- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784800303615
作品紹介・あらすじ
合戦場は、何処でもよかったわけではない。国境、郡境といった「境目」が戦場を決める重要なファクターだった。山や峠、そして河川といった地形や水系が「境目」を決め、「忍び」たちの諜報・破壊活動が合戦のタイミングを計っていた。
感想・レビュー・書評
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ここ数年の私は、様々な文脈における「境界」や「境目」という言葉に興味をもっている。戦国時代における「境界地域」「境目の城」という文脈もそのひとつ。有力な戦国大名に挟まれた在地領主や国人衆が、戦乱の世を生き延びるためにどのような手を打っていたのか、本書を読むことでその一端を垣間見ることができる。ある時は両隣の大名の仲を取り持つ正式な外交官として、またある時は諜報活動や攪乱作戦を実行する「草(スパイ)」として動いていた様子を、古文書の内容から推測している。
戦国時代の地政学に限らず、どのような社会構造においても、人が集まれば必ず「境界的な人」がでてくる。そこで、その人がキャスティングボードを握って大きな影響力を発揮できるか、はたまた草刈り場と化してズタボロにされるかは、当然ながら天と地ほどの差がある。自分が「境界」的な位置に置かれてしまった場合、そのことに関して自覚的でないと、とても不幸なことになるので要注意。「境界」と対極的な概念として「辺境」という生き方もあり、ある程度の経済力が保障される限りにおいてはとても魅力的な生き方なのだが、話が長くなるので触れるだけにとどめておく(内田樹氏の「日本辺境論」は参考文献として有益)。これからの日本は、アメリカと中国によるパワーゲームの「境界」に置かれることになる。草刈り場になるのだけは勘弁して欲しいところ。この文脈でのキーワードは「沖縄」かな。詳細をみるコメント0件をすべて表示