- Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
- / ISBN・EAN: 9784813021384
作品紹介・あらすじ
七十三年前に起きた、日本犯罪史上稀に見る"惨劇"-「津山三十人殺し」。事件のキーマン・寺井ゆり子は、生きていた-。彼女の口から語られた事件の知られざる真実。そして、アメリカの地に眠っていた禁断の文書「津山事件報告書」を紐解き、明らかになった、犯人・都井睦雄と祖母いねの驚愕の真実。前代未聞の大量殺人事件の真相が、今明らかになる。
感想・レビュー・書評
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読了。資料価値が高いかと思ったが、内容としては、著者の以前の記事の再録であったり、同じことが何度も書いてあったり(きっと重要だからということなんだろうが)、少し間延びした感じもあったが、最後に事件の概要を時系列に追っており、参考になった。
著者独自の視点での分析は、新機軸で、挑む姿勢は評価できる。
あまり詳細については知らなかったこの事件について、初めて、通して知ることができたのは知識の獲得であったが、これ以外の分析についても読んでみる必要があるだろうとは思わされた。
これはこの本のみの話ではないが、ルポルタージュは、もっと図表を使って分かりやすい形で表現すべきであろうと思う。私自身の反省も込めて。叙情ならいざ知らず、事実に関して文字だけでの表現は決して分かりやすいものではない。絵を描けというのではなく、地図の参照や、樹形図、家系図などで、固有名詞の相互関係が分かるようにすべきだということ。(2011/3/15)
23番乗り。紀伊國屋書店渋谷東急プラザ店にて購入。未読。貴重な資料がありそうだ。(2011/2/24)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
”八つ墓村”といえば…
惨劇に至るまでの、犯人の生い立ちと村の因習がじっくりと描かれています。
惨劇場面は息がつまり胸がいたむ疾走感。
(シオリさん) -
周南市の連続放火殺人事件は津山事件を引き合いに出される。島田荘司の小説でなんとなく概略は知っていた程度で、評判の良かったこの本を選んだ。
誰もが抱えるストレスや運命、人の心や人間関係が少しずつズレて狂ってしまい、最終的には悲劇を迎えてしまったと感じた。
人間というのは「これは異常な事件であり、自分とは全く関係ない」と思い込んで安心しようとする生き物ではあるが、もし自分が都井だったら、ゆり子やいねの立場であったらどうするべきだったのか。
考えて診る価値はあるはずだ。 -
有名な津山三十人殺しを10年近くおったライターさんの書いた記事をまとめたもの。
何故岡山の小さな山村で凄惨な事件が起こったのかをできる限り追及している。
個人的には、都井が「結核」持ちだとうわさされ、進学の断念、噂による村人との付き合いの希薄さと、恋愛関係も結べなかったことにより、自分ひとりで考え事をする機会が多くなりすぎてしまったことが原因ではないかと思えた。
コミュニケーションが希薄になると自身の考えにのみ縛られてしまうことが多くなる気がする。
あとは、「結核」が治らない病気であったということ、農村という狭いコミュニティの中から脱出できなかったということ、いろいろ複合的に原因がからんでいたと思う。
話が重複しているところもあり、若干長いが、すぐに読めるという意味では読みやすい。 -
かの「八ツ墓村」のモデルとなった,昭和13年の大量殺人事件。集落への電線が切断され,ナショナルの懐中電灯を二本頭に括りつけた襲撃者が,銃や日本刀で12軒に乱入。犯人はその集落に暮らす一人の青年で,村人約百人のうち,老若男女30人を殺して自殺した。遺書は残したが,事件の真相ははっきりしない。著者は,犯人と,最初の犠牲者であるその祖母の関係に光を当てて,真相にせまっていく。
動機は怨恨らしい。肺病のため,徴兵検査でも丙種とされ,集落内で差別をうけていたという。当時の田舎では,「夜這い」の風習があり,集落内の男女は結構普通に関係していた。犯人も何人もの村の女性とそういう関係にあったが,病気を理由に冷たくされるようになってそれもこたえたらしい。
警察発表では動機は「痴情のもつれ」ということにされた。夜這いがはびこるような風紀の乱れは,こんな凶悪な事件に結びつくのだ,とした。この事件は,そういう宣伝に利用された面もある。銃後をおびやかす,前近代的な夜這いの風習などは,国策に反しており,撲滅の対象だった。 -
当時の現地の性風俗の乱れをことさら大きく取り上げるのには、著者同様あたしも反対ですが、祖母との関係を本書のように大きく扱ってもよいものか、そこもやや疑問を感じます。ただ、これ以上取材しようにも資料に乏しく、生存者が僅かとなった現在では、これ以上の追求、真相解明は難しいのではないかという気もします。少なくとも、稀代の殺人鬼、異常な、というよりは犯人はごくごく普通の人で、ほんの些細なことから道を踏み外してしまっただけ、場合によっては現在でも同様の事件が起こる要素はあるのだろうと、著者同様にあたしもそう思います。
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いったいどんな事件だったのか全貌が見えたような気がした。
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その内容をそのまま受け入れるかどうかは別として、この事件への著者の熱意が充分に感じられる一冊。