猫のお告げは樹の下で

著者 :
  • 宝島社
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本棚登録 : 1883
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  • / ISBN・EAN: 9784800287908

感想・レビュー・書評

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  • あなたの前にはらりと落ちてきた一枚の葉っぱ。そんな葉っぱを手にしたあなたは、そこに『マンナカ』というカタカナ四文字が書かれているのを目にしました。
    さて、あなたはどうするでしょうか?

    う〜ん、どうしようかな、どうしたらいいかなあ…なんて考えたりしませんよね。だって、『マンナカ』ですよ。全くもって意味不明です。

    では、そこに書いてある文字が『ポイント』だったらどうでしょう?えっ、ポイントがもらえるの、手続き方法は?なんて考える人もいるかもしれませんが、そもそも樹から落ちてきた、ただの葉っぱですからね。どこまでいっても意味不明です。じゃあ、『スペース』と書いてあったらどうでしょうって、これ以上書くと、もう読むのやめるぞ!とお叱りを受けそうなのでここまでにします。失礼いたしました。

    世の中には”格言”や”ことわざ”、”偉人の名言”など、人の心を動かす言葉が山のようにあります。誰もが、そう、あなただって何かしら大切にしているそんな言葉があるはずです。人は言葉を手にした時から歴史を作ってきました。それは他者とのコミニケーションの道具となっただけでなく、自分自身を鼓舞する道具としても機能してきました。しかし、そんな言葉は同じ言葉であってもその捉え方は人それぞれです。ある言葉に心を動かされたからといってそれは万人の心を動かすわけではありません。人は自分の人生の中で大切にするものが人それぞれに異なるからです。

    ここで少し話を戻します。では、先にあげたような『マンナカ』『ポイント』『スペース』という言葉がそんな人の心を動かす”起点”になることはないのでしょうか?確かにこのレビューを読んでいるあなたの心には何の変化も起きなかったのかもしれません。でも、それが万人にとって同じだと言い切れるものでしょうか?

    さて、ここに、そんなカタカナ四文字によって大きな気づきを得ていく七人の主人公の物語があります。『わたしたちは生きているかぎり、他者からの邪気をキャッチしたり、ネガティブな感情を抱えてしまう』生き物でもあります。そんな感情の中で動けなくなってしまう、そんなこともあると思います。しかし、七人の主人公たちは、それぞれが手にしたカタカナ四文字にヒントを見出していきます。そう、この作品はカタカナ四文字が”起点”を作る物語。カタカナ四文字に気づきの機会を得る主人公の物語。そして、カタカナ四文字が主人公の人生を前に進めていくのを見る物語です。

    『ぼくにとって最高に美しいものが誰かにとっては気味の悪いもので、だからぼくは何かを好きだって口にするのをやめた』と『決めたら何を話せばいいのかわからなくなって』、『しゃべんない根暗なやつ』とクラスで認識されるようになってしまったと考えるのは主人公の深見和也。『七月という中途半端な時期に転校してき』て、四十人のクラスメイトから『注目を一身に浴びた』和也。しかし、『クラスの誰も話しかけてこなかった』ため、男子四人が集まっているところへ『あの、ぼくもいいかな』と思い切って声をかけます。『どうする?どうする?』と、『仲間同士の間で』視線が泳ぐのを感じる和也に、『おまえんちに行くならいいよ』と、『一番体の大きい子が』返事をしました。『お母さんがいないときに部屋に人を上げないよう』約束していたものの『黙っていればわからない』と考え、四人を家に迎えた和也。返事をした『体ががっしりしてい』る岡崎を先頭に部屋に入った彼らは『居間で好き好きに座ったりテレビをつけたり』しました。そして『あれやろうぜ』と和也の知らないカードゲームを四人がけのテーブルで始める彼らの横で『存在を消されたように立って』いるだけの和也。『ゲームに区切りがつくと』、『「狭い」とか「古い」とか「汚い」とか』言いながら家の中を歩き回る彼らは、和也の部屋にも入ります。コミック棚を見て『たいしたもん、ねえな』とつぶやく岡崎は『あれ、なに?』と『窓辺の棚に置いたふたつの瓶』を見つけます。『岡崎くんがぼくの宝物に興味を持ってくれた』と思うものの『こいつ、カビなんか集めてんの』と言い『おまえ、深見じゃなくてフカビだな』とあだ名をつけられてしまいました。『カビじゃない。それは苔だよ』と思うものの言い出せない和也は、自分が何よりも大切にしてきたものをバカにされて黙ってしまいます。それ以降、『よう、フカビ』と学校で呼ばれるようになった和也。転校してきていつまでもクラスに慣れられない生徒と判断した担任によって、岡崎が和也の面倒を見る担当になります。そして『地獄だ』という日々を送る和也。『意地悪されてるわけじゃない。なのに、なんでこんなにイヤな気持ちになるんだろう』と辛い日々を送る和也。そんなある日、見学に行った公文教室で、偶然にも岡崎と遭遇した和也は、逃げるように細い道に入りました。道の先にある神社へと入った和也は『学校に行くのが、つらくなくなりますように』と手を合わせます。そんなところに一匹の猫が現れました。ベンチに座って『学校に行くのが、つらいんだ』と猫に話しかける和也。そうすると、猫は『突然ダッシュし始め』、樹の周りを『竜巻みたいにぐるぐる何周も』すると『ぴたっと止まり』、『樹の幹に肉球を当て』ます。そうすると一枚の葉っぱが『ひらひらっ』と落ちてきました。そこに『マンナカ』というカタカナ四文字が書かれているのを目にした和也。気づくといなくなっていた猫の代わりにおじさんが現れます。そんなおじさんに葉っぱを差し出すと、猫のことを『ミクジと呼んでいます。その言葉はあなたへのお告げですから、どうぞ大切に』と言われた和也。そして『マンナカ』という言葉の意味を考えるその先に、本当の『世界の、真ん中』とは何かを知ることになる和也の物語が描かれていきます…というこの短編。『この学校にいじめはありませんって牧村先生は言ったけど、こういうのって、いじめじゃないのかな』というこの感覚。いじめを描いた作品は多々ありますが、そうじゃない、不登校の原因は本当はここにあるのではないかと私がずっと思っていたこの感覚。400数十冊の小説を読んできてこの感覚をこんなに的確に描いてくれた作品は初めてです。よく描いてくださった!青山さんありがとうございます!そう、この描かれる感覚、物語世界のあまりの深さに涙が止まらなくなってしまったこの短編、傑作中の傑作の中の傑作!だと思いました。

    カタカナ四文字のタイトルが付けられた七つの短編が連作短編の形式を取るこの作品。それぞれの短編ごとに主人公となる人物は年齢も職業も境遇も大きく異なります。そんな七つの短編のタイトルについて、主人公の位置付けとともに整理してみたいと思います。

    〈ニシムキ〉『二十一歳にして初めての、失恋』を経験した美容師が主人公。『佐久間さんを忘れられますように』と願います。
    〈チケット〉『思春期の娘』との関わり方がわからない父親が主人公。『さつきとうまいこと、やれますように』と願います。
    〈ポイント〉『就職活動は僕にとって初めて経験する「選択の関門」』と悩む大学生が主人公。『どこでもいいから、早く就職が決まりますように』と願います。
    〈タネマキ〉『今はただの、厄介者のジジイ』と自らのことを思い、口煩い婿嫁と暮らす68歳の男性が主人公。『このまま何事も起こさず、静かに残りの人生を終わらせてくれないか』と願います。
    〈マンナカ〉『しゃべんない根暗なやつ』と思われ居場所を失った転校生が主人公。『学校に行くのが、つらくなくなりますように』と願います。
    〈スペース〉『漫画家の夢』を果たせず引っ込み思案な今を生きる一児の母が主人公。『ちゃんと夢をあきらめられますように』と願います。
    〈タマタマ〉売れっ子となった『占い師の彗星ジュリア』が主人公。『私はいつも、神社で何も願わない』と思いつつ、今の人生について考えます。

    という七つの短編は上記した通りバラエティ豊かな物語がそれぞれに展開していきます。そんな彼らの願い事に突飛なものはありません。主人公たちは、私たちの日常のどこにでもいるような人物たちばかりです。そんな人物たちが手を合わせて祈る願い事も高望みなどではなく、今の生活の中での悩み事をそのままに言葉にしたものです。それが、この作品の一番のポイントです。このことによって、まるでファンタジーであるかのようにも描かれるお告げをする猫の存在が、ただのトッピングとなり、作品自体は七つの奥深い人間ドラマとして描かれていきます。

    青山美智子さんの作品はある意味での一貫性があります。「木曜日にはココアを」ではマーブル・カフェのマスターが、「ただいま神様当番」では主人公の元に現れる神様が、そして「お探しものは図書室まで」では司書の小町さんが、人生の中で難題の前に歩みを止めてしまった主人公たちに、前に進むための”きっかけ”、”起点”を与えていく物語が描かれていました。あなたは、何の悩みもなく毎日を生きていると胸を張って言えるでしょうか?毎日、楽しいことばかり、未来もただただ輝くばかり!そんな人生を送れている人がいるとしたらとても羨ましいと思います。悩みに押しつぶされそうになっている今の自分には、あれはどうしたらいいのだろう、これはどうしよう、そんな決断をしなければならない事ごとが日々積み上がっていくばかりです。この作品に登場した主人公たちもそれぞれに悩みを抱えていました。人の悩みとは他人からは決して見えないものです。例えそんな悩みを聞いたとしても、その本人の本当の苦しみを理解することなどできません。何故なら、悩みとは、その人その人がそれまで生きてきて、その人の中で一本出来上がったその人ならではの感情と切り離せないものだからです。そんな程度のことで思い悩むなんて…と他人が悩んでいるのを見て思う感情があるとしたら、それはその人のことを全く理解できていないと思います。逆に言えば、その人その人の悩みは決してその人以外の誰にも解決などできないこととも言えます。では、どうすれば良いのでしょうか?

    そんな人の悩みについて、青山さんがそれぞれの作品で提示するのは、”きっかけ”、”起点”というものが如何に大切かという視点です。この作品では、それが神社に現れる猫が落とす葉っぱに書かれたカタカナ四文字にありました。一見ナゾナゾとも言えるようなその四文字は、本人以外は見ることはできません。まさしくファンタジー世界とも言えるでしょう。しかし、上記した通り、私はこれはただのトッピングだと感じました。大切なのはそのトッピングを”きっかけ”、”起点”として主人公たちが何を考え、何に気づいていくか、そして、その先に展開する物語、これこそがこの作品を読む醍醐味です。特にこの作品では〈マンナカ〉など人の感情の非常に深いところを突いた短編が多数存在し、読後に私の中に残ったのはファンタジーなどではない深い人間ドラマの読後感でした。

    『家族って、電車に乗り合わせたようなもんだ』と気づく、〈チケット〉の主人公・達彦。
    『僕にとって、仕事って?就職って?僕は何がしたい?何ができる?』と気づく、〈ポイント〉の主人公・慎。
    『戦わなくていい。誰とも、自分とも。不要だと思うような感情が生まれてしまったときは、そのつどさっと祓えばいい』と気づく、〈スペース〉の主人公・千咲。

    主人公たちは、自分にしか解決することのできないそれぞれの悩みの中で立ち止まり、もがき苦しんでいました。そんな主人公たちが前に進む”きっかけ”、”起点”を見つけていく様を描いたのがこの作品。そんな作品からは、同じように何かに苦しみ身動きが取れなくなってしまっている私たちが、再び顔を上げ前に進んでいくためのヒントをいただいたように感じました。

    『”運がいい”って言ってしまうと、努力していないみたいに聞こえてしまいますが、そうじゃなくて、運って足が速いから、気づかないだけだと思うんです』と語る青山美智子さん。そんな青山さんは『みんな”好運”を持っているのに、もったいない』ともおっしゃいます。私たちは、”運が悪い”、”ついていない”という言葉をよく発しがちです。そんな時期というものも当然にあり、悩みの中に悶え苦しむ時期があるのも仕方がない、それも人生なのかもしれません。しかし、誰にだって、そんな状況を脱すること、つまり”好運”を掴みたいと思っているはずです。青山さんがおっしゃる通り、私たちはそれを手にすることができていないだけなのだと思います。そんな私たちにとって大切なことは、上へ、前へと進むための”きっかけ”、”起点”を見つけることです。この作品の主人公たちは、たまたま手にしたカタカナ四文字の中にそれを見つけることができました。

    そう、たったそれだけのことにもヒントはある。私たちの毎日はヒントに巡り会う機会に満ち溢れている。そして、ヒントを得て、前へ、一歩ずつ前へ…。

    青山美智子さん、こんなにも深い感動をありがとうございました!
    さてさては、あなたが作品を発表される限りどこまでもついていきます!!

    • さてさてさん
      mariさん、こんにちは。
      こちらこそいつもありがとうございます!
      青山美智子さんの作品は、”きっかけ”・”起点”にこだわられた作品が多...
      mariさん、こんにちは。
      こちらこそいつもありがとうございます!
      青山美智子さんの作品は、”きっかけ”・”起点”にこだわられた作品が多いです。この作品はそんな中でも強く印象に残りました。レビューにも書きましたが、〈マンナカ〉という短編で描かれた不登校へと感情が向いてしまう瞬間の原因の描写、その感覚の描写は、よく書いてくれた!と思う人の感情の機微を見る物語でした。是非おすすめしたいと思います。mariさんの読書の”きっかけ”・”起点”となることができて嬉しいです。
      こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします!
      2021/09/18
  • 小さな神社に現れる猫。
    その名は“ミクジ”
    ミクジに出会った悩める参拝者たちは、タラヨウの葉に書かれた“お告げ”を受け取る…
    そんな7つのストーリーは、どれも優しい。
    そう、じんわりと、心の隅々まで行き渡る…

    青山美智子さんの作品は初めて。
    やっと、この優しく温かい世界を知ることができ、感動しています。
    7つの中で、どれが一番って、決められない。
    全部全部、好き。
    だけど…

    「ポイント」の竜三さんが、お手製のポイントカードに☆を付けている。
    “ありがとうって気持ちになった時、☆を付けるんだ”という。
    なんか、気持ちが解ける。
    「マンナカ」の和也くんが気付くこと。
    “自分のいるところが真ん中。自分が本当に思うことが真ん中。自分の中の真ん中。それがこの世界の、真ん中だ”

    なんてのが心に残ったかな。
    他にも沢山沢山、素敵な言葉がある。

    よし、明日からも頑張ろう!

    • aoi-soraさん
      いるかさん、コメントありがとー!
      ずっと読みたかった青山さん。
      本当に良かった〜(*˘︶˘*)
      木曜日と月曜日は、続きものなのね。
      ...
      いるかさん、コメントありがとー!
      ずっと読みたかった青山さん。
      本当に良かった〜(*˘︶˘*)
      木曜日と月曜日は、続きものなのね。
      皆さんのレビュー読んでると、この「猫のお告げ」にも、他の作品の登場人物が出ているようで…
      気になる〜(☆▽☆)
      早く他のも読んでみたい!
      2022/07/23
    • aoi-soraさん
      Manideさん
      フォローして頂き、ありがとうございます!
      どうぞ宜しくお願いします(^^)

      私もタラヨウについて調べちゃいました...
      Manideさん
      フォローして頂き、ありがとうございます!
      どうぞ宜しくお願いします(^^)

      私もタラヨウについて調べちゃいました。
      この本で初めて知った樹木です。
      意外と身近な所にあるんですね。
      Manideさんが紹介されてた戸越神社、素敵ですね!
      本当にミクジに会えそう(^^)
      青山さんの作品はどれも惹かれます…
      早く次が読みたいです。
      2022/07/23
    • aoi-soraさん
      ひろちゃん、
      青山さんに癒やされたよ〜♪
      思っていた通り。
      ううん。それ以上に温かかった。
      そして元気をもらえる作品!
      今もまだ、...
      ひろちゃん、
      青山さんに癒やされたよ〜♪
      思っていた通り。
      ううん。それ以上に温かかった。
      そして元気をもらえる作品!
      今もまだ、素敵な言葉たちに、ふわっと包まれているよ( ꈍᴗꈍ)
      2022/07/23
  • ――宮司が言う――
    あなたは運がいい。もうすぐかもしれませんね、あなたが猫のミクジからタラ
    ヨウの葉を受け取るのも。
    どうぞ、お告げの葉、その言葉を大切に
    して下さい。
    この神社には、迷いを持ってやって来た
    人の前にだけ、猫が現れる。


    この本は、「鎌倉うずまき案内所」に
    似ているような気がする。心に迷いを
    持った人だけが出会える。その猫に。
    案内所もそうだった。


    青山美智子さんの本は、読みやすくて
    癒やされる!
    この本では、2話目が1番気に入った。
    父娘の様子を描いたもので、思春期の
    娘に父がどう接していけば良いか、
    悩みを持っていた時に・・・・!!
    この話は息子に読ませた。
    いいじゃん、あの父さんいいよ!と
    言っていた。


    そして、びっくりしたのが「木曜ココア」
    に登場していた、キャリアウーマンのママ、画家のパパの家族が脇役として、
    幼稚園にやって来る。感激だ!


    エピローグに味がある。
    宮司さんのひとりごと、猫のミクジ、
    話の中に登場した皆のことを思ったり。
    ――タラヨウという木は、ハガキの木、
    とも言うらしい。――
    葉の裏に傷を付けるようにして、手紙を
    書くと言うけれど、小さくて・・・・

    2022、11、21 読了

    • ポプラ並木さん
      アールグレイさん、
      医療受診で落ち着いて読めるようになるといいね。
      自分の主治医は大学病院の医師で研究仲間で、時々医療受診相談で連絡する...
      アールグレイさん、
      医療受診で落ち着いて読めるようになるといいね。
      自分の主治医は大学病院の医師で研究仲間で、時々医療受診相談で連絡すると頑張ってくれます。ありがたやー---
      ゆっくり楽しんでね(^^♪
      2022/12/19
    • アールグレイさん
      ポプラさん(^_^)V

      私が通っているのは、東京郊外の公立病院です。知ってるかな?
      総合だから殆どの科がある。いつも何かあると、院内紹介で...
      ポプラさん(^_^)V

      私が通っているのは、東京郊外の公立病院です。知ってるかな?
      総合だから殆どの科がある。いつも何かあると、院内紹介でその先生のおかげです。
      手術受ける時は入院かなぁ・・・・
      (;,д`)
      2022/12/19
    • ポプラ並木さん
      アールグレイさん、結構知っているのは都立駒込病院。お知り合いの先生がいます!父親は白内障の手術は日帰りでした。
      自分はいつも早め早めの受診...
      アールグレイさん、結構知っているのは都立駒込病院。お知り合いの先生がいます!父親は白内障の手術は日帰りでした。
      自分はいつも早め早めの受診です。
      将来の眼のために頑張ってね!
      2022/12/19
  • 自分探しのファンタジーハートフル小説ですね。
    短編連作の七話ですね。
    何れも人間間のわだかまりを抱えた登場人物が、さる神社でお尻に星のマークのある猫ミクジと出会い、タラヨウの樹の下で葉っぱの「お告げ」なるものを授かり、問題の解決に至るという物語。
    人生の節目みたいな所で、自身の悩みに気付き、挫けそうに成ることは多にして有るものなのだが、以外とヒントに成りそうなものは目の前に有ったりしますね。
    青山さんは問題解決の直接の助言では無く、「お告げ」のヒントを後押しにして、登場人物の自分の力で身近な親近者の力も駆使しながら乗り越えていく様を心温まる文章で綴られています。
    大人の絵本ですね。詩情あふれる文章も織り混ぜて人情豊かな作品に仕上げておられます。
    青山スタイルの作品は読んでいて心地よいですから、これからも読み続けてみたいですね。

  • 先日読んだ「お探しものは図書室まで」とリンクがあると知り読んでみた。

    パターンとしてはこれまで読んできた青山作品と同じなのだが、今回再生のヒントになるのは『ミクジ』と呼ばれる猫がくれるタラヨウの葉。

    古いビルとアパートに挟まれた一本道の突き当りにある神社でお尻に星の付いたハチワレ猫に出会えたならラッキー。更にその猫が神社のタラヨウの樹の周囲をぐるぐる周り、幹にトンと脚をおいたなら、その時文字が書いた葉っぱが落ちてきたならそれはあなたへのお告げ。五十年勤めている宮司ですら会ったことはないというとてもレアな出来事なのだ。

    『迷える参拝客』へのお告げは実に意味深。
    失恋の痛みを忘れたい女性へは『ニシムキ』、高校生の娘と仲良くしたい父親へは『チケット』、就職活動が上手くいかない大学生へは『ポイント』、皆が自分から離れていく寂しさを抱える老人には『タネマキ』…という具合。
    それが一見ラッキーアイテムかのように思えて、お告げの言葉に従って行動してみるものの、そう簡単に事態は好転しない。
    『ミクジ』は幸運の猫どころか更に迷える参拝客たちを苦しめる悪い猫だったのか…と思ったら。

    「お探しものは図書室で」にもあったことだが、大事なことは答えや結果ではない。今の自分をどうにかしたい、何とか変わりたいと思ったならそれで既に再生へのスタートを切っている。
    『ミクジ』のお告げの言葉の意味を探すために考えて行動して、時にあれこれ迷って…そういう過程こそが再生への道のりだった。

    個人的には頑固じいさんの話が一番好きだった。プラモデルが大好きでプラモデルの店を開いてその仕事にのめり込んでいたものの、そのせいで家族は皆離れていった。だが息子の嫁は何故か彼との同居を望み、まるで本物の親子以上に遠慮がない。
    ここまで来るのに大変だったけど、大団円な結末だった。

    最終話の主人公はなんと占い師。占い師はお告げをどう受け止めるのか、改めて自分の仕事をどう受け止め進むのか興味深く読んだ。

    そして「お探しものは図書室まで」のあの司書が登場する。この時からキャラクターは変わらないが、懐の深さと広さも変わらない。素敵な人だった。

    一見キラキラしていたり、仕事もプライベートも上手く行っていそうだったり、気楽に自分の好きなことをやっているように見える人も、裏に回れば躓いていたり悩んでいたり迷っていたりと違う姿が見えるのも青山作品の特徴だ。
    転校生の主人公にマウントを取りたがる同級生も、裏に回れば違う姿が見えるのかも知れない。

    最後に宮司による語りで『迷える参拝客』たちのその後が分かるのも嬉しい。そして宮司が『ミクジ』についに会えるのかも…お楽しみに。

  • とても心が温まる7話でした。
    短編連作の手法が本当に上手いし、どの話も前向きになれてとても読みやすいです。

    「木曜日にはココアを」の登場人物もいたり、マーブルカフェも近所なのかなとニマニマしてしまいます。

    猫がタラヨウに書かれたお告げをくれますが、宮司さんもとても自然体にフォローしてくれます。
    ありのままを受け入れて、前向きにしてくれるそんな素敵な物語です。

    • Manideさん
      青竹さん

      ニマニマしちゃう作品多いですよね。
      すごい共感です ^_^

      本作の宮司さんは、素敵ですよね。
      神社仏閣に関わる人は、こういう感...
      青竹さん

      ニマニマしちゃう作品多いですよね。
      すごい共感です ^_^

      本作の宮司さんは、素敵ですよね。
      神社仏閣に関わる人は、こういう感じの人がいいですよね〜と、勝手に感じています。
      ※ちょっと小太りで…
      2022/07/22
    • 青竹さん
      Manideさん

      コメントありがとうございます。

      青山さんの本は図書館でも人気で、まだ数冊しか読めていないのですが、どれも温かくて心がほ...
      Manideさん

      コメントありがとうございます。

      青山さんの本は図書館でも人気で、まだ数冊しか読めていないのですが、どれも温かくて心がほっこりします。

      こうした閉塞感ある時代にはオアシスのような人間関係ですね^_^

      2022/07/23
  • ある神社にいる猫の"ミクジ"からタラヨウの葉のメッセージをもらえると、それまで思い悩んでいた人々の世界が一変する物語集。登場する7人の老若男女の話の中では、『三枚目 ポイント』、『四枚目 タネマキ』、『五枚目 マンナカ』、『七枚目 タマタマ』の四編がとても良かった。

  • 今回も青山ワールドに癒されました。

    ミクジに会いたい~
    宮司さんのさりげなさも絶妙。

    登場人物たちがところどころ緩くつながっているのも、青山さんの物語を読む楽しみの一つ。
    「木曜日にはココアを」に出てくるあの人もチラッと出てきたりして。

    どんよりした日々をほんのり明るく暖かくしてくれる。
    2020.12.5

  • ほっこり温かいお話なのに涙が止まりませんでした。読み終えたあとストンと肩の力が落ちスッキリしたようなほんわかしたような...青山さんの作品は大好きです。
    ミクジ☆の姿を想像してかわいいだろうなぁ〜会いたいなぁと思いました。

  • 小さな神社にある一本の大きな樹と、不思議な猫と、ふくよかな宮司さんが、悩みを抱える人たちを優しくて導いてくれる。
    心のこもった人生案内を読んでいるような感じがして、可愛らしい葉っぱのイラストにほっこりしてしまう。
    どのお話もひとつひとつが丁寧で、優しさに溢れていて、こんなお告げの葉っぱに私も出会いたいなと思った。
    「何かの答えを見出すのは素晴らしいことです。でも、そこにたどりつくまで迷いながら歩く日々のほうこそを人生と呼ぶんじゃないか…」
    心に残る残るフレーズもたくさんあって、青山さんの作る世界はいつも私を幸せな気持ちにさせてくれます。

    • りまのさん
      m.cafeさん
      あけましておめでとうございます
      フォローに答えて頂き、ありがとうございます!
      青山美智子さんは、知らない作家さんだったので...
      m.cafeさん
      あけましておめでとうございます
      フォローに答えて頂き、ありがとうございます!
      青山美智子さんは、知らない作家さんだったのですが、素敵なタイトルと、m.cafeさんのレビューを読み、気になる本に、なりました。
      どうぞよろしくお願いいたします。
      2021/01/03
    • m.cafeさん
      りまのさん
      あけましておめでとうございます
      私もブクログのみなさんのレビューを見て、読みたい本がどんどん増えてます(^^)
      それに、みなさん...
      りまのさん
      あけましておめでとうございます
      私もブクログのみなさんのレビューを見て、読みたい本がどんどん増えてます(^^)
      それに、みなさんからもらういいねやフォローがどんなに励みになっているか(^_^*)
      この場を借りてお礼を言いたいです
      ほんとにありがとうございます(^^)/
      りまのさん、こちらこそよろしくお願いしますね
      2021/01/03
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著者プロフィール

1970年愛知県生まれ。横浜市在住。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国し、上京。出版社で雑誌編集者を経て、執筆活動に入る。第28回「パレットノベル大賞」佳作を受賞。デビュー作『木曜日にはココアを』が、第1回「宮崎本大賞」を受賞する。『お探し物は図書室まで』で2021年「本屋大賞」2位に、『赤と青とエスキース』で2022年「本屋大賞」2位に選ばれる。他の著書に、『鎌倉うずまき案内所』『ただいま神様当番』『月曜日の抹茶カフェ』『マイ・プレゼント』(U-ku氏との共著)『月の立つ林で』『リカバリー・カバヒコ』等がある。

青山美智子の作品

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