教養としての「病」 (インターナショナル新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797681246

作品紹介・あらすじ

週3度の透析、前立腺癌、冠動脈狭窄――
立て続けに襲い来る病と闘う「知の巨人」が考える患者学とは?
京大法学部出身、異色の主治医と語り尽くす「現代医学の問題点」

【本書の内容】
「新自由主義」によって毒された日本の医療──カネさえあれば、どんな病気も治せるというのは幻想にすぎない!
自分自身が腎臓病患者で人工透析を週に3回行なっている「知の巨人」佐藤優が警鐘を鳴らす──本当の医療は、医者と患者が「共同体」を作ってこそ行えると説く、その理由とは?
対談の相手は、佐藤優氏の主治医である片岡浩史氏(東京女子医大病院)。
片岡医師は京大法学部を出たのちにJR西日本に就職し、駅員や車掌を経験したこともあるという異色の経歴の持ち主。しかし、だからこそ「純粋理科系」の医師とは違う観点で人間を捉えることができる異色のドクターでもある。

【著者略歴】
〈佐藤優〉1960年、東京都生まれ。85年同志社大学大学院神学研究科修了。2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『獄中記』(岩波書店)、『交渉術』(文藝春秋)など著書多数。

〈片岡浩史〉1970年、NY生まれ。腎臓内科医(東京女子医大 助教)。京都・洛星高校を卒業後、京大法学部に入学。卒業後はJR西日本で働くが、その現場経験を通じて、医療に携わりたいと思い、退社。鹿児島大学医学部で学ぶ。腎臓内科医として日々患者と向き合う一方で、腎臓病研究者として医学の進展を、社会保険診療報酬請求書審査委員や診療ガイドライン作成委員として日本の「医療の質」の向上を追求・模索している。医学博士。

【目次より】
はじめに──病と私 (佐藤優)
第一章 医師と患者の「共同体」をどう作るか
第二章「生き方の基礎」を見つけた場所
第三章 今の「医学部ブーム」が危ない理由
病と戦う──「異質なもの」との対峙 (片岡浩史)
第四章 新自由主義が日本の医療を荒廃させた
第五章 人はみな「死すべき存在」である

【佐藤優より】
私はキリスト教徒(プロテスタント)なので生命は神から預かったものと考えている。神がこの世で私が果たす使命が済んだと思うときに、私の命を天に召す。この世界に命がある限り、私にはやるべきことがあると考え、仕事と生活に全力を尽くすようにしている。
現時点で腎移植まで進むことができるかどうかは、分からない。腎移植が成功すれば、そこで長らえた命を自分のためだけでなく、家族と社会のために最大限に使いたいと思う。そこまで進めないのならば、透析という条件下で、できる限りのことをしたいと思っている。(まえがきより抜萃)

感想・レビュー・書評

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  • <書評>『教養としての「病」』 医者と患者の共同体 - 琉球新報デジタル|沖縄のニュース速報・情報サイト
    https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1773611.html

    教養としての「病」 | 集英社インターナショナル 公式サイト
    https://onl.sc/REavdVa

    教養としての「病」/佐藤 優/片岡 浩史 | 集英社 ― SHUEISHA ―
    https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-7976-8124-6

  • 著者は、佐藤優さん(1960~)と片岡浩史さん。
    佐藤優さんについては、どのような方か分かっているので、片岡浩史さんについてだけ、見ておきます。

    ---引用開始

    〈片岡浩史〉1970年、NY生まれ。腎臓内科医(東京女子医科大学)。京都・洛星高校を卒業後、京大法学部に入学。卒業後はJR西日本で働くが、その現場経験を通じて、医療に携わりたいと思い、退社。鹿児島大学医学部で学ぶ。腎臓内科医として日々患者と向き合う一方で、腎臓病研究者として医学の進展を、社会保険診療報酬請求書審査委員や診療ガイドライン作成委員として日本の「医療の質」の向上を追求・模索している。医学博士。

    ---引用終了


    で、本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    「新自由主義」によって毒された日本の医療――カネさえあれば、どんな病気も治せるというのは幻想にすぎない!
    自分自身が腎臓病患者で人工透析を週に3回行なっている「知の巨人」佐藤優が警鐘を鳴らす――本当の医療は、医者と患者が「共同体」を作ってこそ行えると説く、その理由とは?

    ---引用終了


    佐藤優さん、ご自身の健康状態について公表されているので、ちょっと見ておきましょう。

    ・2022年3月10日、前立腺全摘手術。
    ・2023年6月27日、東京女子医科大学附属病院で腎臓移植手術。ドナーは配偶者。

  • 佐藤優さんは人工透析、前立腺全摘出のがん手術、冠動脈狭窄に対するステント施術、と「病気のデパート」状態。
    慢性腎臓病になった最大の原因は生活習慣病であろうと。
    健康を後回しにして仕事を頑張ってきた結果なんですね。

    この対談のお相手片岡浩史先生は、約10年に渡り、
    佐藤さんの腎臓病主治医をされています。
    京大法学部卒業後JR西日本で3年働いた後、
    鹿児島大学医学部で学び、
    腎臓内科医として日々患者と向き合う。

    この本表紙を見るとつまらなそうですが、
    めちゃ面白かった!!
    二人ともいきなり殴られた経験あり、
    片岡先生のJR経験はお気の毒に思えたけど
    佐藤さんのロシアでのところはちょっと笑った、ごめんなさい。

    テーマからは外れるけど、ポケットマネーを使って仕事をしてしまうと、その後それ以上の金を補填しようとする、だから仕事で個人の金を使わないようにすることはきわめて重要なんだと。
    そういった類の雑談も面白かったです。

    佐藤さんは病気になってから原稿の出来が良くなった気がするそうです。自分で言うのもおかしな話だけど、「命に限りがある」と思いながら書いているからだそうです。
    大病をかかえて暗い話になるかと思っていたら
    確かにこの本は本当に面白かった。
    この後も次々佐藤さんの本を読む予定です。

    知の巨人。すべてこの世に書き残してください。
    毒素も出してね。

  • 知の巨人・佐藤氏と10年来の腎臓内科主治医の片岡氏との対談形式で、現代日本の医療の問題点を抉る。この抜群のネーミングセンス含め、万人に読んでもらいたい傑作新書。もう7年前になる自身の肝移植手術の当時を思い出しながら拝読させていただいた。新自由主義と相容れない、パターナリズムが消滅してしまった医療現場の実態から、行き過ぎた個人主義が、他国に比較して強固だった日本の共同体(意識)を粉々に粉砕してしまう流れが手に取るように理解できる。私自身も悪化した腎臓を一所懸命維持している状況なので、身につまされる思いで読んだ。

  • どんな「病」であれ、誰だってできることなら避けて通りたい。でも、人間として生まれてしまったからには「生老病死」は避けられないのも事実。コロナ禍を通じて多くの人が「死ぬかもしれない」経験をされたかと思うが、長い人生において早いうちに自らの余命を意識する事は案外大事なことではないかと思う。私自身、母のキーパーソンになり夢中で介護をしていた最中に「病の宣告と治療」が自分ごとになってしまった時には青天の霹靂とはこのことか!と慌てたけれど介護を通じて得た知識、例えば基本的な体調管理の方法や主治医や看護師、医療関係者との意思疎通がいかに大事かそして当たり前だけど命には限りがあること、それでも最期までできることが有るかもしれないと知ったことが自分の治療にも心の安定にも役に立っている。本書は(紹介は省くが)佐藤優さんと腎臓内科専門医になる過程を含めて片岡浩史医師だからこその経験も多々語られているけれど、そこにこそ誰にとっても大事な学びがたくさん含まれていると思った。
    目次の充実ぶりとシンプルながら的確なタイトルもさすが!

  • 駅員さんも医者も大変だと思うけど、想像よりすごかった。
    片岡さんに共感も多ければ学ぶものも多かった。
    必要だったり価値の高いことの報酬が低かったりボランティアだったりすると感じてるけど、医者もそうなんだな
    Diosのたなかくんも制約のある自由について話していたが、何事も極論は上手くいかないものだな
    古くたっていいものはいい、昔の全部が悪いわけじゃないし、今も全部が悪いわけじゃない、何事もバランス
    勉強して国家試験通って実際に患者を見てきたお医者さんの方が自分より知ってるのはわかるんだけど、いろんな方がいる中で、お医者さんの力量やどういう考えで判断してるのかがわからないし、変な治療は受けたくない。だから話を聞きたい。でもそれは時間がかかるし、自分の頭の理解力が追いつかないこともあるだろうし。出来のいいお医者さんも変なお医者さんも同じ顔して言ってくるのが見極めが難しくて疑心暗鬼になるのもわかる。商業化が余計に。
    たしかに横領がよくないというのを理解してる人は多いが、経費で落ちないことの問題は軽視されがち。遅刻に厳しいのに延びることには無頓着みたいな。
    最近、受け入れにくいものについて考えているところだったから、考えさせられる本でした。

  • 読了。よく読んでる著者が病気なんだと本屋で立読みして知った。なんとなく気になって買って読んだ。著者は強いなと感じた。宗教の力なのかなと思った。今さらどこかの宗教の信者になれないが、死と対峙するとき、宗教は強力な武器になるのではと思った。

  • 予想外だったのは3点。
    1つ目は、10年以上も前から既に佐藤優氏の治療が始まっていたこと。
    2つ目、さすがというべきか、現役医師との共著でありながら、対談の中で佐藤優氏が主導で医療について語っていること。
    3つ目、主治医と患者という組み合わせの斬新さに加え、医師である片岡氏の生き様や思想、文章がまたとてもドラマチックかつ重要な示唆に富んでいて、またその謙虚で真摯な人柄も相まってとても興味深く、共感を得たこと。

    1冊の本ではあるが、ジャンルの異なる数冊の全く別の本を読んだかのような不思議な感覚を得た。

    最初は佐藤優氏の病気の遍歴や現状について。
    他の著書から、食べることが好きで、運動は好きじゃなく、またかつて超長時間労働を業務でこなしていたたこと、またショートスリーパーであることなどは知っていたため、生活習慣病のリスクが極めて高いのが気になっていた。
    北方領土問題など、健康よりも仕事を優先してきた、という話が出ていて、なるほど佐藤優氏らしい。
    ただ、健康第一、という基本的な部分が欠落していたのは意外で、その要因はなんだったのだろうと思ったがその明確な答えはなかった。

    お次は主治医である片岡氏との対談。
    医師が実は儲からない仕事であるだとか、大勢の医師たちのボランティア精神によって今の日本の質の高い医療がギリギリで維持できていることだとか、医療業界が新自由主義化していくことによる重大な危険性だとか、多くの面で目から鱗であった。

    医師の年収は、少なくとも日本人の平均年収の中央値を超えているため、「儲からない」「高収入ではない」というのは素直に受け取りにくいが、考えてみれば多額の学費と長い学習や下積み期間を超えるという多額のコストを支払っての結果でそのリターンとすれば、確かにショッパイだろう。

    とはいえ、重要なのはむしろそこじゃなくて、お金や報酬の多寡によって医師になるかどうか、どの分野を選ぶかという観点自体に問題があって、自発的な貢献の気持ちや、それに見合った社会制度の設計、そしてそのことの周知こそに意味があるのだった。

    医者は優しく情熱に溢れながらも高給取りであくどい、という一般的なステレオタイプイメージは、ブラックジャックなどの古い国民的なコンテンツによる影響が大きいんじゃないだろうか。

    後半は片岡氏による執筆で、医療や病に対する考え方や経験が述べられている。
    これまで医師が書いた本と言えば大体が専門的な医学や健康情報、啓蒙的な情報を主張したものしか読んできていなかった。
    なので、一医師としてのこれまでの診療経験談や思想のことを知れたのがとても新鮮だった。

    とても良い本だった。
    全ての一般の人にお勧めしたい。

  • 佐藤優さんの本を愛読しているが、昨年ぐらいから闘病を公にしておりすごく精力的に本を出していると思っていた。そんな佐藤さんが自分の病状について赤裸々に語った本。さすが知の巨人だけあり病気についての知識量も半端ない。主治医との対談という形を取っており、専門家としての見解をわかりやすくうまく引き出しており病気についてすごく考えさせられた。共著者の片岡医師も言っているが、この本を通じて一人でも多くの人が病気についての意識変革につながることを期待したい。私自身健康第一だと再認識し、生活の習慣を変えようと強く思った。

  • 佐藤さんの慢性腎臓病との闘病体験を踏まえて、主治医の片岡氏と編んだ対談集である。

    闘病記としての側面もあるし、腎臓病についての啓蒙書としても読める。何より、「患者学」の書でもある。

    対談以外に、著者2人が各1章を書き下ろしている。
    日本の医療のあり方、そして患者側が持つべき心構えについて縦横に語った部分が、いちばん面白い。

    逆に、著者の1人・片岡浩史氏の半生を深く掘り下げた章はつまらなかった。失礼ながら、私は氏個人にまったく関心がないので。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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