- Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
- / ISBN・EAN: 9784816916830
感想・レビュー・書評
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「海外文学」がどうしても好きになれなかった理由が、冒頭数ページの中に凝縮されていて、目からうろこ。
著者の、翻訳という自分の仕事に対する情熱や真摯な姿勢が、ストレートで厳しい言葉から伺える。いや、それどころか目を背けたくなるくらいきつい文章が胸に突き刺さってくる。
翻訳に関わる人だけでなく、文筆業で食べている人にはぜひ一度読んでほしい一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今は亡き名翻訳者が、翻訳の歴史、翻訳者の生活、翻訳ビジネスなど、総括的に、多面的な観点で翻訳について語った本。
自分は翻訳を手掛けているが、きっかけは「能力があるので片手間で」程度だったか、自分の態度の甘さを思い知らされた。
英文和訳と翻訳の違い、翻訳学校の意義、翻訳学校のビジネスについての項は特に興味深く読んだ。
心に残ったのは、
翻訳学校に通っても、一流の翻訳家に学べる確率はそう高くはない。ところが、書店に行けば、一流の翻訳家がみな、訳書という形で翻訳のノウハウを示してくれている。自分が本当に尊敬できる翻訳家を選んで訳書と原著を手に入れ、訳書を見ないで原著を翻訳していき、訳書との違いをひとつづつ確認していけばいい。この方法なら、翻訳学校で教えていない翻訳家からも、亡くなっていて学べる機会がないはずの翻訳家からも学べる。無料で添削を受けられる。一流の翻訳を真似ることができる。
そして、これを書いた名翻訳者の山岡洋一氏も、今は亡き人となってしまったのかと感慨深く思った。
全体的に厳しいことをたくさん書いており、痛烈な批判も多いが、実際に接した方によると、山岡氏はとても温厚で、日本の翻訳業界の向上に努めようとされていたそうである。今は亡き人となってしまい、本当に残念。 -
翻訳という仕事の現実を、業界の現状、収入、志望者のレベル等で論じていく。
一般的な入門書などとは一線を画すどころかケタ違いで、翻訳業がいかに難易度が高く、得るものが少なく、陽の目を見ないかをとつとつと語ってる。
「著者が日本語で語るならどう著すかを考える」、「対象を自分で選べず、著者が語ることを一から十まですべて理解する必要がある」といったところは興味深かった。
日本のように母語を捨てず、母語で海外の文化を理解し、母語で議論し発展させることができる、というのは考えてみれば稀有なことかもしれない。 -
とても読みたい。
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エンターテイメント性もなく専門外なのにすごく面白かった。
私は日本語として不自然な訳文が気になってしょうがなくて「賢い人が書いてんだろうになんでこんな文ばっかなの何か意図があんのおお」って苛立ちに近い疑問を持ち続けてウン十年、それに答える情報なんて欠片も出会ったことがなかったのに、この本が十二分に答えてくれた。スッキリした通り越して興奮した。 -
三蔵法師など歴史上重要な翻訳を行った翻訳者の紹介から、
現代の翻訳市場をめぐる動きまで考察した一冊。
翻訳は質の高いものができるようになれば競争はそれ程激しくないとのこと。
ただし、翻訳者は個別的に編集者や出版社と結び付いているので
どうやってつながりを見つけるかについて経験年数の壁が存在する。
自宅で翻訳をするなら最低10畳を超えるスペースに、
図書館に引けを取らない辞書など参考資料が必要になるとのこと。
また、翻訳は執筆活動の一種のため
外国語の勉強は言わずもがな、日本語の勉強も必要となる。
主語の訳し方を学ぶには三上章の『象は鼻が長い』などが参考になるらしい。
日本語の書き方は三島由紀夫や谷崎潤一郎、丸谷才一の『文章読本』が参考になる。 -
実務翻訳を志す人は、必ず読んでおいたほうがいい本。かなり厳しいことが書いてあるけど、翻訳者になる前に厳しい現実を知っておいたほうがいいんじゃないかと・・・。