WHY BLOCKCHAIN: なぜ、ブロックチェーンなのか?

著者 :
  • 翔泳社
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784798162652

作品紹介・あらすじ

インターネットの初期に描かれた分散・自律・自由の夢はGAFAなどのプラットフォームへの情報集中によってなくなったかのように思えます。

中心的な管理をともなわないブロックチェーンの技術は、こうした一極集中を破壊し、新たな可能性を築くものです。

一連の仮想通貨市場の混乱と停滞によって期待が落ち着いたかにみえるブロックチェーンですが、その可能性は消えるどころか、世界的な産業の取り組みや、実証実験の進展によってますます高まっています。

この本は、これまでテクノロジーとして語られたブロックチェーンをビジネスの手段として捉え、既存産業にどのようなインパクトを与えるのか、どのようなビジネスモデルを描けるのか、人・組織・社会の将来イメージをどのように描くけるのかをベンチャー創業者の経験と実践、ビジョンを踏まえた視点で書き下ろしたものです。

感想・レビュー・書評

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  • ブロックチェーンに関して、技術的には深入りせずビジネスや社会への影響に重点をおいた本。少々議論が薄いところと自分の会社の宣伝が入っているけど、入門書としてはよかった気がする。

    ブロックチェーンはIoTやクラウドとか近年のテクノロジーと比べるとやや概念的で難しい部分がある。そして現代の中央集権的なシステムと相容れない、革新的な意味合いを持っているという点が面白かった。

    ブロックチェーンは仮想通貨と結びつきがちだけど、実際それは一つの運用例でしかなくて、技術としてもっと大きな意味合いを持っていることがよくわかった。AIと同じように技術の実態や本質を深く理解せずに社会の期待が先行して過熱感が出てしまうケース。

    割と最後の方はSFチックな話に近づいていてワロシ。技術に関してちゃんと勉強して、その本質的な意味、提供価値を理解するのは大切やなと。Youtubeのnakata universityで軽い解説もあっておすすめ。

  • なぜブロックチェーンなのか?
    どうしても「ビットコイン」と混同されてしまうが、両者はイコールではない。
    ブロックチェーンは仕組みというか単なる技術基盤であって、その上に乗っているサービスがビットコイン(仮想通貨=暗号通貨)なのだ。
    ブロックチェーン技術は、確かにこれからの未来社会を変えていけるインパクトを持っている。
    その事に本当に気が付いている人は、今現在ですら少数派かもしれない。(自分だって完全に理解しているかは自信がない)
    これは「ブロックチェーン=ビットコイン」という勘違いが原因なのも否定できない。
    そこで思考停止してはいけない。
    正しくブロックチェーンの本質を理解し、その「流れ」を見ることが本当に重要なのだと感じてしまう。
    もしブロックチェーン技術を「未来のお金の形なの?」「電子マネーと何が違うの?」程度に考えていたら、それによって社会がどう変化していくのかを見極めていくのは、相当に困難なことだろう。
    本質を理解していれば、単なるお金の話ではなく、「ブロックチェーン技術が、社会の仕組みそのものを変える」ことに気が付くはずだからだ。
    本書は、技術的な話よりも、あくまでも「ブロックチェーンとは何なのか?」「今までのインターネットと何が違うのか?」などの点において丁寧に解説してくれている。
    だからこそ「なぜブロックチェーンなのか?」なのである。
    著者は北海道を拠点にブロックチェーンに関わるベンチャー企業を経営しているらしい。
    そこで道内の他企業経営者から相談を受けるそうだが、「それ、わざわざブロックチェーン技術を使う必要、なくない?」の案件も多いらしい。
    それだけブロックチェーンは流行り言葉であるし、何か「万能」の「魔法の箱」感があるのだと思う。
    実際ブロックチェーンは運用面でも様々な課題が残っている。
    今現在の目に見える成功例が「ビットコイン」だけに留まっているというのも致し方ないところだろう。
    だからこそ、既存システムでは出来ないことで、ブロックチェーン技術で出来ることは何なのか?
    ブロックチェーンの特性を活かして、本当に向いているサービスとは何なのか?
    そういうことを正しく考えて議論することが大切なのだろうと思う。
    本書の中で「バンドル・アンバンドル」の話が出てくる。
    「バラバラをまとめるか」もしくは「まとまりをバラバラにするか」という考え方なのだが、ここもブレなく思考を巡らせることが非常に大事な点だと思っている。
    例えば、「シェアリングエコノミー」と「ブロックチェーン技術」は一見すると似ているが、果たして一体どこが異なるのだろうか。
    こういう細かい点まで解像度高く理解していくことが、これからの社会を生きていく上で本当に大切なのだろう。
    Web3、DAO、メタバース、NFT、これらの言葉もバズワードと思っている人が多いと思うが、実際は違う。
    これらの流れこそ本流と言っても過言ではない。
    確実に我々の実生活を変えていくだろう。
    これらが日常化した当たり前の世界が、もうすぐそこまで迫っている。
    リアル世界ではなく、バーチャル世界こそが分散化されたブロックチェーン技術で完全実現化した時は、おそらく社会の様々な部分が変わっているはずなのだ。
    日常のほとんどをメタバース世界で過ごし、そこのメタバース世界の中で様々な経済活動が行われていくだろう。
    実際の貨幣は当然に使われず、独自トークンだったり、NFTが流通したりするのだろう。
    そんなことが当たり前になっていく中で、社会が変わらないとどうして言えるのだろうか?
    すべてが分散化に向かう訳ではないが、ある部分については確実に進んでいくだろう。
    なぜブロックチェーンでなければいけないのか?
    その文脈を正しく理解することが、これからを生き抜く術だと感じる。
    そんな未来社会の中で、例えば「国家」という枠組みはどうなっていくのだろうか?
    「貨幣」という国家単位の通貨は、メタバース世界が標準となった時代にはどういう価値を持つのだろうか?
    現段階で明確な答えは持てないとしても、常に想像力を働かせて考え続けること。
    そしてそれらの変化を興味を持って追いかけ続けることが大切なのだ。
    おそらく未来は我々の想像を軽く超えてくる。
    矛盾しているような話だが、現実が想像を超えてくるのか、はたまた人間の想像力の方が勝るのか?
    我々に立ち止まっている暇はない。
    「なぜブロックチェーンなのか?」
    その答えを探して考え続けることが大事なのである。
    (2023/4/30)

  • 今話題のブロックチェーン。それをちゃんと理解している人はどれぐらいいるんだろう。

    僕は来年から社会人で何も知識がない状態で社会に出るのが嫌で、たまたまこの本が紹介されていたので拝読しました。

    前にもちょっとだけweb3.0に関連する本を読みましたが、その時は全然理解できず。
    今回はすごく噛み砕いてくれていて、かつイラストもあり分かりやすかった。

    ひとまずは自分なりにブロックチェーンの特徴(暗号化技術、コンセンサスアルゴリズム、ピア・トゥ・ピア、DLT)は理解した。
    それを応用する、実用に向けてどう使うのかはもう少し勉強が必要。

    他のブロックチェーン関係の本とも読み比べながら理解していきたい。

  • 007.609||Ts

  • ▼アドレスの有効確認
    ・全ノードから有効確認を受けたアドレスは、ビットコインネットワーク内にある「トランザクションプール」という場所に溜められます。
    ・プールには、全ビットコインアドレスが集められ、溜まっていきます。
    ・ただ、溜まっているアドレスは全ノードが有効と判断したアドレスですが、それぞれはまだ注文として承認されてはいないのです。「検証済みだが未承認のトランザクション」といういわば中途半端な状態で、プールに溜められています。
    ・取引として最終的に承認してもらうためには、トランザクションプールに溜まったビットコインアドレスをブロック詰めする作業が必要。

    ▼ノードの役割
    ・4つの役割
    ①ウォレット
    ②ルーティング :暗号化されたビットコインアドレスがwalletから出てきたのち、それを全ノードが検証する作業のこと
    ③マイニング
    ④フルブロックチェーンデータベース
    ・全ノードが、入ってきたトランザクションをチェックします。このとき「OKでした」と返事を返すだけで、チェック済みのトランザクションを残さないのがライトノード


    ▼ブロックチェーンが苦手な3つの領域
    ①一件あたりのデータが大きい
    ・とはいえ、このパターンには解決策があります。ブロックチェーンと既存技術と組み合わせてシステム構築する方法
    ・ブロックチェーンではコンテンツそのものは扱わず、コンテンツの目録と利用履歴の管理に特化
    ・ただし、この際に非常に大事なことがあります。コンテンツを、単純な画像データと、データベース上のIDのみにしておくことです。この画像がいつ何の目的で誰によってつくられたか、何の情報も伴わない。もしこの画像が特定の誰かのプライベート写真に見える画像だったとしても、本物である証拠もまったくありません。

    ②特定のデータのみを検索してすぐ取り出したい場合
    ・ブロックチェーンというのは、過去から今に至るまでの変化をすべて記録した台帳が、暗号化されて格納されているイメージです。逆にいうと、ある利用者の意図にそって、シンプルな、後に必要になりそうな特定のタイミングで特定の情報だけを記録する、ということはやっていないしできない。特定の情報を見ようと思えば、前章で申し上げたフル・ノードに行ってこれまでのすべての変化を見ていくことになります。

    ③管理対象が、個体管理
    ・ブロックチェーンである以上、そこには暗号化されたアドレスしかありません。人間に理解できる、読めるようなものは一つも残っていません。つまり、キーワード検索、テキスト検索のようなことはそのままでは不可能なのです。
    ・実際のところ、最近プライベートブロックチェーンの一部ではこのあたりを改善する新しい手法も出始めています

    ▼ブロックチェーンが役立つ場面
    ・1企業のシステムをブロックチェーンに置き換えるのではなく、異なる企業間で協業する時にこそ役に立つ。薬局を営んでいる個人商店の在庫を共同で管理するなど。

    ▼ブロックチェーンの実態
    ・ブロックチェーンを利用してサービス運用をするだけならコストは安いが、基盤となるブロックチェーンのオープンソースを開発するのは、結構お金がかかる
    ・「これまでの技術で大きな問題なく動いてきたシステムを、わざわざブロックチェーン技術で作り直す意味があるでしょうか?「ない」というのが私の答えです。大事なことは、単純に既存システムを置き換えることではなく、これまでの技術からは到底出てこないような、ブロックチェーンならではの新しいシステムを構築することだと私は考えています。
    ・トークンエコノミーを使わないとすると、ブロックチェーンの利点は堅牢性

    ▼トークンエコノミー
    ・トークンエコノミーでは、現在定量的な尺度がつきお金になっていないものをトークン化することが必要なのではないか?共助活動など。

  • ブロックチェーン技術を、ビットコインのような暗号資産から距離を置いて話している。まあ暗号資産の話もするんだけど、ブロックチェーンの本質はそこではなくて、社会を変革する力がある、というのが著者の主張。
    書名にもあるように、ブロックチェーンを使ったビジネスは、そこに必然性がなければならないと主張している。どうしてブロックチェーンを使うのか。新しいから、流行っているから、ではなく、ブロックチェーンの特性を生かしたものでなければならない。・・・という割には、最後の方で具体的に挙げられているビジネスに、ブロックチェーンを使う必然性がいまいち理解できなかった。

  • ブロックチェーンについて、その根幹的な概念から将来もたらす社会的影響まで述べた本。ブロックチェーンが向かない点やリスクにも触れており、一般的な技術解説的な本よりも社会的な視点に立って書かれている。

    ブロックチェーンはビジネスレベルでは到底活用されておらず、「WHY BLOCKCHAIN」の壁を超えられないケースかほとんど。そもそも現行で機能しているシステムをブロックチェーンで置き換えても効果は薄く、ブロックチェーンで新たな仕組みを生み出すことに大きな価値がある。また、長らく中央集権型の枠組みで成り立ってきた社会に、ブロックチェーンが作り出す管理者のいない分散型社会は受け入れられづらい。
    中央集権型から一気に分散型へ移行するのではなく、まずはプライベートブロックチェーンで中央集権ハブを複数持った非中央集権型(DAO)を目指していくべき。

    個人に自立と責任を求めるDAOの世界観がが極端な資本主義を加速してしまい、民主主義が破綻するリスクがあるというのは特に興味深かった。

  • めっちゃ良いと思う
    ・ブロックチェーンが何か大体わかる
    ・とても丁寧
    ・誰でもわかる
    ・実例ともなっているのがいい
    ・理解はできたがビジネスにするのがとても難しそう
    ・考えて面白い内容

  • 四種の神器 IoT、クラウド、ブロックチェーン、AI
    IoTでデータを取り、クラウドにデータを保存、ブロックチェーンで仕分けと鍵をかけ、AIでデータを解析利用する。

    データが貯まるブロックごとに暗号化して、ブロックに入れる。2番目をチェーンのように繋いでまた、ブロックに入れる。それがブロック管理。

    ブロックチェーンを理解する上で4つの技術
    1、暗号化技術→安全にデータを保存してブロック(箱)に入れる。
    2、コンセンサスアルゴリズム→みんなで箱の中身を確認
    3、ピアトゥピア(P 2P)→皆で共有。分散型、データが違くたって、改ざんがあっても、サーバーダウンしても、他が共有してるからすぐ発見出来る。Winnyの件もこの技術
    4、DLT(分散型台帳技術)データをかんりして、分散して共有する。

    現社会では、中央集権型ではある。GAFAのデータ然り、国の管理方法然り。ここをどう分散型で良いかわからせたり世間が移行していく事でイノベーションが起こる。


    活用法として
    小規模店の薬局の在庫に関して、ブロックチェーン採用により、廃棄がなくなるといった例。
    金融関連などで必要な情報管理として使われる例。
    EVの充電スタンドのブロックチェーン化。ポイントのようなトークンをつける。

  • 著者がブロックチェーンを万能な技術として誇張する事なく、不得意な分野や課題などを織り交ぜながら、フェアな姿勢で紹介している点には好感が持てた。

    ただこの本のタイトルであり、かつこの本を手に取った目的でもある「Why Blockchain」という問いに対して、自分は答えを得る事が出来なかった。

    結局、スゴイとか革新的というのは相対的な評価なのであって、現在ある既存システムの本質を理解していないと、スゴさや革新性は実感できない。

    言い換えればブロックチェーンで解決できる課題に直面した事がないのか、単に気づけてないのか。その時には、自分の中でのこの本の価値がガラッと変わるかもしれない。

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