人は感情によって進化した (ディスカヴァー携書)

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
3.07
  • (6)
  • (18)
  • (26)
  • (19)
  • (3)
本棚登録 : 305
感想 : 33
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799310243

作品紹介・あらすじ

われわれの祖先はジャングルで暮らしていた時代から、環境に適応するためにさまざまな感情を身につけてきた。「恐怖」「怒り」「愛情」「嫉妬」「楽しさ」「幸福」等々、感情から人類進化の秘密が見える。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 進化心理学という言葉をこの本を通じて初めて知った。人間がもつ感情がどのように進化してきたのかを簡潔に説明してくれており、感情についての歴史をざっくりと理解したい人にはおすすめかもしれない。今後テクノロジーがどのように発展していこうとも、人間の感情にいかに大きな影響を与える事ができるかという点で軸はブレていくことはないだろう。人間の感情を理解するという試みは、未来のテクノロジーのあるべき姿を考えていくうえで、有意義であることは間違いないと思う。

  • 現代社会では時として感情がお荷物扱いされる。

    しかし、欲求と感情の根っこは同じ。
    進化的に感情は欲求を叶える手立てとして有効である/あった。
    本書はそんな切り口からの洞察であふれており興味深い。


    --------------------
    怒り、その目的やいかに?
    --------------------
    ニホンザルの群れでの実験。
    餌を撒くと、あちこちでニホンザルが餌を食べ始める。
    そこで実験者は一頭の猿に近づいて、そのサルの
    近くの餌を拾って一緒に餌を食べる真似をする。

    そのとき、実験者が「怒り顔」お面を被っていくと、
    その猿は威嚇と攻撃をしてくる。これは「笑顔」でも同じ。
    けれど「怯え顔」なら威嚇はされても攻撃はされない。
    それどころか餌も拾える。

    実は、怒りは上下関係の確立と確認が目的。
    怒りに対して退いた方が負けで下位となる。

    威嚇してきたサルには、群れの中で上位にいることが大事。
    「カリカリすんなよ、餌は十分にあるから仲良くしようゼ」
    そんなことを「笑顔」で示されたらイヤなわけ。
    威嚇したサルは、実験者が怯えて下位を表明して欲しかった。
    なのに「笑顔」で「怒り」を拒絶したから攻撃してきたわけ。

    群れをなす動物には「怒り」に有効性がある。
    この怒りの感情は、チンパンジーなど他の動物にも見られる。
    生得的で、古くから受け継がれる原始的な心の状態である。


    何か問題が起きたときに「怒る」人っていますよね?
    このとき、問題の解決策だけを話しても「怒り」は消えない。
    むしろ「怒り」は深まる。だって、問題の解決は二の次だから。

    その証拠に、社会的に怯えを示すべく、誰それがいかに悪かったか、
    誰それが間違っていて「怒る人」が正しいかなど、上下関係の確立と
    確認ができる振る舞いをすると「怒り」が穏やかになっていく。
    この上下関係が口先だけではないと示すべく、謝意と位置付けて
    問題解決策の提示と実践がなされると、さらに「怒り」は静まる。


    群れの中で上位だと、自分の分前や権利が確保できる。
    だから、処遇が期待値を下回ると「怒る」で解決を図る。
    「怒り」が通じれば、今すぐに分前や権利が回復できる。
    以降も、自分にとって公正な分前と権利が得られるようになる。


    なぜ、上から目線が不快なのか?
    なぜ、上から目線に「怒り」を感じるのか?
    それが上下関係の確立と確認に相当する行為だから。
    また、相手が自分の上位ではないと思っているから。

    一般人がイチローから野球のアドバイスをされても、
    それは上から目線と感じないし「怒り」も感じない。
    自分がイチローと同格かそれ以上になれると信じていない。
    よって、自分の方ですでに上下関係を認めている。
    要は、失うものがなく、生存と生殖に殆ど影響がないから「怒り」を感じないのである。




    そんな感じで、恐怖、不安、罪悪感、愛情、嫉妬、後悔、
    自己呈示、楽しさ、悲しみ、希望、信奉、猜疑心、道徳、
    無力感などについて洞察されている。

    様々な感情が、原始時代から現代に到るまでそのように機能しているか
    気になる人は...本書を読んだ方が早い。

    ---
    Kindle Unlimitedお試し
    46日目 & 72冊目
    ---

  • 【#今日の読書 No.2】 https://amzn.to/2R3mBgp
    行動の原動力は感情なので、その仕組みを学び直すために、読んでみました。

    こんな目的で、こんな本を読んでるのかぁ~って感じで、参考にしてもらえたら嬉しいです。

    1日2冊以上(年間750冊以上)の読書を目標積み上げ中です。
    お手数ですが、書評はリンク先のレビューをご参照ください。

  • 進化心理学なる人類の進化論と人間の感情表現について書かれている。
    自分では感情を露わにすることへの抵抗感を、心理学的にうまく解説していている。何が大切で正しいかは今一度考えさせられる

  • 図書館

  • どう感情が進化したのか?

    →自己呈示欲求の目的は、自分の得意な技能を表明し集団に貢献すること
    組織に貢献できてるということは、自己呈示が受け入れられ、メンバーとして認められること

  • 石川先生の進化心理学
    心理が遺伝することや生存競争に心理が関わっていることを解説
    自分の心を省みるのにいい
    そして、今 勝ち組のあなたは生物として勝っているかは..

  • 感情。

    そう聞くとマイナスなイメージを持つ方も多いだろう。
    仕事やプライベートでもよく、「感情的になるな」と注意される。
    怒りや悲しみ、不安は無いほうが楽に生きられる。

    ただ、この本では、人がサルと違い、進化できたのは
    感情によるものだとしている。

    「不安とはばくぜんとした恐怖が持続する状態だといえます。狩猟採集時代に人間の想像力が高まり、今ここに直面する事物以外に、創造物に対しても恐怖をいだくようになったのです。『今ここ』のみに生きている、他の動物にはあまり見られない感情なのです。」(P.40)

    人間は「今ここ」だけでなく、過去や未来に対して考え、感情をいだく。
    それは時として、マイナスにも働く。
    しかし、人間は過去から学ぶことができるし、未来に希望を持つこともできる。

    感情を頭ごなしに否定することに異議を申し立てたい。

  • 1年程前に買ったけどなぜか読む気になれなかった本。今回読んでみたらずいぶんあっさりした本だった。
    「感情のコントロールは、意識的に工夫して無意識をなだめるところから始まり、そのテクニックは進化心理学の分析から理由づけられる」ということなんだけど、人間の感情や性質が、何でもかんでも遺伝情報で決まっているような書かれ方で、少々違和感を覚える。あとがきに「進化心理学は遺伝情報による決定論を唱えているわけではない」と書かれていたけど、本文を読むとそのように聞こえるんですけど~(^_^;)って思った。
    学問というよりは雑学っぽいかな。
    ・自分に向ける怒りの個人内効果は元気(行動的)になること。
    ・嫉妬は、自分のところに来た可能性のあった利益が、他のところに回ってしまったときに、それを自分のところに呼び込む感情。狩猟採集時代の小集団では、この感情に大きな意義があった。集団に発生した利益が嫉妬をする人のところに比較的多く配分される結果となったはずだから。
    ・後悔も同じ。損をしたら後悔してなんらかの行動を起こす態度が、生き残りに重要だった。→今はあまり役に立たない感情。
    ・自己実現のプロセス。個人の自己呈示→集団の承認→集団への貢献→集団からの称賛→個人の達成感。
    ところが現在の大きな集団では、このような感情的報酬が必ずしも整っていない。
    ・幸福感を感じる度合い(幸福感度)は、遺伝によってある程度の差があることは明らか。外交的な性格の人は幸福感を感じやすく、神経症的性格の人は感じにくい傾向がある。性格の違いに遺伝が寄与する割合は約5割なので、幸福感度の遺伝寄与も少なくない。
    (出典:「進化と人間行動」東京大学出版会2000、長谷川寿一、長谷川眞理子)

全33件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1959年東京生まれ。明治大学情報コミュニケーション学部教授。東京工業大学理学部応用物理学科(生物物理学)卒。同大学院物理情報工学専攻、企業の研究所や政府系シンクタンクをへて、1997年に明治大学に赴任。人工知能技術を遺伝子情報処理に応用する研究で博士(工学)を取得。専門は認知科学で、生物学と脳科学と心理学の学際領域研究を長年手がけている。著書に、『生きづらさはどこから来るか』(ちくまプリマ―新書)、『人間とはどういう生物か』(ちくま新書)、『ざんねんな職場図鑑』(技術評論社)、『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』(PHP新書)、『だまされ上手が生き残る』(光文社新書)ほか多数。

「2022年 『だからフェイクにだまされる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石川幹人の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×