ルポ教育虐待 毒親と追いつめられる⼦どもたち (ディスカヴァー携書)

  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784799325353

感想・レビュー・書評

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  • 毒親たちによって被害に遭ったこどもたちの実体験が
    筆者の言葉をつうじて赤裸々に書かれており、
    その人たちがどう克服したかということも触れられています。

    上記のような構成のため、
    「毒親はどうして毒親になってしまうのか」
    という毒親にならないための教訓本としても使えますし、
    「自分の親が毒親だった場合、自分はどうすればいいのか」
    という子どもたのための処世術が学べるという、
    どちら側にも参考になります。

    毒親も実は被害者。
    毒親に育てられるとその親も毒親になる可能性が高いからです。
    それを避けるためには、やはり知識武装をした上で子育てに挑むのが
    毒親のカルマを断ち切る唯一の方法だと思いました。

    自分の子どもは伸び伸びと幸せになってもらう。
    彼らの選択を尊重する。絶対に強制しない。
    心に誓います。

  • 毒親や虐待関係の本はいくつか読んできたが、そこには貧困の問題がいつもつきまとっていた。
    たしかに、経済的・精神的に余裕がなければ虐待と結びつきやすくなるというのは、ある意味容易に理解できる。
    ここでいう「教育虐待」とは、「ペアレントクラシー」の下層に属する人たちの話ではなく、「裕福な家庭に起こる虐待」(本書より)なのだ。
    前半で挙げられている個別の事例は、これまでフィクション・ノンフィクション(実際の事件とか)問わず、どこかで見聞きしてきたもので真新しさはそれほどないが、社会構造や教育(学歴)に求められるものが変化してきた結果、「教育虐待」が激化していったという指摘は非常に興味深い。
    社会を変える、というのは気の遠くなるような話だが、まずはひとりひとりの親が「自立」することからしか始められないのだろう。
    本書で繰り返されているように
    「子どもは親の思った通りには育たないが、それなりのものには必ず育つ。親がよほど余計なことをしなければ。」
    の言葉を、戒めのように胸にとどめる。

  • 「教育虐待」
    様々のケースが書かれている。
    これまでの親なら当然してきたことも多い。
    被害に遭っていた子供たちが、語ることがなかったため、これまで明るみに出なかっただけかもしれない。
    子供の人権を守ると言う意識が日本にをかけている。
    なぜなら、親が子供のためにとは、果たして、子供の本当に欲しているものなのかと言う視点をかけているからだ。

  • 借りたもの。
    「教育虐待」を受けた人たちのルポルタージュであり、現代の教育問題のみならず、毒親、機能不全家族、虐待や貧困の世代連鎖などの連綿と受け継がれた負の遺産、それによる「生きづらさ」を映し出していた。
    教育虐待を受けた子供たち(成人していたりするが)は、良い他者(恩師や支援団体、精神科医やカウンセラー)に出会い、自分を取り戻したり親と絶縁?したり……それで「自分の生きる力」を取り戻していった人もいれば、それに届かず自殺した人も。
    紹介されるケースは、家庭環境は様々だが、一概に言えることは
    ●“子供そのもの”を見ていない
    ●親の理想(それは外からの尺度)で常に子供を“測っている”
    様に感じた。
    それに合致しないが故に怒鳴り威圧し、コントロールしようとする。強要する。総じて「教育虐待」する。
    ‘親による子どもの私物化が当然の権利(p.185)‘という考え方も見える。
    この場合の私物化を、親当人は自覚していない。

    「体罰や虐待は貧困家庭に起り得る」というステレオタイプなイメージはもはや否定されているが、再確認する。裕福な家庭の方が厄介だ、とも。
    エイミー・チュア『タイガー・マザー』( https://booklog.jp/item/1/4255005818 )の過干渉・詰込み型子育て論に警鐘を鳴らす。その仕方で子供が上手くいくか否かは、子供の器量によって変わると著者は言う。(ではその子供の器量はどうやって培うのか?は言及されていない)

    こうした教育虐待がなぜ起こるのか?
    そのルーツは明治期の富国強兵からも見いだすことができる。表面だけ欧米を倣った謎の精神論、スポコンは戦後も引き継がれ、高度経済成長期では紋切型の人材を育成することに重きを置かれ、分かりやすい指標である点数に重点が置かれていく。
    すでに欧米ではスポコンの非生産性や体罰の否定が浸透しているのに……
    学びに関しては、「学歴」がフェアな通行手形だったはずが、「高学歴を得るためにするもの」になっていく。

    昨今の「正解のない時代」故、求められる人材が変わったためという主張に、著者は疑問を投げかける。そもそも「正解がある」ことが前提であることがおかしい、と。正解はあるのではなく「導き出される」ものなのだから。
    巷に教育本が溢れていることに、「正解主義」の発想がある。先の見えない不安もあるだろうが、その原因として、教育現場にビジネス原理が持ち込まれているためと指摘する。
    予言できる成果を求める社会風土が醸造していたことが一因であると。
    私見だが、60~90年代までのスポコンや受験戦争という言葉が浸透した時代と一致するのかもしれない。
    「人材育成」と「教育」は似て非なるもの(p.162)は心に刺さる。

    一番大きな原因は、学歴、学問を学ぶことの姿勢ではなく、「家族の問題」が大きいと読んでいて思う。
    「教育虐待」を受け大人になった子供たちが、あの時言葉にできなかったことを言語化する。すると親は自己弁護をする。「自分はそんなつもりは無かった。本当は~したかった!」と。この時点で子供(ひいては親自身)と向き合っていない。

    色んなケースの親の心象もちょっと描写しているが、往々にして言えるのが、2~3世代越しの「家族の問題」。劣等コンプレックスに親の更に親との関係、夫婦関係がうまくいっていないこと(例えば妻なら夫の単身赴任など)が起因していることが、仄めかされている。

  • 虐待の中でも特に教育虐待は「我が子のため」という気持ちが強い上でなされることから、かえって問題が複雑化してしまうと感じた。

    文中に幾つかの塾講師や教育機関の側から見た内容があるが、虐待する親、されている子への対応など、今の自分にとって参考になることも多くあった。
    (教室内で荒れる子に対しては客観的に指摘する。塾の自習室のほうがかえって落ち着いて勉強できる子供が増えている、など)

    結局のところ、教育虐待する親自身が、自分の学歴にコンプレックスを持っていたり、逆に高学歴なためにそれ以外の道を歩ませることが怖いのだろう。

    自分自身の我が子に対する接し方や、仕事柄生徒保護者への対応がある場合、それらについて再考することに役立つ本。

  • エディケーショナル マルトリートメント、教育上不適切な扱い、という点に集約していく過程がとても参考になりました。

    本書の内容について、細かい部分では疑問もありますが、概ね同意できる内容でした。

    「教育虐待」という言葉では取りこぼしてしまうものや、そのように振る舞ってしまう保護者の抱えているものにも目を向けることなど、大切な視点が数多く提示されていて、子どもを守るためにも「保護者」を孤立させないこともまた大切であると感じました。

  • 「母という呪縛 娘という牢獄」を読んだあとに手に取ってみた。「教育虐待」とはなんぞやと思い定義のために読んだが、大抵は海の向こうの話のような、ほとんど自分に関係のない話として受け取った。ただ、時折自分の幼少期と似たような体験談が出てくるとドキッとした。あれは教育虐待だったのか…。と自分の中の記憶がザワザワした。

  • 教育虐待と言う言葉を初めて知りました。

  • こうなる結論

  • ルポ教育虐待 毒親と追いつめられる子どもたち。おおたとしまさ先生の著書。教育虐待は肉体的な虐待と違って目に見えにくいけれど立派な虐待で重大な虐待。教育虐待は子どもたちの心を深く傷つける先進的な虐待。子供のため子供のためと言い聞かせた教育虐待は親の傲慢で自信過剰な思い込みによるもの。過干渉親ほど教育虐待をする。教育虐待をしてしまいそうな過干渉親の自覚が少しでもある人は少し立ち止まって考えること。

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著者プロフィール

おおたとしまさ:教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。リクルートで雑誌編集に携わり、2005年に独立後、数々の育児・教育誌のデスク・監修・企画・編集を務め、現在は教育に関する書籍執筆および新聞・雑誌・webメディアへの寄稿を行う。テレビ・ラジオなどへの出演や講演も多数。心理カウンセラーとしての活動経験、中高の教員免許、私立小学校での教員経験もある。著書は『ルポ名門校』(ちくま新書)、『勇者たちの中学受験』(大和書房)、『不登校でも学べる』(集英社新書)など80冊以上。オフィシャルサイト:http://toshimasaota.jp


「2024年 『学校に染まるな!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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