのように向き合ってきたか、その際に妖怪とどのような関係を結んで来たのか、江戸から明治に描かれた錦絵や瓦版などから考えます。

――(目次より)
第1章 アマビエはどこから来たのか
疫病と俗信/アマビエの出現/幕末のコレラ騒動/鳥形の人魚アマビエ/「私を見て、描いて」/謎の人「柴田」某/アマビエかアマビコか/疫病除け絵の弾圧と復活/あの手この手

第2章 予言する不思議な動物たち
よって"件"の如し/アマビコから件へ/疫病から戦争へ/敗戦を予言する件/件の派生型「スカ屁」/江戸の人糞汲み取り人/屁の曲芸/似て非なる件型の怪/頭が牛で身体が人間/以津真天(いつまで)、予言する鳥/日本人の暮らしと鳥/件と白澤の原形/「渡る世間は鬼ばかり」か/コレラ除けになった海坊主/海坊主=海蛇!?

第3章 幸せを呼び寄せる幻獣たち
瑞獣が現われる時/麒麟-めでたいものの代表格/麒麟はいつ、どこに出現するのか/日本には麒麟が来ない/獏-悪夢を食らい、諸疫を除ける万能獣/夢を食べるのは日本のみ/龍―霊獣の頭領/数多残る龍の逸話/アメリカの龍の目撃談/白龍の縁起話/鳳凰、瑞兆の王/騰黄-狐に似て非なる瑞獣/狛犬-聖なる場所を守る瑞獣/狛犬の癒し効果/幕末宮中の狛犬奇譚

第4章 病にかかわる不思議な生物たち
アメリカ狐とコレラ/管狐という幻獣/狐vs.狼/狼と日本人/疫病を払う巨木と常陸坊/常陸坊海尊の不死伝説/鰯―病除けの魚/岩魚の厄神伝説

第5章 異星人か? 人智を超えた不思議なものたち
封―不老不死を約束する霊肉/封はどこからやって来た?/始皇帝も食べた仙薬「太歳」/人怪 駕籠の女/「うつろ船」の美女/空に出現するもの・怪人と怪光/空行く船と噴火/怪光―隕石か天変地異の前触れか/光る巨大な鮑/世の変革のきっかけとなる怪光

【著者略歴】
東郷隆(とうごう りゅう) 時代小説家。1951年、横浜市生まれ。国学院大学卒。同大博物館研究員、編集者を経て、作家に。
94年『大砲松』により吉川英治文学賞新人賞、2004年『狙うて候 銃豪村田経芳の生涯』で新田次郎賞、2012年『本朝甲冑奇談』で舟橋聖一賞を受賞。近著に『怪しい刀剣』(出版芸術社)など。

感想・レビュー・書評

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  • コロナ禍の初期に話題となった、疫病除けに霊験あらたかな妖怪「アマビエ」の正体を解説した書。併せて、各地に伝わる妖怪の数々も紹介している。

    妖怪アマビエは、江戸時代後期、肥後国の海中から出現して「私は海中に住む "アマビエ" という者です。当年より六ヶ年の間、諸国豊作となるでしょう。しかし、同時に病も流行します。早々に私の姿を描き写して人々に見せなさい」と予言したという。

    要は、コレラなど疫病が流行した時期に、庶民の不安と信仰心を当て込んで厄除け絵を売り捌く、上手いビジネスとして登場したもののようだ。その商魂の逞しさに感心する。まあ、紙一枚で庶民の心に安寧をもたらした、とも言えるかもしれない。護符の類いはみな同じだなんだろうな。

  • 予言をする妖怪「アマビエ」。新型コロナの感染拡大で不安が広がった際に、妖怪掛け軸専門店がアマビエをSNSで紹介し、さらに水木プロダクションが水木しげるさんの描かれたアマビエのイラストをTwitter上にアップして爆発的に広がった。これほど一気に知名度が上がった妖怪は、今までなかったのでは無いだろうか。

    もちろんアマビエが登場したと言われる江戸時代も一気に有名になったのだろうが、現代の情報の伝達速度にはとうていかなうものではなだろう。その予言獣アマビエをはじめとして、古今東西の予言獣を集めて解説したのが「 病と妖怪 ―予言獣アマビエの正体 」という一冊だ。

    第1章 アマビエはどこから来たのか
    第2章 予言する不思議な動物たち
    第3章 幸せを呼び寄せる幻獣たち
    第4章 病にかかわる不思議な生物たち
    第5章 異星人か? 人智を超えた不思議なものたち

    アマビエなど予言獣と呼ばれる妖怪を冒頭で紹介しながら、疫病蔓延時に取りだたされる予言獣に関する考察が書かれていて興味深い。また、それに続いて幸せを呼び寄せる幻獣やそれ以外の不思議な存在にまで話が広がっていき、日本だけではなく世界に広がる様々な不思議な”モノ”が紹介されてていて興味が尽きない。

    私も子どもの頃にゲゲゲの鬼太郎を見て妖怪の気配に怯えたものだが、昔も今も人は人智を超えた不思議なものに惹かれるとともに、「困った時の神頼み」ならぬ「困った時の妖怪頼み」をするものだということを改めて知った。妖怪好きならずとも楽しめる一冊だと思う。

  • アマビエはじめ、あらゆる予言獣、瑞獣などを瓦版や錦絵から紹介。
    UFOの絵などもあって、興味深かった。

  • アマビエに限らず、様々な予言獣、もののけについて、言い伝えられたエピソードか示されている。
    一番の驚きは近代化が始まっている明治期に入ってもそのような話があるということ。
    民衆の間では意外と最近までもののけが力を持っていたことが分かる。

  • アマビエを始めとする妖怪は、護符を売らんかなとする摺師たちが広めていたらしい。今ならアクセス数を稼いでアフィリエイトで儲けようとするため、刺激的な見出しで陰謀論を量産するのと似ているかも。。。

  • コロナウイルスに振り回され始めてからもう1年たつ。早いものだ。正体の分からないものに対して恐怖心を抱き、何かにすがり付きたくなるのはいつの世も変わらない。




    去年、アマビエがネットで話題になってから一気に火が付いた。



    この原典は、「肥後国海中の怪」というタイトルで、弘化(こうか)3年(1846)4月と年号と月が入った半紙1枚に描かれた図像だ。



    アマビエの起源について著者は、文化2年(1805年)に赤痢が流行ったときに出た「神社姫(悪魚)」だと推測している。



    その後も、赤痢が流行したときに魚体の形をした人魚が登場している。





    いつの時代も商魂たくましい人がいる。明治14年(1881)にコレラが流行したときに、「天彦図」大量販売しようとした男たちがいたそうだ。




    売り文句が、今から30年あまりは世界消滅する時期に当たり天災が続く。そこで天彦の姿を写したものを頒布したいと、東京近郊の葛西金町に3人の男たちが地域住民の一括販売を持ちかけた。




    著者はまるで現代のマルチ商法と述べているが
    まさにその通りだ。



    予言獣はアマビエだけではなかった。「予(くだん)」という人面獣がいる。最古の記録は江戸時代後期だ。




    この「件」は、太平洋戦争時にも庶民の間で話題になった。




    人間の想像力は時にとんでもないものを生み出す。アマビエはじめとする予言獣の存在がまた注目を集めるときは、また新たな感染症が流行するときかな。

  • 新型コロナ化で話題になっている「アマビエ」を、わかりやすく紹介している一冊。いろいろな資料から情報を引っ張て来ているので、それを楽しいと思うか雑然としていると思うか。私は半々だった。
    アマビエだけでは一冊もたず、他の予言獣のアマビコや件、瑞獣幻獣も取り上げられている。こちらは予想外だったので嬉しかったのだけど、情報的にはよく知られている部類かなぁ。

  • アマビエから始まって予言獣や幻獣、さらには「不思議なものたち」まで日本の様々な怪についての様々を書いた本。東郷隆さん、時代小説作家として著名だけどこんなものも書くんだ。一般向け新書としてなかなか面白く読めた。

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著者プロフィール

東郷隆/横浜市生まれ。国学院大学卒。同大博物館学研究員、編集者を経て、作家に。詳細な時代考証に基づいた歴史小説を執筆し、その博学卓識ぶりはつとに有名。1990年『人造記』等で直木賞候補になり、93年『大砲松』で吉川英治文学新人賞、2004年『狙うて候 銃豪村田経芳の生涯』で新田次郎文学賞、12年『本朝甲冑奇談』で舟橋聖一賞を受賞。その他著書多数。

「2022年 『妖変未来記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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