- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784803002553
感想・レビュー・書評
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付属中学で社会科を担当している教師が大型バイクにはねられ瀕死の重傷を負う。
後頭部に事故とは無関係の殴られたような跡が見つかったことから、一転事件として捜査されることになる。
厳しい規則にがんじがらめにされ、ストレスを他者に向けて発散することでバランスを保つ生徒。
いじめにより不登校になっていく生徒。
いじめのリーダーになることでクラスに君臨する生徒。
面倒なことは周囲に押しつけ、自分の体面は保ちつつ責任からは逃げようとする担任教師。
教育現場において一定の支持を集める体罰という名の暴力をふるう教師。
それぞれが語り手となって、自分自身や周囲の人たちの日常をあぶりだしていく。
最初は教師殴打事件の犯人を追うミステリーなのかと思っていた。
だが、読み進んでも事件や捜査の描写はほとんど出てこない。
語り手たちの苦悩や苛立ち、思惑などが、とりとめもなく綴られていく。
物語の紹介文によるとジャンルとしては青春小説らしい。
資料を読み込み、想像し、作り上げられた「もっともらしい青春」にしか感じられなかった。
この時代にしかない独特の残酷さや殺伐とした空気、おだやかに見えている表面からはわからない不安定な不穏さ。
臆病な怖がりで、だから攻撃的で、群れることで安心したくて、苛立つことも多くて、何がきっかけでスイッチが入ってしまうのか誰にもわからなくて。
満足感からはいつも遠いところにいて、だけど何がしたくて何が欲しいのか。
自分のこともわからなくて、心のどこかに閉塞感のような焦りにも似た思いがある。
そんな空気感が感じられなかった。
物語の途中で殴打事件の犯人は捕まる。
それまでほとんど存在感のなかった人間が、逮捕されることで一瞬だけ物語の中で注目を集める。
だが動機が語られることもなく、犯人の内面や人間性が描かれることもない。
まるでエキストラの通行人のようにひっそりと物語の向こう側を通り過ぎていく。
絶望していたのはいったい誰だったのだろう。
複数の登場人物の心情を中途半端に描くのではなく、誰かひとりを核にして物語を展開させたほうがもう少し深く掘り下げられたのでは?と思ってしまった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
■ 14164.
〈読破期間〉
2014/8/11~2014/8/13 -
周りからどんな人と思われている?でも本当の自分は違う…とか、正しいこと=いいこと?といった葛藤が、中学生であるが故に狭いコミュニティに生きる登場人物たちを苦しめる。「希望」は見つかるのか?
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「ダーク青春小説」とはうまいことを言ったもので、そういえばそういうジャンルもありうるなあ。
私立中学勤務の「暴力教師」が殺人未遂事件の被害者となる。その事件をとおして覗かれる学校・教師・生徒・保護者の心理が興味深くもあり、そして怖くもある。もちろん、フィクションなので、真面目に議論するものに値しないのかもしれないが、わざわざ「参考文献」を提示するほどに山本さんは自分なりの調査・考察をしたのだろうし、フィクションなりの多分な皮肉スピリッツが含まれていると思うと、あながち馬鹿にはできない。
また、「◯◯大学付属中学」といった学校を舞台にする作品は数あれど、なかなかそこに「私立」である特殊性を持ち込んだものは意外に少ない。それが荒唐無稽なフィクションとしての学校像を作り上げることも多々ある。そういった意味で、本書の「私立」であることも大事な要素として組み上げた学校像は、いきおい貴重な存在となっているとも言えようか。
そういえば、某予備校のパンフレットにて「教育学部志望者にオススメの一冊」というようなコーナーがあり、湊かなえさんの『告白』が掲げられていた。また他の学部紹介系書籍の同様のコーナーでは武富健治さんの漫画『鈴木先生』が挙げられている。あえて肯定的に捉えてみると、なるほどその意図はわからないではない。フィクションということで大きな強調はされているには違いないけれど、だからこそディフォルメされた理想像が垣間見られるからだ。その意味でいえば、本書も同様の類の一冊と言えますな。
【目次】
絶望中学
序章
第一章 事件発生
第二章 3年A組担任・國本ひかり
第三章 3年A組生徒・小川峻
第四章 3年A組生徒・東野優輝
第五章 3年A組生徒・高橋雄介
第六章 3年A組生徒(不登校中)・柘植梓沙
第七章 3年B組生徒・白石みずほ
第八章 管理教育
第九章 一学期終業式/臨時PTA総会
第十章 3年A組副担任・矢部利晴
最終章 夏休み
参考文献 -
2011.10.7.
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こんなつまらない本を読んでしまった自分に絶望した。
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事実とは
案外こんなかたいであったりするかも・・・
そんなことを
投げかけてはいる・・・
しかし
浅い・・・
浅すぎる・・・
そこそこ
読ませる力があるだけに
読み終えた後は・・・