発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法 (SB新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784815612993

作品紹介・あらすじ

発達障害より生き辛い!
あなたももしかしたら「グレーゾーン」かもしれない。

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発達障害について広く認知されるようになり、
自分も発達障害かもしれないと医療機関を訪れる人も増えてきた。
そんななか多くなっているのが、徴候はあるものの診断には至らない「グレーゾーン」。
診断には至らないとはいえ、じつはグレーゾーンのほうが生き辛いという研究もあり、最近注目されている。
本書は、疑似ADHD、強迫性タイプ、回避性タイプ、コミュニケーション障害など、
タイプ別に発達障害未満の生き辛さの傾向とその対策について解説する。


発達障害、パーソナリティ障害、愛着障害など、
現代人のこころの闇に最前線で向き合い続ける
精神科医がはじめて明かす「グレーゾーン」
生き辛さをかかえる人から子育て世代まで、
必読の一冊!

感想・レビュー・書評

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  • 発達障害については、日進月歩の世界です。とにかく新刊から読むことを心がけています。今回も新たな発見ばかりでした。
    本書では「グレーゾーン」について、ASD、ADHD、LD 、HSP、発達性協調運動障害など一通り述べられています。これらは脳の特性であり、個性と言えるほどのものです。自分の強みと弱みをよく知ることがとても大切だと思いました。そして、個別最適化した自分なりの生き方がますます重要になってくると考えます。本書から、わずか十数年前と比しても、現代は多様性の時代へと変化したことを痛感させられました。
    また、テスラ社のイーロン・マスク、作家のカフカや漱石、アマゾンのジェフ・ベゾスなどの人物が登場し、特性とその生かし方に説得力を持たせています。
    特に心に残ったのは、「ワーキングメモリー」です。これが脳に入った情報を出し入れする、活用する。単なる一時記憶とは異なる働きがわかったことです。社会性とも重要な関わりがあります。同時通訳者は訓練の賜物で獲得した能力で、鍛えれば伸ばすことが可能と改めて知りました。
    最後に発達の特性は障害ではなく「ニューロダイバーシティ(神経多様性)」として理解されているとあります。現在のわずかなカテゴリーで区切ることに無理があるとしており、ADHDなど診断概念が変わるであろうともしています。
    これからもますます新たな知見が生まれ、目を離せない分野だと思わされる一冊でした。

  • 再読。発達障害の分類や症状、グレーゾーンについて実例を挙げながらわかりやすく書かれている。グレーゾーンについての理解が深まる本。障害や課題を抱えた偉人のエピソードも面白い。最終章に書いてあった「大事なのは、障害か障害でないかを区別することではなく、その人の強みと弱い点とをきちんと理解し、適切なサポートやトレーニングに繋げていくことだ」という言葉が一番心に残った。

    わかったこと
    ・グレーゾーンは決して様子を見ればいい状態ではなく、細やかな注意と適切なサポートが必要な状態で、それが与えられるかどうかが命運を左右する。
    ・大人のADHDは、本来のADHDに比べると神経学的な障害は軽度であるにも関わらず、生きづらさや生活上で感じている困難は、本来のADHDをもった人よりも強い。
    ・グレーゾーンを診断する場合には、愛着障害や心の傷が影を落としていないかに注意する必要があるし、そうしたケースでは、その部分への手当てがなされない限り、その人が抱えている本当の困難や生きづらさ理解することも、改善することもできない。
    ・通常、知的障害と診断されるのが、IQが70未満の場合。その割合は、一般人口の2.2%。ところが、知的障害のグレーゾーンである境界知能とされる人は、IQが70以上85未満(80未満とする場合もある)の人で、その割合は、一般人口の十数%近くにもなる。知的障害と認定される人の何倍もの人が、グレーゾーンに該当。自閉スペクトラム症やADHDといった状態も、症状の程度は様々な段階があるスペクトラム(連続体)と考えられている。障害レベルの人は一般人口の数%としても、特性や傾向のために生きづらさを感じている人は、その何倍もいる。
    ・同じ行動パターンへのとらわれを一つの特徴とするものに「自閉スペクトラム症(ASD)」があるが、診断されるためには、この症状以外に、コミュニケーションや社会性の障害も認められる必要がある。強いこだわりで困っているという場合も、コミュニケーションや社会性の問題が軽度で、友だちともそれなりに会話やつき合いもできているという場合には、ASDの基準には当てはまらず、グレーゾーンと判定されることになる。
    ・発達障害のこだわり症が、子どもの頃から始まっている特性であるのに対して、思春期・青年期以降に、こだわり症状がより強まった形で表れてくるのが強迫性障害。強迫性障害(強迫症)は、自分でする必要がないとわかっている行動(強迫行動)を繰り返さずにいられなかったり、自分でもあり得ないと思っている考えや心配(強迫観念)にとらわれ続けたりするものだ。こうした症状のため、日常生活に時間がかかって支障が出ることも多い。
    ・社会的コミュニケーション障害を示す発達障害の代表が「自閉スペクトラム症が「ASD」だが、社会的コミュニケーション障害だけでは、自閉スペクトラム症とは診断されない。診断のためには、限局された反復行動というもう一つの症状に該当する必要がある。限定された反復行動が見られない場合には、ASDのグレーゾーンということになる。
    ・感覚過敏は、ASDの診断基準の一部を満たすが、それだけでは診断に至らない。一方で、人の顔色や反応に敏感な傾向は、不安型愛着スタイルの人に典型的に見られるが、これは障害ではなく特性だと考えられている。どちらにしても、グレーゾーンという判定になりやすい状態だと言える。
    ・不安型愛着スタイルは、親の顔色を常に気にしながら育った人に典型的に見られるもので、親が気分次第で極端に態度を変えたり、情緒的に不安定だったりすることが要因となる。それ以外にも、両親が始終喧嘩していたり、生活が苦しく、他人にすがらないと暮らせないような安心感の乏しい境遇に置かれたりすることも、そのリスクを高める。
    ・ADHDの増加の原因は、認識が広まり、自ら受診するケースが増えたことが、一つの大きな要因と考えられているが、それだけでは説明がつかない現象もあり、実際に増えていると考える専門家が多い。そもそも遺伝要因が6.7割とされるADHDがどうして急増するのか。それに対する答えは幾つか考えられるが、環境要因が関係していることは間違いない。環境要因には、睡眠時間の短縮やストレスの増加もあるだろう。また、合成甘味料や着色料、妊娠中の飲酒、虐待、生活困難家庭の増加なども挙げられる。
     そして、それとも関係するのが、擬似ADHDの増加である。擬似ADHDとは、症状がADHDと似ているものの、原因が他の精神疾患、うつや不安障害、依存症、愛着障害などによって引き起こされるものだ。
    ・安易にスクリーニング検査だけでADHDと診断されることもあり、過剰診断が問題になっている。スクリーニング検査だけで診断された場合、約半分は過剰診断による擬似ADHDだと推定される。間違った診断のもと、投薬が行われないためにも、医療を受ける側も知識を持つ必要がある。
    ・ワーキングメモリの低下があると、数字や言葉を頭に留めておくのが困難になるため、計算や文章の理解がスムーズにできないし、特に何段階もの処理が必要な計算や長い文章の聞き取りや読解が難しくなる。
    ・ワーキングメモリは、読み書きや計算はもちろん、感情や行動をコントロールしたり、計画的に行動したり、コミュニケーションをとって相手を理解したり、大きな視点に立って注意を切り換えたり、物事の悪い面よりもよい面を見たりすることにもが関わっている。
    ・ワーキングメモリを鍛える方法には、さまざまなものがあるが、ワーキングメモリは鍛えると強くなるだけでなく、他の能力を高める波及効果が生まれる。
    ・グレーゾーンのケースには、愛着の課題を抱えたケースが多い。時代を代表する起業家であるジェフ・ベゾスとイーロン・マスク、アップルを創業した、いまは亡きスティーブ・ジョブズも、複雑な養育環境の中で育ち、愛着の課題を抱えていたことはとても象徴的なことに感じられるとともに、愛着の課題に苦しむ人が急増する今日、逆境をエネルギーに変えることができるという希望を与えてくれる。

  • 発達障害の診断には至らないものの、生きにくさを感じる白でも黒でもないグレーな人を分類した本書。
    著名人を引き合いに出してわかりやすく症状を説明している。このようなグレーゾーンと呼ばれる人の生きにくさを解決するには自らの自覚と他者の理解である。
    障害についての細かい分類はこのような見方があるかと参考になった。それにしても今の時代、育て方も加味されてグレーな子どもが増えているように感じるのは気のせいだろうか。

  • すみませんの立ち読みメイン

    ASDに、回避性パーソナリティーとか、愛着障害とか、境界性パーソナリティー障害とか、
    さまざまな要素を取り入れて述べられている。
    こうなると、100%の人が、何かの障害←重い軽いあれど、とASDをあわせ持ってしまう気がする。

    自分が何者か、どうして自分はこうなのか、
    を定義づけるために、発達障害とは用いやすい用語であると、私はいつも感じる。

    ジョブスのルーティンなど、偉人のエピソードは面白かった。

  • 何か秀でるものを持つ者は何かしらの課題を抱えている。アンバランスな人たちがいる。ケースとして著名人が登場。色々な分野において、世界に貢献した人たち。それはほんの一握り。ほとんどは隠れた才能を見出せずに過ごしているのでは…。

    また「障害」の基準、線引きの難しさも感じた。グレーゾーンは便利な言葉だけど、現実的に困っている人はたくさんいる。彼らに何ができるのだろうか?教育者として、日々子どもと向き合う立場として考えていく必要がある。

  • 読了。発達障害の診断までは至らないグレーゾーンの人たち。だけど、そこまで日常生活に不都合があって、問題が起きてるなら診断の対象になるのではないかとも思ってしまう。

  • 発達障害かも?と思うことが多々ある私からすると、このグレーゾーンにかすりもしない人がどれくらいいるのか気になる

    症状ではなく遺伝子、神経科学、行動科学などの生物学的なマーカーで分類する研究がアメリカで進められており、著者は10年後には診断も病名もガラリと変わると考えている

    また著者も述べているように、背景に愛着障害が隠れているケースについての研究がさらに重要性を増していくだろう
    小児科の実習で発達障害を専門とする先生方とお話する機会が何度かあったが、現場でも今はあまり問題視されていない(正確には問題には気づいているけどもそこまで考えている余裕がない)ようだった
    これは患者を見るのが診察室という限られた空間であることや系統だった診断方法がないことにも所以するだろう
    私自身愛着障害や発達障害という領域に元々興味はあったが岡田先生の本を通してさらにそれが強固なものとなったので、今後何らかの形で研究に関われたらと思っている

    またオキシトシン系との関連性も著書ではよく取り上げられており、今日の実習でまさにそこに焦点をあてた論文の紹介があり一人で感動していた
    とはいえ、まだまだ解明の余地があることには変わりないようだ

    誰かの"生きづらさ"を"生きやすさ"に変えることができたなら、それほど嬉しいことはないと思う
    将来どのような形であれそれを手助けできる人になれたらいいなあ

    ✏大人のADHDは、本来のADHDに比べると神経学的な障害は軽度であるにも関わらず、生きづらさや生活上で感じている困難は、本来のADHDをもった人よりも強い。

    ✏グレーゾーンを診断する場合には、愛着障害や心の傷が傷を落としていないかに注意する必要があるし、そうしたケースでは、その部分への手当がされない限り、その人が抱えている本当の困難や生きづらさを理解することも、改善することもできない。

    ✏感覚的な苦痛も、心理社会的な苦痛も、脳は最終的に同じ領域で痛みとして感じている。したがって、心理社会的過敏性が和らぐことで、感覚過敏なども和らぐという好循環が生まれやすい。

  • 兆候はあるが発達障害と診断されず様子見をとられるグレーゾーン。
    疑似ADHD、こだわり症、社会的コミュニケーション障害(KY)、サイコパス、孤独好き(非社会性)、愛情や関わりを求めない(回避型愛着)、言語や記憶が強いASDタイプ、地図や図形が苦手な言語・聴覚タイプ、共感が苦手な理系脳、感覚過敏(HSP)、発達性協調運動障害(目立つ不器用)、学習障害、他。

    大体の人が何かしら心当たりがありそうで、診断されないことで生きづらさを感じたこともあるかもしれない。境界を示すことに大きな意味もなく、大事なのは診断されることではなく特性を把握すること。有効な対処にもつながる。
    また発達の特性は障害ではなく神経多様性として理解されつつあり、脳の特性であり個性。読書などにこだわりすぎてるのもその兆候のひとつなんだろう。

    まさにずーっと思い言い続けてたことを本書でも語られていて、すごく安心できた。
    88冊目読了。

  • 発達障害という障害が世に広く知られる事によって、「自分もそうなのでは」と思い診断を受けるも微妙なラインにいる人について。
    明確な病気では無いので中々診断は難しいという事はわかるが、このグレーという診断で逆に苦しむ人が増えているそうだ。
    周りから普通じゃないと言われ、医師からは障害じゃないと言われる。一体自分は何なんだという気持ちにもなるだろう。

    本書にあった、幼少期からの対応策については大変興味深かった。
    発達障害やそれに近しい状況に対して、幼少期から正しく教育と対策ができていれば成人になる頃には状態は良くなる例も多くあるそうだ。
    トム・クルーズの例など、親の理解に少し感動した。

    誰もが生きやすい世の中なんて綺麗事のようだが、こういった事を理解する人が増えれば増えるほどそういった世の中に少しは近づくのかもしれない。

    しかし、この手の本を読むたびに「じゃああ普通ってなんなんだ」という気持ちにはなる。

  • 読んでいて思うのは、 何においても正常な人なんて存在せず、皆一様に何かしらの性質があるのではないかということ。一つの特性として、それぞれの人がその特性を上手に使いこなしたり乗りこなすことで突出できる可能性すら秘めている。ただ、周りにいる人がかなり苦しむことになるんだという事実は無視できない。本当に必要なのは、その周りで苦しむ人たちに役立つ、一人ひとりの取説なのかもしれない。

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著者プロフィール

岡田尊司(おかだ・たかし)
1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退。京都大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。京都医療少年院勤務などを経て、2013年より岡田クリニック(大阪府枚方市)院長。日本心理教育センター顧問。パーソナリティ障害、発達障害、愛着障害を専門とし、治療とケアの最前線で現代人の心の問題に向き合う。著書『悲しみの子どもたち』(集英社新書)、『愛着障害』『愛着障害の克服』(いずれも光文社新書)、『愛着アプローチ』(角川選書)、『母という病』(ポプラ新書)、『母親を失うということ』(光文社)など多数。

「2022年 『病める母親とその子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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