「最前線の映画」を読む Vol.3 それでも映画は「格差」を描く (インターナショナル新書)

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  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797680843

作品紹介・あらすじ

グローバル化とコロナ禍でますます加速する「格差」と「貧困」!
マスメディアが伝えない「真実」を世界の名監督はどのように描いたか?
町山智浩が熱く語る「世界と映画」の今!

本書で採り上げる主な映画作品(順不同)

『天気の子』新海誠監督
『万引き家族』是枝裕和監督
『パラサイト 半地下の家族』ポン・ジュノ監督
『ジョーカー』トッド・フィリップス監督
『ノマドランド』クロエ・ジャオ監督
『アス』ジョーダン・ピール監督
『ザ・ホワイトタイガー』ラミン・バーラミ監督
『プラットフォーム』ガルダー・ガステル=ウルティア監督
『ザ・スクエア 思いやりの聖域』リューベン・オストルンド監督
『その手に触れるまで』ダルデンヌ兄弟監督
『バーニング 劇場版』イ・チャンドン監督
ほか多数。

もちろん、すべて書き下ろし!
町山氏ならではの視点で、監督たちが「世界の今」に向けて訴えたかったことを鮮やかに解明。乞うご期待!

町山智浩(まちやま ともひろ)
映画評論家。ジャーナリスト。1962年、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業。「宝島」「別冊宝島」などの編集を経て、95年に雑誌「映画秘宝」を創刊。
その後、アメリカに移住。現在はカリフォルニア州バークレーに在住。TBSラジオ「たまむすび」、BS朝日「町山智浩のアメリカの今を知るTV In Association With CNN 」レギュラー。
著書に『最前線の映画を読む』『映画には「動機」がある』(インターナショナル新書)などがある。

感想・レビュー・書評

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  • このシリーズ、やっぱり面白い。観る前に読むような本ではなく(多くはしっかりネタバレしている)、観た後に読んだならば、さまざま発見と新しい視点を貰えるだろう。

    今回は13作品のうち9作品は公開時に鑑賞済み。私はそれなりに深読みしていたつもりだったのだが、映画のバックグラウンドの知識が全然不足していたし、観察もかなりの部分で見落としがあったことが判明した。

    ⚫︎『パラサイト半地下の家族』ポン・ジュノ監督のフィルモグラフィーは追っているつもりだったけど、日本未公開の『白色人』『支離滅裂』などを知ると、ずっと同じテーマを描いているタイプの作家だということがよくわかる。

    ⚫︎『ジョーカー』幾つかの「謎」部分が一刀両断で解説された。そう言われれば、そうとしか思えない。

    ⚫︎『ノマドランド』クロエ・ジャオ監督は、社会問題を告発しない。彼らを美しく、詩的に描くことに全力を注いでいる。←だから、映画評を書こうという気も起きなかったのか!

    ⚫︎『バーニング劇場版』ミステリとしての見方が間違いだということを、説得力持って示してくれた。全てメタファーだったのだ!

    ⚫︎『わたしは、ダニエル・ブレイク』見落としていた格差社会の構造をかなり解説してくれた。1人だと思っていたけど、沢山の労働者がそのままの役で出ていた。『家族を想うとき』と重ねて、ケン・ローチの真っ直ぐ敵を見据えた告発映画だった。

    ⚫︎『万引き家族』是枝裕和監督のフイルモグラフィーから解説。ポン・ジュノ監督と同様、描いていることはずっと同じ。

    ⚫︎『天気の子』帆高は『ライ麦畑でつかまえて』を読んで家出して東京に行ったのか!予想通り、これはかなり社会に物申す作品だった。

    改めていうことでもないけど、映画は高校生にもわかるように(ということは普通の大人にもわかるように)、物語の背景を説明しない(2時間で、全ての世界を出し切らないといけないから)。多くは1の台詞を聞いて、3くらいはわからないといけないし、それを求められている。だからこそ、映画は面白いのだけど、やはりこういう解説書は大変役に立つ。慎重に見ていたつもりなんだけど、相当見落としていた。「1」と「3」は読んだので、やはり「2」も読んでおこうと思う。

    • 5552さん
      kuma0504さん、こんにちは。

      >多くは1の台詞を聞いて、3くらいはわからないといけないし、それを求められている。

      映画って...
      kuma0504さん、こんにちは。

      >多くは1の台詞を聞いて、3くらいはわからないといけないし、それを求められている。

      映画って、難しい…と感じるのはそこです。
      さりげなく置いてある小物に、重要な意味があったり。
      一見しただけでは読み解けないものなんだな、と町山さんの著書を読む度思います。
      町山さんは基盤となる様々な知識もありますし、映画愛も半端ないと感じます。
      でも、疑問に思ったことを直接監督に聞くことができるお立場なのは、正直羨ましいです…

      2022/08/21
    • kuma0504さん
      5552さん、コメントありがとうございました♪

      町山智浩さんは専門家ですからね。町山さんばりの知識があったら困るわけです。
      でも、できるこ...
      5552さん、コメントありがとうございました♪

      町山智浩さんは専門家ですからね。町山さんばりの知識があったら困るわけです。
      でも、できることならば、もう少し台詞の端々や小物に、なんらかの意味を発見したかったなあ、と思うわけです。

      「例」を全部引いていたらきりがないので、省略したのですが、コメントしてくれたおかげで、少し例を引いてみたいと思います。あくまでも、私の備忘録としてです♪

      ・『パラサイト』ソン・ガンホが社長を殺すのは突発過ぎたのか?最終盤、底辺同士の殺し合いの最中、今際の際でパク社長に「リスペクト」と尊敬の言葉を投げかけた地下室の男グンセに社長は臭いが気になり鼻をつまむ。その時、ソン・ガンホは地下室の大洪水で坂の上パク社長に嫌気がさしていた所で、最後の気づきを得る。「あいつも俺と同じだったんだ。殺すべき相手は違ったんだ」。そして社長の胸にナイフを刺す。ホントの殺すべき悪は金持ち一家でも貧乏一家でもなかった。ホントの悪はこの映画の外、格差社会だっんだ。という作劇だったのです。ガンホの娘を殺したグンセなのに、仇をうつのはおかしいという意見にはそのように説明できます。偶然にも、この前の大豪雨でソウルの半地下はまたもや水没したようです。映画はアカデミーをとったけど、現実は何も変わっていない。ソウルでは23万世帯が半地下に住んでいる。元は北朝鮮武装ゲリラに備えた防空壕だったそう。2025年までに、彼らを退去させる法律を現在作っているそうだけど、見通しはないらしい。

      ・「ジョーカー」ジョーカーがトランプで最強のカードなのは、何にでもなるからだ。そして、バットマンにとって最強の敵なのは、何も持たないからだ。ジョーカーは何の能力もない。しかし弱みもない。自分の命すら惜しいと思っていない。だから最強なのだ。
      見落としていたのだけど、アーサー(ジョーカー)は精神病院で母の記録を見る。母は自己愛性人格障害で、アーサー自身は孤児で、彼女の養子になり(バットマンの父親の隠れ息子ではない)、養母と継父によって虐待され、脳に障害を負った。アーサーは母を締め殺し、何かも失って(ソフィーとの記憶は妄想だった)、ジョーカーとして覚醒する。けれども、最後の最後で、精神病院の壁が黄色から白色に変わった。今までの作劇は全てジョーカーの妄想だったのかもしれないと、町山智浩さんは書いています。

      ・『わたしは、ダニエル・ブレイク』職業安定所の裁定者もフードバンクの職員も、全員実際の労働者らしい。ケイティがフードバンクで缶詰を手に取ったときに、空腹のあまり、その場で食べてしまう。驚くスタッフは、事前に知らされていなかったらしい。だからその驚きぶりは本物。いつものケン・ローチの演出。しかし、ケン・ローチは実際の取材で食べ物にむしゃぶりついた事件を聞いてここに再現したらしい。ダニエルは求職者手当を受給するために、週35時間職探しに費やさなければならない。しかも求職セミナーにも行かなければならない。どちらもしなければ制裁つまり金を減らされる。ここまで酷いとは!これじゃ一日中働いているようなもの。ダニエルは心臓病のために働けないので求職者手当を受けるというのに!日本は確か1か月のうちに2回の面接を受ければ良いとなっていたはず。しかもダニエルは履歴書が手書きだと言って制裁を受ける「求職者手当は支払いを4週間停止します」デジタルについていけないだけで、そこまでやられる!あまりにも展開が早かったので、ここまで酷いとは思っていなかった。ダニエルが安定所の壁に「わたしは、ダニエル・ブレイク。不服申し立ての日程を求める。餓死する前に」と書くのは当然だ。
      「この映画は作り話だ」と保守党の労働年金大臣は批判したそうだが、ケン・ローチは取材した事実から脚本を作った。ダニエルはフィクションだが、彼らの苦難は事実だ。実際、公開後一年半後に60歳のイギリス男性が130ポンドの健康障害手当を20ポンドに減らされ、裁判で戦おうとし、その前に持病で亡くなった。まるきりダニエルと同じだった。

      やっぱりきりがない。この辺りで。
      2022/08/21
    • 5552さん
      kuma0504さん、おはようございます。

      備忘録、読んじゃいました!

      やはり町山さんの読みは面白いです。
      『パラサイト』は、...
      kuma0504さん、おはようございます。

      備忘録、読んじゃいました!

      やはり町山さんの読みは面白いです。
      『パラサイト』は、アカデミー賞とったけれど、現実は変わらない。映画に大きな現実を変える力はないのでしょうか。あ、でも『トガニ』(未見)がありましたね。
      『ジョーカー』は、どこまでアーサーの妄想なのかな、と思っていたのですが、(アーサーにとって)都合のいいところは全部、ということですよね。
      北村紗衣さんの『批評の教室』という本で、「語り手はしばしば嘘をつく」というようなことを読んでから、まるで被疑者の嘘を見破ろうとするへっぽこ刑事のように映画を観てしまいます。笑
      『わたしは、ダニエルブレイク』好きな映画です。
      フードバンクのシーンのケンローチの演出には驚きました。サプライズを起こすことで、生の表情を映画に取り込み、「リアル」も味方につけてしまう。
      私も、職員さんとおなじくびっくりして、そして涙していたような記憶があります。
      そういえば、ケンローチと、是枝監督の対談の新書を図書館でみつけました。いつか読みたいと思っています。

      備忘録に勝手に感想をつぶやきました。


      2022/08/22
  • 「新自由主義」的経済政策によって進む格差社会は近年の映画作品にも強い影響をおよぼし、世界中で格差と貧困をテーマとした映画がつくられつづけていると筆者は指摘する。タイトルを裏切ることなく、収められた13本の映画への評論はすべて経済格差を軸に展開される。SNSなどでもつねづね現代社会にたいする憤りと苛立ちをあらわにする筆者による、きわめてメッセージ性の強い映画評論集である。

    新書としてはやや長めの270ページ弱で、各章ごとが10~26ページで構成される。2作品を除いては公開時期が2016から2021年と、主旨のとおり近年の作品をおもな対象として扱う。国別ではアメリカとイギリスが3本、日本と韓国が2本、そしてインド、ベルギー、スウェーデンがそれぞれ1本ずつとなっている。あらかじめの注意点としては、基本的に対象の映画を観ていることを前提としているため、多くの作品で結末までが語り尽くされる。ネタバレを嫌う方は、観るつもりの映画についてはスキップするなどをお勧めする。

    監督の作家性を重視する方針で、章ごとに掲げられている作品以外にも監督の他作品への言及や内容の紹介にも紙数を割く。とくに#9から#11の連続する3本はすべてイギリスのケン・ローチ監督作品であり、長年にわたって格差を描きつづけた映画監督として重点的に取り上げられている。本書内で何度も参照される古典的な作品としては、序文でも「いつのまにかチャップリンの血をたどる作業になっていた」と述懐したチャップリンの作品群と、ヴィットリオ・デ・シーカの『自転車泥棒』が挙げられる。また、多くの作品でドキュメンタリー的な手法や素人の演者が起用されている点も共通点として興味深い。

    従来からの筆者らしい小気味よく切れ味のある語り口に引き込まれ、非常に重いテーマながらもスムーズに読み通せた。個別に印象に残ったのはやはり身近さもあってか、日韓の4作品と監督だった。なかでも感情を揺さぶられる『天気の子』の評は独立した一篇の読み物としても完成度が高く、本書の最後を締めくくるにふさわしい。そして全体のなかで日本の2作品を最後に配置した点にも本書のメッセージ性を感じる。あとがきでボーナストラック的に登場した青柳拓監督の『東京自転車節』も気になる。

  • 町山さんの本は時折垣間見える感情を抑えきれない文が好きなのですが、本作はそれが顕著だと思いました。それはやりきれない社会への思いの表れなのでしょう。中でも「天気の子」の章は、自分が感じていた印象と大分異なっていたので、改めて観たくなりました。

  • 最近の映画のあらすじの説明が多く、映画を視聴した方が早いと感じた。
    格差という視点からの「天気の子」の作者の解釈や、「ジョーカー」を見たときに分からなかった背景や小ネタは面白かったので、見たことある映画の章だけ読むのが良いと思う。

  • 今の御時世、フィクションに対し「何を描かんとしているか」ではなく「自分の善悪基準に則っているか」でモノ申す人間があふれている。そんな社会に対し、敢えて鋭く挑戦的な問いかけを行った映画たちを取り上げている。『パラサイト/半地下の家族』『ジョーカー』『万引き家族』『天気の子』などの話題作は、話題になるだけの強烈なドラマツルギーが存在していたのだ。好き嫌いが両断されるくらいの。

  • 偶然にも世界同時多発的に格差を描く映画作品が公開され、評価を得た。そんな作品群を取り上げ、その作品の監督作品と共に解説・評論する。シリーズ三作目だが、著者による解説は鋭く深い。

  • 町山智浩氏は、映画評論家であると同時に優れたジャーナリストである。学ぶことが多い。

  • 『ジョーカー』『パラサイトー半地下の家族』『万引き家族』など観た映画もけっこう入っていた。それぞれの映画の話だけでなく、その映画をとった監督のデビュー作あたりから話を始めて、その作品が撮られる背景、監督の思想まで説いてくれるので、興味深く読めた。タイトルの映画だけでなく、この監督の別の作品も観てみたいなと興味をひかれるものもあった。ただねぇ。それぞれの作品に貫かれたテーマは、格差と貧困。家族を抱えて憂き世を渡る身としては、決して他人事ではなく、考えるべきことと思うんだけどさ。いや、それだからこそ、なおさらそういう話を立て続けに読まされると、だんだん気が滅入ってくる。特にスウェーデンとかインドとか、知っているけどなじみのない国の話となれば、その国はみんながそういう状況にあるのか、とすら感じてしまって、つらくなってくるんだよね。だから、読み進めるのに、ちょっと時間がかかったな。夢ばかりみて生きていたいわけじゃないんだけど、つらい場面ばかりみるのもまた、ちょっとしんどいんだよね。

  • #5『ザ・スクエア 思いやりの聖域』
    p96
     つまり、「他にも目撃者がいっぱいいるんだから、誰か助けるだろう」「助けないのは俺だけじゃない」という言い訳による保身。

    #8『ロゼッタ』
    p177
    貧しい人々は、経営者や資本家といった自分たちを搾取する者たちに怒りを向けず、自分よりもさらに弱い者の足を引っ張ることが少なくない。

    #10『わたしは、ダニエル・ブレイク』
    p201
    日本でも生活保護など福祉の受給申請は複雑で、審査は厳しい。まるで申請者の心を折るように。

    #12『万引き家族』
    p236
     実は大阪で釣具を盗んだ一家も、釣り竿を換金しなかった。彼らの家から押収された盗品のなかに釣竿があった。彼ら親子は釣りが好きだった。金のために盗んだのではなかった。それを知る者は少ないが、それを知った是枝監督は「悲しいが美しい」と思ったという。


    映画は7本ほど鑑賞済み。ケン・ローチに限っては『ケス』しか観ておらず、早く観なければなと思いながらも楽しく読了。しかし楽しいだけでなくひたすらに苦い。
    格差と貧困にスポットを当てた本書。好きな評論家で、町山さんの映画ムダ話をちょいちょい愛聴しているのもあり、テキストの形で手に取れるのは嬉しい限りです。取り扱っている作品も2021年のもあり、テーマはタイムリーで現在進行形。

    『はじめに』のツイートもバックラッシュを生で見ていて、貧しいのは財布の中身だけじゃないのがグロテスクな形で露呈していたようにも思えました。みんな貧しい、みんな苦しいのだから我慢、ルールもみんな守っているから守ろう。正論だが苦しく、映画を観る余裕もなく、そして観たとしてもはたして読み取れるのかどうか、というところ。『ロゼッタ』の足の引っ張り合いの文章が現実としてあります。

    近年の良作だけでなく、風刺描写がてんこ盛りの『ザ・スクエア』、そして外せないケン・ローチなど充実したセレクションだと思います。古い作品だと、(たしか)YouTubeなどでしか観ることのできなかった66年の『キャシー・カム・ホーム』も収録。ポッドキャストの補足としては有り難く、書籍に収められていること自体珍しいかもしれません。


    映画業界自体は資本主義どっぷりで、チケット高いのも配給会社の取り分が大きいせい(?)もあるのかなと、最近は映画館のチケット高いなとか考えるくらいには自分も貧しいのかもしれない今日この頃、せめて心だけは豊かに、その余裕をシェアできる程度には、映画や文化に触れていたいと改めて思いました。

  • 【最終レビュー】

    昨年末、紀伊国屋書店 残高ポイントを活用購入。

    映画館鑑賞作品・レンタル鑑賞/未鑑賞

    半々ぐらいに均等だったので、釣り合っていた作品のラインナップでした。

    [社会=時事=政治=映画]

    改めて、切っても切り離せないリンク性を骨太で感じ取れた。

    個性的な各作品を通して

    緻密な裏の裏を深く掘り起こしながら

    見え隠れする未知の数々にも、多々、多角的に分析されている。

    やはり一番には

    韓国映画のスクリーン=エンタメの媒体を通して世界へ発信できる

    [多様な母体性]が際立って垣間見れていた印象の度合いそのものが

    邦画実写界とは比べる余地のないぐらいの領域にまでに一層ランクアップしていること

    今一度いい意味で痛感したと言える。


    だからこそ、今の邦画実写界隈を批判せずにはいられない。

    狭い空間、ごみごみする中、椅子取りゲームをしている環境下に囲まれながら

    本質的なこういった実情を知らずに

    是枝裕和監督の作品が特に致命傷として槍玉=批判のターゲットにされてしまうのかもしれない。そこは頷けました。

    現代社会に生きる生身の人間が持ち合わせる

    [二面性]

    このキーワードが特にインパクトとして突き刺さるものを感じた。

    現実味、世界各国が抱えている

    『社会の闇』

    ほぼ均等に同じぐらいにあることも、改めて感じた。

    映画の媒体だけは、本国においてだけは、ジリ貧=落ち目であること。そういうことなんです。

    だから、コロナの2年半の閉塞感がもたらした

    本国での映画の立ち位置は

    更に後退してしまった。あらゆる怠慢の数々によって…ただただ不信感しかない。

    だから、今は、邦画実写は鑑賞できない。

    上記のこれらのことを感じているから。

    ラスト、著書の中から

    私自身も常々、懐に感じているメッセージを引用しながらレビューを終えます。

    堅苦しくすみません。

    ただ、このことに今からしっかりと向き合っていかない限りは、邦画実写はジリジリ水没していく。

    是枝裕和監督自らイエローカードを発している以上は…

    [自分の影、抑圧された自分を見るのが、一番怖い]

    [富裕層優遇、福祉削減]

    [弱さをえぐり出す 苦笑いコメディ]

    [反骨の師匠]

    [目の前の困っている、1人を助けようとしない人達が、自分たちの富を、貧しい人々に分配する 政治家を選ぶだろうか?]

    ●本著より 是枝裕和監督 最初で最後の邦画実写界への遺言 と言ってもいいでしょう…これは…●

    【壊れても、傷んでも、その中には、しばしば、美しい瞬間がある。それを、救い上げたかった】


    ●是枝裕和監督「英語圏で撮ってみたい」日本映画界には痛烈発言「何年か、このままいくと手遅れ」●

    以下の配信記事より

    https://www.nikkansports.com/m/entertainment/news/202205290000269_m.html?mode=all

     

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著者プロフィール

1962年生まれ。映画評論家。1995年に雑誌『映画秘宝』を創刊した後、渡米。現在はカリフォルニア州バークレーに在住。近著に『トランピストはマスクをしない コロナとデモでカオスのアメリカ現地報告』(文藝春秋)、『映画には「動機」がある「最前線の映画」を読む Vol.2』(集英社インターナショナル)、『最も危険なアメリカ映画』(集英社文庫)、『町山智浩のシネマトーク 怖い映画』『町山智浩の「アメリカ流れ者」』(スモール出版)などがある。

「2021年 『町山智浩のシネマトーク 恋する映画』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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