「ダーク青春小説」とはうまいことを言ったもので、そういえばそういうジャンルもありうるなあ。
私立中学勤務の「暴力教師」が殺人未遂事件の被害者となる。その事件をとおして覗かれる学校・教師・生徒・保護者の心理が興味深くもあり、そして怖くもある。もちろん、フィクションなので、真面目に議論するものに値しないのかもしれないが、わざわざ「参考文献」を提示するほどに山本さんは自分なりの調査・考察をしたのだろうし、フィクションなりの多分な皮肉スピリッツが含まれていると思うと、あながち馬鹿にはできない。
また、「◯◯大学付属中学」といった学校を舞台にする作品は数あれど、なかなかそこに「私立」である特殊性を持ち込んだものは意外に少ない。それが荒唐無稽なフィクションとしての学校像を作り上げることも多々ある。そういった意味で、本書の「私立」であることも大事な要素として組み上げた学校像は、いきおい貴重な存在となっているとも言えようか。
そういえば、某予備校のパンフレットにて「教育学部志望者にオススメの一冊」というようなコーナーがあり、湊かなえさんの『告白』が掲げられていた。また他の学部紹介系書籍の同様のコーナーでは武富健治さんの漫画『鈴木先生』が挙げられている。あえて肯定的に捉えてみると、なるほどその意図はわからないではない。フィクションということで大きな強調はされているには違いないけれど、だからこそディフォルメされた理想像が垣間見られるからだ。その意味でいえば、本書も同様の類の一冊と言えますな。
【目次】
絶望中学
序章
第一章 事件発生
第二章 3年A組担任・國本ひかり
第三章 3年A組生徒・小川峻
第四章 3年A組生徒・東野優輝
第五章 3年A組生徒・高橋雄介
第六章 3年A組生徒(不登校中)・柘植梓沙
第七章 3年B組生徒・白石みずほ
第八章 管理教育
第九章 一学期終業式/臨時PTA総会
第十章 3年A組副担任・矢部利晴
最終章 夏休み
参考文献
- 感想投稿日 : 2011年10月19日
- 読了日 : 2011年10月19日
- 本棚登録日 : 2011年10月19日
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