- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784819111195
作品紹介・あらすじ
日露戦争直後、帝政ロシアの圧政下にあったリトアニアで一人のリトアニア人青年が描いた憧れの国、ニッポン。100年の時を経て今、初めて日本人の前に蘇る。その作者の数奇な運命とは…。小学館ノンフィクション大賞受賞の著者による渾身のルポ。
感想・レビュー・書評
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1906年、リトアニアで出版された日本論。著者はステポナス・カイリース。東方の小国ヤポーニアが日露戦争でロシアを破った。青年カイリースが見知らぬ日本を詳細に調べ上げ、自国の言葉で自国の人々に紹介しようとしたことが嬉しい。外国から見た明治期の日本。この頃の日本の発展のスピードをあらためて思った。リトアニアの過酷な歴史のことも僅かながら知ることができた。
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日露戦争の直後、日本に憧れ、日本論を著したリトアニアの青年がいた……
明治の日本人が坂の上の雲を目指したように、彼は坂の上のヤポーニア(日本)を目指したと言う。
リトアニアは、バルト三国の北海に面した一国。
杉原千畝の功績によってその名が知られた国だろうか。
ソ連の崩壊によって、独立を勝ち得たように思っているが、
実は、リトアニアは古い歴史があり、ずっと継続していた国。
ただ、支配者が変わっただけ……
リトアニアの革命は「歌う革命」、民衆の間に長く受け継がれてきた歌が革命を支えたというのも、その表れ。
本書は、ステポナス・カイリース(1879~1964)が1906年に
リトアニア語であらわした「日本論」を紹介しながら、
リトアニアとかつての日本の姿をたどる。
それは、もちろん、現代の日本を浮かび上がらせることで、
私たちが失ったものの大きさに愕然とする。
当然ながら、得たものも大きいのだけれど、
どうして、こんなに喪失感が募るのだろう。
カイリースは小さな島国がその目覚ましいまでの近代化により、大国ロシアを倒したと説く。
ロシア、後にソ連に占領されることになるリトアニア人もまた、
日本の勝利に励まされたのだと言う。
その評価は今も変わらない。
著者がインタビューした元国家主席ヴィータウタス・ランズベルギス氏も勝利の原因を日本人の勤勉さを挙げている。
「リトアニア人も本来は勤勉。ソ連の悪影響を受けてしまったが・・・・」
何だか耳が痛い。私たちも戦後の都合の良い価値観の変遷の中で、いつのまにか勤勉さを失っていはしまいか?
おそらく、私が常日頃感じている閉塞感はここに由来するのかも……
リトアニアは今でこそ、敬虔なキリスト教信者がお良いそうだが、
もともとは自然崇拝の多神教を持っていたと言う。
その名残が今も十字架に掲げられた月や星に見ることができるそうだ。
写真で見るそれは、私がポーランドの東の町ザコバネの墓地で見た十字架とそっくりだった。
ポーランドの旅から帰って俄然旅の意欲が高まっているバルト三国。
その想いをいっそう強くしてくれた一冊。 -
近代日本の猛烈な近代化の様子をバルト3国の一つリトアニアに紹介した、リトアニア人による日本論。
日本の近代化、特に日露戦争での勝利は、大国に抑圧されている小国に、大きな共感と目標を与えた。このことは日本人はあまり気づいていないかもしれないが、我々が思う以上に日露戦争のインパクトは大きかった。幕末から近代初頭にかけての、明治政府の「革命」は、各国の改革に燃える青年たちを熱く刺激し、自国の復権や独立に向けた世界中のうねりへと結びつく。
無論、日本の近代化は全てが良い点とは言えず、まだまだ「先進国」とは言えない面も存在した。それを率直に認め、日本を参考にして自分たちも頑張ろうという意識を醸成したのである。
日本とリトアニアがなぜどのように結びつくか、私も全く知らなかったが、この本で日本の近代化についての周辺知識が深まった。加えて、日本の近代化に興味を持つ者として、新たな視点を獲得できたように思う。 -
本屋で背表紙を見た時は、『坂の上の~』なんて今のNHKのドラマ流行に乗っかろうって魂胆かとか一瞬意地悪く考えてしまったのだけど、続く『ヤポーニア』という言葉に惹かれて手に取り、帯の「100年前にリトアニア青年が書いた日本論」という文を読んで購入決定。
一度も日本を訪れた事のない青年が書いたという日本論もとても面白かったけど、何より今まで殆ど知らなかったリトアニアの歴史や文化について読む事が出来、興味を持てた事がとても良かった。