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- Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
- / ISBN・EAN: 9784810371710
感想・レビュー・書評
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旅は得るためだけでなく捨てるためにもある、というのは「指輪物語」の読者であればご存知の所で。
とはいえ一般的にはやはり旅は「新しい知見」「新しい出会い」「新しい興味」を得るためのものなのであろう。とはいえそれは単にそれらが言語化され可視化されているだけの話であって、実際の所は旅人達の多くは旅先で何かを捨てているのである。センチメンタルジャーニーというではないか。
精神医療に携わる著者はこの「捨てる旅」を強く自覚している。一日外を出歩けば(家の中に引きこもっていても)汗はかくし垢もつく。それを洗い流さなければ異臭を放つし痒いしとにかく不快である。そうした垢は物理的なものだけでなく精神的なものもある。たまにはデフラグしてやらなければ心が重く固まっていく。
そうしたコンセプトの旅であるから、旅先で出会った面白い人や出来事はあまり出てこない。美味しい食べ物も出てこない。ただただ自分の内面を掘り起こしてはいらないものを捨てていく旅である。それでいいのである。それでもいいのである。
本書で描かれている著者の旅自体は(おそらく著者も意識しているだろうが)どうでもよいことであって、どこに行こうとか、何をしようとか、そうした旅のヒントは一切ない。旅という非日常を日常の中にどのように組み込むのか、という概念を見つめなおせればそれでよいと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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