最後の巡礼者 (上) (竹書房文庫 す 8-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784801924116

作品紹介・あらすじ

ノルウェーの森で発見された白骨死体が封印されしナチス・ドイツの隠避を呼び覚ます。現代と第二次大戦期が交錯する歴史ミステリ大作!!

感想・レビュー・書評

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    読んでおきたい「 ガラスの鍵賞 」受賞作品|北欧ミステリーの権威 - ブックオフオンラインコラム
    http://pro.bookoffonline.co.jp/hon-deai/mystery-shousetsu/20171223-glass-key-award.html

    最後の巡礼者 上 | welle design
    http://www.welle.jp/works/%E6%9C%80%E5%BE%8C%E3%81%AE%E5%B7%A1%E7%A4%BC%E8%80%85-%E4%B8%8A/

    最後の巡礼者 上|文庫|竹書房 -TAKESHOBO-
    http://www.takeshobo.co.jp/book_d/shohin/6037601

  • 上下一括感想
    下巻にて

    オモシロイ!
    こういうの好みなんです。

  • ノルウェーの元政治家で第二次大戦の英雄としても知られるクローグ氏が自宅で惨殺された。その二週間ほど前に森の中で発見された3つの白骨が事件に関与していると考える刑事トミーは、グローグの過去に迫っていく現代編。過去編はアグネスという女スパイが素性を隠し、ナチ幹部に接近していく。二つの物語が交差するとき、全ての真実が明らかになる。…読者が過去編で知った事実を現代編のトミーが理解できないのがもどかしい。白骨の性別くらいはすぐに判明しそうなものだが随分引っ張ったな。アグネスを危険な任務に駆り立てる動機がもう少し欲しかった。お互いスパイなんだから避妊くらいしたらいいのに…?と、気になる点はあるが構成の妙も含めてぐいぐい読ませる。私に第二次大戦下のノルウェー史の知識があればもっと面白かったのだろうけれど。冒頭のカイ・ホルトの死と正義感を発揮した警察官の悲劇が印象的だけれども、この事件自体はあまり掘り下げられなかったのが残念。

  •  ノルウェイのミステリーといえばジョー・ネスポとサムエル・ビョルクくらいしか読んでいない気がするが、本書は「ガラスの鍵賞」他、北欧ミステリーで三冠を挙げた警察小説であるらしい。それも本邦初訳となる作家。それにしてもぐいぐい読める本とは、こういう作品のことを言うのだろう。

     2003年の猟奇的殺人事件を捜査するオスロ警察のトミー・バークマン刑事。1945年戦後に起こるミステリアスな殺人。1939年に始まるイギリス籍ノルウェー人女性アグネス・ガーナーによるスパイ活動の物語。これらが、場面と時代を変えて語られてゆく。最初はわかりにくいジグソーパズルの断片に見えるものが、次第に一枚の絵を完成させてゆく、そのストーリーテリングが何と言っても素晴らしい。

     特に、バークマンとガーナーという二人の異なる時代の男女主人公が、それぞれの物語を紡いでゆく話法にはがつんとやられます。この辺りから、物語の加速感が半端ではなくなる。

     最後には二つの世界がやがて一つになり、現在の殺人事件の真相に繋がってゆくという構成である。ある意味で北欧圏に戦後を生きた人々にとっては、このような戦後処理とそのどさくさにまぎれた犯罪とは、王道とも言える主題の一つなのではないだろうか。

     これが作者デビュー作というが、相当な手練れとしか思えない小説作法ぶりである。ナチのヨーロッパ侵攻。これに対抗する英国との狭間にあって、屈した国、屈する間際だった国。それぞれがそれぞれの形で第二次大戦の洗礼を浴びたのだ。その光と影の中で生きた人間たちが、寿命を迎えようとするそんな現代。埋没した時代の証言者たちにとっては最終機会と言えそうな、そんな現代に。

     ナチ党員だった者、そうでなかった者の、隠れた闘争が引き金となり、その渦中にあって恐ろしいばかりのスパイ活動に身を投じたガーナーの苦しみ。その周囲で政治的、あるいは経済的理由で起こったいくつかの殺人とその犠牲者たち。現在に起こった冒頭の猟奇殺人の画面の裏で、フラッシュバックさせながら読者は様々な時代の断片を見せられる。

     徐々に明かされる真実のめくるめく多重構造には驚かされる。それ程、ミステリとその背後の迷宮地図が精巧に構築されているということである。それでいて人間的な強さも弱さも曝け出された、現在のヒーローと過去に生きたヒロインとは、感情を引き毟られるほどにスリリングで危うい。二人の物語が交錯する最終インパクトへのスリリングな疾走感は早朝にエネルギッシュである。つまり、ぐいぐい読めるのだ。

     ツイストにツイストを連ねるサスペンス。歴史の厚みと闇の暗さをすべて重ねつつ、迎える大団円。予想外の真実。秀作である。

     刑事バークマンのシリーズは既に四作までが刊行されているそうである。続編翻訳が大いに期待される作家が、また一人。

  • ノルウェーとスウェーデンの微妙な関係は、知っていなかっただけに、そうなんだねと納得してしまう。

    2つの時代を行ったり来たりして、過去の事件と現在の事件が並行して描かれる。そのうち、つながるのだろうと思うけれど、登場人物も多く、位置関係も確認しながらで、最初は読み進めるのが遅くなったが、読み進めるにつれて、
    面白くなってきた。

  • 久しく、マンケルロスが応えたこの秋「ノルウェー国防省上級顧問」の執筆❔北欧ミステリ3冠王!という記事に飛びつき、予約。結構早い入手で読み始めると、脳みそをぐぃっと捉まれ息もつけぬ面白さ。読み終えるのが勿体なく、先は知りたいものの、わざとゆっくり読み進む。1945・2003年パートが交互に展開。露vsノルウェー諸国に英国の絡みは最近海外映画でよく見てどうやら理解できて来たが、ナチスに北欧が連合軍絡みでこう関わって行く闇の政争は良く知らなかった。懐かしき地名~ヨーテボリ・リレハンメル。難儀な名前多出すれども、何れの時代にも出てくるのが作品のキ―パーソンだから、すぐ頭に入った。バーグマン刑事・・これから先、お馴染みになりたいわ・・ヴァランダ―の後継者として。

  • 2003年に発生した殺人事件は第二次世界大戦時3人が殺害された事件が関連している?
    この3人を殺害した人物について、最後提示された人物がそれまでの展開からは意外すぎ。"一号がちょっとおかしくなってしまって"って言葉が関係してるのかな。

  • 現代と過去を遡ってていくミステリー。アグネスの場面は、ハラハラし通しでそれだけでも独立した本が成り立つと思った。

  • 二〇〇三年六月八日、第二次世界大戦の英雄カール・オスカー・クローグの死体が自宅で発見された。ノルウェー貿易相まで登り詰めた老人は鳥のくちばしにつつかれたように切り刻まれ、犯人に強い殺意があったのは明らかだ。だが、手掛かりは凶器―ナチスの鉤十字が刻まれたナイフしかない。警察本部では犯人像を見いだせず、捜査は行き詰まってしまう。そんな中、トミー・バーグマン刑事は二週間前に発見された三体の白骨死体との関連性を見出す。戦時中に殺された三人は、親ナチ派のノルウェー人実業家グスタフ・ランテの娘のセシリア、婚約者のアグネス・ガーナーとメイドだった。彼女たちはグスタフの近親者ゆえにグローグらレジスタンスの標的にされ、粛清された三人の縁者が復讐のためにクローグを殺した。そう推理したバーグマンは、六十余年前の事件の真相に挑む決意を固める。一九三九年八月二十四日、アグネス・ガーナーは自らの手で愛犬を殺した。それがイギリス諜報部の最後の試験だったからだ。どうしてこんなことができるのか、自分でもわからない。確かなことは、ナチスを倒さねばならないということだけだ。その決意を胸にアグネスは故郷ノルウェーへ帰還する。人生を狂わせる運命の出会いが待ち構えていることも知らずに…。

    警察小説とスパイ小説のハイブリッド。面白いはずなのに、読むペースが一向に上がらない。とにかく下巻に続く。

  • 21世紀版『わらの女』である。
    ただし、こちらはノルウェーだ。
    その上、舞台の一つは、1940年代前半なのだ。
    これで暗くならないわけがない。

    2003年、オスロで、殺人事件がおこる。
    捜査は、事件の理由が過去にあるのではないかという方針で、進められていく。
    この物語は、捜査する現代と、遠因である過去が交互に描かれる。
    "過去"とは、40年代――
    ナチス・ドイツが猛威をふるっていた時代だ。

    遠い東の国から眺めてみれば、「北欧」とひとくくりにしてしまって、つい同じようなものと捉えてしまうのだが、その時代、国ごとの立場は大いに違っていた。
    たとえば、スウェーデンは「中立国」ということになっている。
    いっぽう隣のノルウェーは侵攻され、占領され、40年5月クヴィスリングによる傀儡政権が置かれた。

    占領され、というが、ナチスを呼び込んだ者はいるのである。
    ナチスに賛成する者、協力する者、反対する者、抵抗する者、「国民が一丸となって」などということはない。
    ナチス傀儡政権が置かれる前も、置かれてからも、色々な考えがあり、立場があり、それをもとに行動する者たちがいる。

    もちろん、そこには、女性もいる。

    『わらの女』カトリーヌ・アルレー(1956)は名著ではあるが、私には物足りなかった。
    有り体に言えば、前半は大いに盛り上がったのに、後半が腰砕けに思えたのだ。
    書かれた時代が時代だったので、仕方のないことだろうと、己を納得させていた。
    いっぽう、今この時代に書かれたならば、いったいどんな物語が描かれるだろうと、想像してもいたのだ。
    カリン・スローター? 
    ミネット・ウォルターズ? 
    あるいは・・・・・・などと思い浮かべていたが、まさか、ノルウェーの男性がそれを書くとは思わなかった。

    著者ガード・スヴェンがそれを意識したかどうかは知らない。
    けれども、私にはこれこそが現代の『わらの女』なのだ。

    敵も味方も混在して、誰が何やらわからない時代である。
    一人、女性が生きていくには、能力が要る、頭脳が要る。

    そして、当然、読み手にも、理解力と思考力が要求される。

    私は短気で、根気がなく、面倒くさがりである。
    本を読むにしても、人物名をメモするなどと、そんな面倒なことはしない。
    ましてや、話の流れなどと!
    けれども、上巻の3分の2あたりで、私は負けた。そして認めた。
    私には理解力が足りない。
    なにがなにやら解らない、さっぱりついていけていないと。
    そこで、覚悟を決めた。
    本の最初に戻って、なんと、年表をつくり始めたのだ。
    何年、何月、誰それはどこそこに行っただの、誰と会っただの、何と出くわしただの、逐一ノートに書き留めていったのだ。
    生まれて初めてのことである。
    雨が降った。冷たい雨である。

    だが、その甲斐はあった。
    話の流れがすっかり理解できたのだ。
    にもかかわらず、謎に関しては、すっかり欺されてしまったのだ。
    見事なミステリーである。

    作者ガード・スヴェンの、これはデビュー作である。
    彼はこの『最後の巡礼者』で、ノルウェーの年間最優秀ミステリに贈られるリヴァートン賞、最優秀新人作家に贈られるマウリッツ・ハンセン賞、そして、北欧年間ベストミステリに贈られる、あの「ガラスの鍵」を受賞している。
    三冠受賞はノルウェー初の快挙だそうだ。
    恐るべき新人である。
    が、本当かなあと、私は疑っている。
    作者は1969年生まれ。オスロ大学で政治学を学んだ後入省し、保健省、通信省などを経て、防衛省上級顧問を勤めている。
    その間に、別の名前で別のジャンルのなにかを書いていたんじゃないの? と、邪推しているのだ。
    それだけ面白く、骨太で、出来がよかったのだ。

    当然、好評だったのだろう。
    シリーズとなり、次々と執筆され、2018年には第5巻まで出版されている。
    英語、ドイツ語他にも翻訳されるかなりの人気作だ。
    なんとなく読むわけにはいかない、頭を使う話ではあるが、そこが魅力なのだろう。
    はまると抜け出せないパズルのような面白さなのだ。
    次々と日本語に訳されてほしい。ノートを準備して、次巻を待っている。

    ※ 犬好きには薦めない

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著者プロフィール

ガード・スヴェン
Gard Sveen
ノルウェー在住。2013年、本作『最後の巡礼者(原題 “DEN SISTE PILEGRIMEN”)』でデビュー。
この作品でノルウェーのミステリ大賞「リヴァートン賞」、「マウリッツ・ハンセン新人賞」、北欧でもっとも権威のあるミステリ文学賞「ガラスの鍵賞」の三冠を達成。
現在までに、トミー・バーグマンを主人公とするシリーズが第4作までが刊行されている。
執筆業のかたわら、ノルウェー国防省の上級顧問を務める。

「2020年 『最後の巡礼者 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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