マタニティハラスメント (宝島社新書)

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800217356

作品紹介・あらすじ

出産後の職場復帰を疎ましく思う同僚、上司!妊娠・育児でバッシングされる時短勤務社員、男性の無理解と女性同士の嫉妬と不満が渦巻く職場、退職勧奨が横行する企業風土etc.コンプライアンスタブーの実態。

感想・レビュー・書評

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  •  仕事の資料として読んだものだが、いろいろ考えさせられた。

     いちばん「目からウロコ」だったのは、マタハラをする主体には女性もけっこう多いということ。しかも、子育て経験をもつ女性上司が、むしろ子育て中の女性に厳しく当たることも少なくないという。

    《「妊娠・出産の経験者から『私の時代はもっと大変だったのにそれを乗り越えてきたのよ』『私なんか育休1年で復帰して働いた』などと言われた人もいますし、同じ妊娠・出産の経験者でも見方は違います。
     とくに上の役員などの幹部層の女性の中にはきつい人もいます。なぜなら彼女たちは勝ち抜いてきた人たちだからすごく強い」》

     私には、マタハラといえば「女は子どもを産んだら家庭に引っ込んでろ」という古いタイプのオッサンがするものだというイメージがあった。また、「女の敵は女」となるにしても、「子どもを持たなかった女性対子育て中の女性」という対立図式になるのだと思い込んでいた(もちろんそういう面もあるのだが)。
     世の中というのは、それほど単純・図式的にはできていないのだ。

     本書は、たくさんの資料をうまくまとめているし、取材も丹念な上出来の概説書。終盤になるにつれ、内容がマタハラから離れてヘンに広がってしまう点だけが玉にキズ。

     安倍政権が成長戦略の一つとして打ち出した「3年育休」が、現場の働く人々(女性含め)からはまったく歓迎されておらず、「3年も育休をとったら職場復帰できなくなる」と不評だという話も興味深い。

  • 女性が働きづらい社会、ニッポン。その現象、原因を取材・調査統計から分析。最後の方で紹介されている企業の取り組みは参考になる。優秀な人を活用して競争力を、と考えれば性差を理由に入り口で差別する事が間違っているのは自明。しかしその障壁は男性の偏見に限らす同性の攻撃があるのが現実で本書の指摘は生々しい。ただし本書を読んで一貫して違和感を感じたのは、終身雇用のもとで女性が長く働ける状態を是としている感じが伝わってくること。一度辞めても違う所で働く機会を見つけられる、というのが女性に限らず日本に必要な変化。たまたま正社員という地位を得た人を過剰に保護する制度を解体し雇用のて流動性を高めれば多くの雇用問題は解決するはず。そこに手を付けずに現象に対するアプローチをしていては痛みばかりが増えるだけだろう。

  • 事例も豊富だし、救いのない対立構造が書かれているのも価値ある本だと思うが・・・父親の姿が見えないことが最後まで不満だった。ちらっと見えることはあっても(例えば、独身の女性上司よりは、家族持ちの男性上司の方が子育ての現実が理解しやすいなど)、あくまでも母親/女性の問題という枠組みからは出ていけない息苦しさを感じてしまった。ある意味、これが現実なんだろうな。父母フルタイムといっても、実際には父親は残業ありで働き、母親は時短で働くことが多いし、それは職場から見れば父親(男性)により責任ある仕事をまわし、母親(女性)のサポートをあてにする、という構造を変えないのだろうなと。

  • 女性の社会進出が提唱されている中で、良い視点を提案している本著。

    2009年、育児・介護制度改正により企業は法的な義務を負うことになりましたが、その実態は形骸化しています。
    人材不足の中で仕事を同僚や上司に任せることで負担になるー子供の急変時に遅刻・早退せざるをえなくなる状況。周囲にとっては仕事を中途半端にして、給料だけはもらっているため白い目で見られるようになります。
    その結果、自主退職or自己都合退職(失業保険が出ないように企業側が仕向ける)になることが少なくないです。

    本著では、女性社員だけではなく企業にも大きな損失を与えると指摘しています。その上で、職場間のコミュニケーション不足の解消・個別面談等を行う。お互いが制度を利用する際のメリット/デメリットを認識し、擦り合わせを行うことの大切さを説いています。
    具体例として記載されていたのが大企業ばかりでしたので、こういった制度の充実している点は学生の大手志向の一つだと実感しました。 

    特集-対立する意見を載せる記事
    相手への誹謗中傷があるのに違和感を持ちます。
    対立するだけでは何も生まれません。

    何が問題でどのような違いがあるのか指摘することは大切ですが、相手を非難し、蔑むような言動をしても何も解決は出来ないのですから。
    政府や各省庁は当事者の声を反映した制度・政策を提言してほしいと考えています。

  • ジャーナリストの視点を強く感じた。取材内容を抑えめに描きながら、最後の方で3年育休の方向性に疑問を呈する。法律違反や業務量の不適切さだけでなく、職場のコミュニケーション不足が大きな原因の一つという作者の考えには非常に共感できた。

  •  「お互い」の状況や気持ちを正しく理解しようと思いを巡らす想像力の欠如。また、自身の経験に基づく価値観の押しつけ、さらには、嫉妬。
     これらを解消するように努めていかなければ、制度だけ作ってみても、当然ながら運用にあたってうまくいかない。

  • 妊娠、育児中の働く女性に嫌がらせをするマタハラ。連合の調査では4人に1人がその被害者。会社側からのイジメのほか、本来であれば味方になってくれてもいい筈の女性からのものが半数近くを占めているという恐るべき実態がある。子供を産みたくても産めない実情、増加の一途を辿るマタハラの陰湿化、マタハラ対策の前に立ちはだかる現実の壁、本書では現代の労働環境が惹起する課題を掘り下げる。読めば読むほど殺伐たる現状に鳥肌も立ってくるが、終章にはマタハラを乗り越えた好例も掲載されており、処方箋も示されている。生産年齢人口が急速に減少している日本。女性の能力の活用は喫緊の課題と思うのだが。

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