神の値段 (宝島社文庫)

著者 :
  • 宝島社
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感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800264893

感想・レビュー・書評

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  • アートに関して無知なので新しい世界を少し覗けた気分になった。
    お金って不思議な存在だなと思った。

  • 美術の世界の裏側がよくわかる作品。アートとは何か、価値とは何かを考えさせられる。

    犯人がわかるようでわからない‼︎でもそれが全てが明らかになった瞬間の爽快感を増幅させてくれる‼︎

  • 最後の怒涛の展開でえっとなった。
    美術アートの世界、無名という謎の芸術家、殺人事件、、、
    これらが絡み合った作品は、初めてな感覚を覚えたミステリーだった。
    内容も新しい世界を見れたようで楽しい。

  • 芸術の世界が事細かく描写され、芸術の仕事ぶりが伝わってくる作品。ミステリーの謎解きとしてはとての単純でが、そこに至るまでの仕事の詳細や登場人物らの芸術への価値観、愛、思いがステキな作品

  • 犯人がどうこうというより、現代アートの世界への興味がかきたてられた。アートに詳しくなくても、読後には深い何かが分かったような気になれる。ちょうど同じ頃にたまたま現代美術館に行ったが、それまでいまいちよくわからなかった現代アートの見方が少し変わったと思う。

  • 普通に面白かった。

  • 最後ちょっと難しかった。アートをテーマにした作品だいすき

  • 『アートは理解するものではなく、信じるものだと思います』

    『神の値段』の中にこんな言葉が出てきます。その言葉が出てくる場面を読んだとき、これまで生きてきた中で、なかなか理解しがたかったアートとそれを求める人たちの心情を、少し身近に感じられました。

    この言葉は初めて画廊で作品を買おうとする男性と、その作品を扱う画廊のオーナーの会話の場面で出てきます。
    感銘を受けた川田無名というアーチストの作品とはいえ、予算の10倍近くするものを買うかどうか迷う男性の客。その客に対し直感を信じるべきと促すオーナー。しかしこの作品を買った後に、もっと素晴らしいものに出会ったらと考えると……、と客は話して、なかなか決断しきれません。

    そこでオーナーは、自分も作品を買うときは同じ気持ちになるが、と前置きした上で、無名の素晴らしさを語ります。
    無名の作品を見る度に線や波のうねりを違うように感じ、そのたびに作品が好きになる。そこから作品との真の対話が始まる。そのような作品を自宅でいつでも目にすることができるなんて、究極の贅沢だと思いませんか、と。

    感情と本能の赴くままに読み進めてしまうような本やマンガ。あるいはこんなにも時間が経っていたのかと、見終えた後に時計を確認し呆然とする映像作品。そんな作品に出会うことがたまにあります。

    そうした作品に触れているとき、作品を理解しよう、なんて感情はありません。ただ感情や本能のままにその作品を読んだり観たりしています。そしてそうした体験にまた出会えることを信じ、本やマンガ、映画やアニメ全体が好きになり、そして好きな作家や監督、そして何度も読みたい、観たい作品が自分の中で出来てくるのだと思います。

    もちろん値段なんかを考えるとスケールは全然違うし、第三者から見たらこの喩えはあんまりピンとこないのかもしれないけれど、それでも自分はアートに魅せられた登場人物たちに共感を覚えました。

    そして芸術なんてまったく分からないのに、たまに美術館に行ったりするのも、すごいな、上手いな、というところを越えた、そういう体験に出会えるかもしれないゆえなのかも、と思ったりもします。

    マスコミどころか関係者もほとんどが姿も顔も知らない、世界的なアーティストの川田無名。そんな無名の正体を知る画廊経営者であり、無名とタッグを組み作品を売り込んできた、ギャラリー経営者の唯子が殺害される。
    そして唯子のアシスタントの佐和子は、事件に迫る一方でやり手の経営者だった唯子の仕事を引き継ぐことになります。

    正直言うと、ミステリとしての完成度は決して高くないと思います。アート世界ならではの犯人の迫り方だったり、芸術家とアトリエの職人たちの関係性の話は面白かったものの、
    展開はゆっくりで、殺人事件が途中で脇に置かれた展開が続くように感じ、結末でどどっと帳尻合わせのように謎解きが始まるのは、ミステリとしてはちょっと寂しい感じがします。

    ただ、アートに関わる人々を描いた作品としては面白い。アートと相成れないように見えるマネーゲームのからくりであったり、現代アートの創作の仕組みや、アーチストのブランドを作り上げるための、売り方の工夫であったりと、知らない世界や知識を作品に織り込んでいく書き方が上手かったと思います。

    姿を現さない無名の個性を、伝聞や彼の描いた作品、彼の文章から浮かび上がらせていくのも、想像力をかき立てられるようで面白く、そして佐和子が苦労、奮闘しながらも画廊の仕事をなんとか成立させようとする描写も、一種のお仕事小説のようでこれも面白い。

    終盤で佐和子は、アートフェアとオークションに参加するため香港へ行きます。しかしフェアに向けてのブースの設営はトラブル続きで、佐和子は弱気になりながらも、なんとか無名の作品を配置し終えます。そして改めてブースを眺めると……

    この場面が最もこの小説の中で好きでした。ある瞬間に突然に作品の見え方が変わり、そして佐和子の胸に押し寄せてくる感情と思い、そして決意。
    無名の作品の描写が素晴らしかったので、佐和子がそれに感情を揺り動かされるのも、アートなんてとんと分からない自分でも、なんとなく納得してしまいます。

    そして、無名の作品がオークションにかけられる場面も面白かった。オークションに出版される作品の描写が丁寧でリアルなので、それを競り落とそうとするオークション会場の興奮も想像しやすい。
    そして徐々に値段がつり上がり、オークションの会場中が不気味な静けさに包まれていく。そんな様子も自然と浮かんできました。

    ミステリとしては物足りなさはあるにはあったのですが、それを上回る著者の一色さゆりさんのアートの知識、そして愛や情熱、思いが感じられ、それが自分の中にも同調し大きな波を起こしたような、そんな作品でした。

    第14回このミステリーがすごい!大賞 〈大賞〉

  • たとえ、一人の人間が作り出した世界だったとしても、記憶の奥深くに刻まれている万物誕生のエネルギー、つまりすべての人の抱える欲望や憧憬に応える、普遍的なパワーがあるのだ。


    ーーーーー
    •美術の知識が豊富で、原田マハさんのような作家になる気がする。
    •肝心の謎解きのところが脆弱。ただ、全体としてとてもまとまりがいい。
    次回作も期待できそう。 

  • ミステリーというには謎解きの要素が少なく、サスペンスにしてもスリルが少ないため、その中間? そえゆえちょっと中途半端な感が否めません。
    無名は結局その姿を現さないし、1959年の作品の行方がメインかといえばそうでもない、唯子を殺した犯人の捜索に血道を上げるわけでもなく…。物語のラストで唯子殺しの犯人がわかる場面でそれらが一つにつながるわけですが、そのタネあかしのシーンもちょっと急ごしらえな印象が拭えません。読んでいてもなんだか唐突な感じなんですよね。「あれっ、なんだか急にそんな展開なの?」 って思ってしまいました。
    とはいえ、現代美術のマーケットに関することや、オークションの雰囲気を味わうことができる点については一見の価値があるかもしれません。ミステリー的な部分については唯子殺しの犯人が佐伯である点、読めばわかってしまう、、、かな。

  • ミステリとしておもしろいのかどうかはわからないけど、お仕事小説として圧倒的に魅力がある。アートとは何か、アートビジネスってなんなのか、なんで一枚の絵に信じられないくらいの値段がつくのか、裏側を見た気がする。

  • ミステリーとしては犯人もある程度予想がつきやすく、動機もありきたりなもの。トリックもそこまで複雑ではない。この作品の魅力は現代アートマーケットのリアルに迫る点に尽きる。「値段」とは本来価格をつけられないものの価値を表すための比喩、という点が本質を突いている。無名の神やら宗教やらという考え方はよく理解できなかったが。

  •  気持ちの良い饒舌と現実と理想と欲望。

  • まあまあ

  • 現代アートがテーマのミステリ

    たったひとりの人間(ギャラリスト)しかその正体を知らない謎に包まれた
    現代芸術家
    そのギャラリストの女性が殺されてしまった。

    芸術家の彼は本当に存在するのか
    彼の傑作といわれる作品の行方は・・

    アートにあまりにも無知なせいか、「ほうほう」と感心するだけで終わってしまった(笑)
    それに「墨を使った芸術」を「インクアート」というのに
    どうにも馴染めないし・・・

  • 絵画のギャラリーオーナーが殺害され高価な絵画の作者は?と殺人犯は誰だのお話。
    半分程読んであまりにテンポが遅いので挫折しかけたが何とか読了。

  • 現代アート界が舞台のミステリー。
    墨のみで抽象画を描く画家という無名の人物背景および作品世界の作り込みが非常に凝っており、美術には造詣がない自分は充分に感心するレベルでした。
    ただ、そこに重きを置き過ぎて肝心の事件については真相も謎解きのプロセスも不完全燃焼。
    結果として、丁寧に描かれているもののどこか物足りない印象が残りました。
    可能性を感じる作家なので、もう少し追いかけてみたいです。

  •  ギャラリー仕事の雰囲気、海外のアートマーケットの様子を描写。
     文章としては少し難しいのかもしれない。
     ”ミステリー”要素は薄いと思われる。「神」を演出する登場人物たちの徹底した仕事は賞賛する。

  • ミステリーというより美術関連職の描写がものすごく興味深く面白い。しかし真相に意外性はないのでミステリーとしては★2なんだが職業ものとして読むと★5です。

    作者名と表紙の印象からライトノベルっぽく見えてしまうのが惜しい。

  • うーん。好みではなかった。

  • ミステリーということでもう少しワクワク感だとか手に汗握る緊張感だとかが欲しかったのだけど、美術に特化した作品だったためか地味めであり、最後、犯人が暴かれていっても特に驚きもなかった。
    唯子以外のキャラもあまり個性もなく魅力を感じることができず残念。

  • 2017.9.19読了

  • 美術の世界の事を垣間見れる本。
    信じられないぐらい大きなお金が動く、自分には縁のない世界だけど、アート作品を収集する人たちの気持ちが少し知れたような気がします。
    ミステリーとしては、好みでなかったのか、ドキドキもハラハラもなくいまいちでした。

  • 誰が犯人なんだろうという疑問と、普段関わることのない業界に対する好奇心が合わさって最後まで目が離せなかった。
    知的好奇心がくすぐられる感じがよかった。

  • 引き込まれる筆力で、ぐいぐいその世界にどっぷり浸かりました。

    美術は全くわからなく、なんとなく好きな絵、くらいならみに行ったり、なんかすごいなーいいなーかっこいいなー可愛いなーと思ってみてたり、飾りたいとも思ったことあるけど、絵画にたいして何百億とお金をかけるお金持ちやらコレクターがいて、その絵画一つ生きるも殺すも作家よりも周りで支える人間たちがいてこそ!

    と、いう人間ドラマにも感激したし、実際にいた作家のストーリーをなぞって描いた小説らしく、事実だということにもかなりの驚き。

    世の中にはそんな人たちが存在すること自体いまの今までしらなかったよ。。。

    一色さゆり今後の作品も読み続けたい!!!!

  • ミステリー小説といつことでやはり人が死ぬ。結果は最後の数ページで一気に解決。
    アート作品の取引を崇高な芸術活動として特権化するんではなく、他の企業と同じように商品として海外に売り出すための戦略を学んだ。というのが印象的。
    価格は需給のバランスに基づいた客観的ルールから設定される。値段は本来価格のつけられないものの価値を表すためのもの。常に変動する。

  • 文章も荒削りの感
    登場人物も魅力に欠ける
    ミステリーにしなくても良かったのではと思うけど
    「このミステリーがすごい!」に
    応募したのだから仕方ない・・・

    なんて辛口コメントだけど
    それでも余りある美術への知識と情熱には感動する!

    原田マハとは違う切り口で
    アート系小説を書いてくれることを熱望する。

  • 2017.05.04

  • そういう筋書きだからしょうがないけど、アーティストがいなかったら面白かったかも。

  • 美術を扱ったミステリーが、このように成立することに驚いた。文章でアートを説明するのは難しいし、自分でも無名の作品を理解したとは思えない。それでも、美術の世界が具体的にわかりやすく描かれているので、面白く読むことができた。次回作も佐和子は登場するのだろうか。読んでみたい。

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著者プロフィール

1988年、京都府生まれ。東京藝術大学美術学部芸術学科卒。香港中文大学大学院修了。2015年、『神の値段』で第14回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞して作家デビューを果たす。主な著書に『ピカソになれない私たち』、『コンサバター 大英博物館の天才修復士』からつづく「コンサバター」シリーズ、『飛石を渡れば』など。近著に『カンヴァスの恋人たち』がある。

「2023年 『光をえがく人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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