答えなき時代を生き抜く子どもの育成 (教育の羅針盤 2)

  • 図書文化社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784810015928

感想・レビュー・書評

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  •  ここ何回かの学習指導要領作成者の上智大学・奈須正裕先生とカウンセリングでは有名な明治大学の諸富祥彦先生の対談形式の本である。高名な二人の学者の対談と言うだけで、どんな話題になるのか、大変興味深く読ませてもらった。
     総合的な学習の時間の話題を中心に、教育論が紡がれていく。一番の中心は総合的な学習の本質だろう。自分を取り巻く世界から、直接的ではない目に見えない形で、我々には問いかけが成されている。(現代社会の抱える問題であったり、地域の問題であったり、様々な問題)それをしっかりとキャッチし、子どもも教師もそれを自分事として自分に問い、自分の周りにいる人と協働し、これまでとより納得のいくような周りの世界との関わり・応答をつくっていく、「私」をつくっていく。この本質を踏まえた上で総合的な学習の実践を考えていくならば、素晴らしい素材が身の回りにたくさん転がっていると考えられよう。教師のスタンスとしては、見取り・共感である。子どもも教師も未知なるものに出会い、取り組んでいくことで、子どもは問題を解決する力を、教師は子どもが問題を解決しようとする取り組みに寄り添い、共感することができるだろう。・ホンモノと出会えるように・つなげる・「問い」を見出すこれら3つも教師の姿勢としては大切なものと言えるだろう。最後に、諸富先生の「「哲学をもつ」という言葉が、重みを持って自分の中に入っていった。「哲学」無き実践は、実践にあらず。

  • 大学時代に履修した「学校教育学」の奈須先生が著者だったのがきっかけで手に取った本。版元が同業他社であるのは目をつむりたい所だが、内容は久しぶりに自分の信念を考えさせられる内容であった。内容の中心は『総合的な学習の時間』について。これは平成10年開始の学習で、まさに私が中学生のときに始まった内容で、一般的にはゆとり教育推進のトピックである。奈須先生は総合学習の指導要録解説の協力者でいわゆる推進派であり、総合学習は間接的に失敗だったと述べているため、私はかなり憤慨したが、これもまた運命でありやむなしかなと今は納得させている。やはり、学校側に総合学習の理念(答えなき問いを引き受ける力、グローバルに対応する力などを付ける)は通達できても、何をやるか具体的には支持をせず教員の力量次第というのは厳しかったのではないかなと個人的には感じてしまった。中学の時は意味もわからず自分史作成、高校の時は環境問題を英語で書くなどであった。やはり、毎日を無自覚に生きる中高生にとっては到達点がわからず先生もわかってなかったように今となっては感じる。総合学習は大部分が観念的なものに終始したのが否めなく、今でも不全感を持ってしまう。それでも、小中でやらなければいつやるのか?相手を気に続け関わり続けていこうとする力を身につけないといけない、など共感ポイントも多く、一概に全否定ではなく、まだまだ今後も改良の余地のある問題(学習)だなと感じる。しかし、1番は現場の教員の力量、これに終始します。現場の教員が総合学習の解説書を読み、落とし込む事を祈るとともに、自分に何ができるか考えていきたいと思う。

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著者プロフィール

奈須正裕(上智大学教授)
神奈川大学助教授、国立教育研究所教育方法研究室長、立教大学教授などを経て2005年より現職。 現行の学習指導要領等に関わっては、中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会、教育課程企画特別部会、総則・評価特別部会、幼児教育部会、中学校部会、生活・総合的な学習の時間ワーキンググループ、小学校におけるカリキュラム・マネジメントの在り方に関する検討会議、小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議、2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会等の委員として、重要な役割を担う。主著に『「資質・能力」と学びのメカニズム』(東洋館出版社)、『次代の学びを創る知恵とワザ』『「少ない時数で豊かに学ぶ」授業のつくり方』(ともに、ぎょうせい)など。

「2022年 『個別最適な学びの足場を組む。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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