百選のうちから、さらに十五に絞って部門別に評価しました!
《恋愛五選》
7あかねさす紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る【額田王】
56紫草(むらさき)のにほえる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに われ恋ひめやも【大海人皇子】
→やはりこの遣り取りがどうしても好き。しかしこれは不倫の歌ではない!宴会歌だと知ったときの、嬉しいような、拍子抜けしたような・・・。
35多摩川に曝す手作 さらさらに 何そこの児の ここだ愛(かな)しき【東歌】
→「さらさらに」は「さらに」って意味なのだけど、川や手作との関連の「さらさら」も浮んでくる。音の響きのなめらかさと、重なる「さら」に熱い思いを感じます。
25君待つとわが恋ひおれば わが屋戸の すだれ動かし 秋の風ふく【額田王】
→今だと、携帯のバイブ、とかなのかな。
82恋草を 力車に七車 積みて恋ふらく わが心から【広河女王】
→かなり重量級の愛情。
《響五選》
4田子の浦ゆ うち出でて見れば 真白にそ 不尽の高嶺に 雪は降りける【山部赤人】
→「ゆ」が好き。
8石(いわ)ばしる垂水(たるみ)の上の さ蕨の 萌え出づる春に なりにけるかも【志貴皇子】
→「石ばしる」の音が滝(=垂水)とよく似合う。
26巨勢山のつらつら椿 つらつらに 見つつ思(しの)はな 巨勢の春野を【坂門人足】
→「つらつら椿」。この歌が音だけだったら一番好き。
47来むといふも来ぬ時あるを 来じといふを 来むとは待たじ 来じといふものを【大伴坂上郎女】
76よき人の良しとよく見て よしと言いし 吉野よく見よ よき人よく見つ【天武天皇】
→畳語性が作品の命。
《発想五選》
2春の野に霞たなびき うら悲し この夕かげに 鶯鳴くも【大伴家持】
→さすがですね。
10なかなかに人とあらずは 酒壺に なりにてしかも 酒に染みなむ【大伴旅人】
→確かに中国の詩の影響を感じますね。にしても、酒壺って。
12憶良らは今は罷らむ 子泣くらむ そのかの母も 吾を待つらむそ【山上憶良】
→宴会から去るときの手本!おじいちゃんには子供はいません。
17新しき年の始めの 初春の 今日降る雪の いや重(し)け吉事(よごと)【大伴家持】
→家持の歌で一番いい。リズムもよく、「吉事」の響きも良い、そして何よりスーパーポジティブ!新年はこういう気持ちで始めましょう。
22萩の花尾花葛花 瞿麦(なでしこ)の花 女郎花 また藤袴朝貌の花【山上憶良】
→憶良がその前の歌で「秋の七草」を読んで、それを列挙したのがこの歌。面白い。
※番号は本の番号で、国家大観のものではありません。