幻綺行 完全版 (竹書房文庫 よ 2-1)

著者 :
制作 : 日下 三蔵 
  • 竹書房
4.31
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本棚登録 : 101
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784801922853

作品紹介・あらすじ

明治に活躍した破天荒な世界無銭探検家中村春吉を主人公にした探検SF作品に単行本未収録の2篇を追加し復刊。

感想・レビュー・書評

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  •  ヨコジュンさんの明治ものにハズレなし。明治時代に、自転車による世界一周無銭旅行を行った中村春吉が主人公になっている。

     この旅行は、「海底軍艦」で有名な押川春浪(天狗俱楽部!)によって「中村春吉自転車世界無銭旅行」という本にまとめられている。中村春吉は謎の部分が多く、一説には軍事探偵(ようするにスパイ)だったともいわれる。そんな人物なので、旅行中に怪異な事件に巻き込まれるという物語にぴったり。
     
     本書は、もともとSFアドベンチャー誌に掲載された短編をまとめたもの。同誌は全巻持っており、掲載時に読んだはずなのだが、ほとんど記憶に残っていない。まあ30年以上も前だから、致しかたないか。で、あらためて読んでみると非常に面白かった。

  • 明治時代に自転車で世界一周無銭旅行をした実在の中村春吉を引っ張り出して、60-70年代の冒険映画のように怪奇と娯楽度抜群の破茶滅茶な横順の探検SF怪奇活劇小説。子供の頃ワクワクしたモノクロのシンドバッドの冒険映画を思い出した。ジャワ島の日本人遊郭から身請けした娘雨宮志保と外務省を辞めてお家再興のために秘宝探しにハマる石嶺くんと3人で、秘宝探しに人助け、悪党どもを蹴散らして野獣、怪物、妖怪、宇宙人を薙ぎ倒し世界を無銭で旅をする。心理描写は一切書かず当時主流だった起きたことを次から次へと描写する講談調の展開も、巻末にある雑誌掲載時のバロン吉元の挿絵も懐かしい。大好きよ、こういう話。

  • 横田順彌は面白い

  • 表紙が古本仕様という発想がすごい。初めて読む著者であり、明治探検SFって古くさそうで面白いのか不安があったが、読み始めたら想像以上の面白さで一気読みだった。明治なのにSFだし、キャラが強烈な中村春吉の周りの人たちもまたキャラが良い。オススメの一冊。

  • 90年代にはSFアドベンチャーの購読もしてなかったから、ヨコジュンの未読作品が読めて満足

  • 自転車で世界一周無銭旅行を決行した中村春吉を主人公とした冒険譚。SFでもあるらしいけれど、個人的にSFに対して抱いている取っつきづらさは全く感じられません。奇想天外、荒唐無稽の冒険活劇は、難しいことはなーんにも考えず、とにかく楽しい、の一言に尽きます。
    各地を旅するうちに彼らが遭遇する摩訶不思議な出来事の数々、そして想像をはるかに超えた異形の怪物。もうこれ、どれをとってもとんでもなさすぎます。そしてそれに対抗する春吉の思い切りの良さといったら! どこからどこまで常識外れで、痛快極まりありません。最初はか弱く思えていた志保の機転と強靭さも頼もしくって素敵です。
    お気に入りは「求魂神」。どれもこれもがどこから見ても現実離れした物語なのだけれど。これだけは……少しばかりぞくりとさせられました。本当に、「そんな馬鹿な!」と笑い飛ばせる話であってほしいものです。

  • 明治に実在した中村春吉の無銭自転車旅行を元にした冒険小説。
    「愉快、痛快、快男児中村春吉の冒険旅行記!」と銘打ちたくなるノスタルジア溢れる作品。

  • 明治を舞台に稀代のバンカラ男・中村春吉が冒険と怪奇の旅に向かう。子供読み物テイストだが痛快な物語。

  • 「古本ぽい新刊」として話題になっている本書。古書感を出す「フルホナイズドイフェクト」がほんとうにすごい! これはぜひ実物を見ていただきたいところ。

    内容は、明治期の実在の探検家中村春吉を主人公にすえたSF短編集(フィクション)。こういう人(自転車無銭旅行をした探検家)が実際にいたってことがまずすごい。でもって、執筆されたのは1989~90年とのことなので、ここにすでに時間軸がふたつあるわけなのだけど、平成のどまんなかによくぞこれだけ明治っぽい文体の小説を書いたものだなと、それもまた愉快。

    話も気持ちいいくらいトントンと進んでいく。
    「あまり苦労話をするのは、探検家らしからず、わが輩の本意ではないから、話を先に進めよう」
    これですよ(笑) このざっくりとした感じがいいのです。もっとすごいのはここ。
    「マラトヤまでくるとロシアの国事探偵にまちがえられ逮捕される始末だ。危うく死刑になりかかったところは、どうにか持ちまえの蛮骨精神で切りぬけたが」
    って、なんかすごい話を2行ですませてる(笑)
    中村春吉のノンフィクションと、長編もあるみたいだから、ひょっとしたら既出の話なのか? 気になる。

    編者解説には、「いだてん」に登場した天狗クラブへの言及もある。本作には出てこないけれど、バンカラの気風は通じるところがあるかもしれない。そこらへんに関心のある方にはおすすめ。

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著者プロフィール

横田順彌(よこた・じゅんや)
1945-2019年。佐賀県に生まれる。法政大学法学部卒業。70年、「少年チャンピオン」にショートショートを発表し商業誌デビュー。SF、冒険小説作品の他、古典SF研究、明治文化研究の分野でも精力的な執筆活動を行った。88年、『快男児押川春浪』(會津信吾と共著)で第9回日本SF大賞、2011年『近代日本奇想小説史 明治篇』で第32回日本SF大賞特別賞、第24回大衆文学研究賞大衆文学部門、2012年、第65回日本推理作家協会賞評論その他の部門をそれぞれ受賞。他に『幻綺行 完全版』『大聖神』(竹書房文庫)などがある。

「2022年 『平成古書奇談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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