IR戦略の実務

著者 :
  • 日本能率協会マネジメントセンター
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784820727774

作品紹介・あらすじ

IRの重要性は年々増しているが、個々の上場企業の情報開示の取り組みをみると千差万別、IRのノウハウに乏しいのが現状である。
また、社内からはIRの取り組みが理解されにくく、経営者もIRの必要性は認識しながらも、方法論が見出せずにいることが往々にしてある。
そこで、IRオフィサーとして所属会社のIR優良企業特別賞受賞に貢献し、現在はアナリストとして四半期で60社以上もの企業を取材し、多くの企業のIRの課題に接している筆者が、企業価値向上のためのIRの基本について、より良いあり方を一冊にまとめた。

感想・レビュー・書評

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  • 『IR戦略の実務』

    実践的★★★★★
    わかりやすさ★★★★★

    A;購読動機 
    会社のステージとして今後重要となる範囲であること。また、自身の学びが少ない領域であること。
    ------------
    B;IR目的
    自社株マーケティングである。
    具体的には、市場に対して、
    1)正確かつ継続的に法定情報、ならびに任意情報を提供し、
    2)投資家の期待値醸成し、
    3)時価総額の増加につなげること。
    ------------
    C;学び
    ①IRとは自社株のマーケティング活動
    この一言で、すとんと腹落ちして読了できた。
    ②時価総額が低い2000億円未満の中型、小型株の場合
    アナリストが自社をカバーしてくれない可能性が高い。
    一方で、それがゆえ、諦めるのではなく、プッシュ型でアナリスト向け、機関投資家向けに発信することは重要である。
    ③後発対応
    アナリスト説明会の当日および当日以降の電話による質疑応答。
    ④アナリスト増加に向けて
    アナリスト向けにアポ許諾、個別説明。
    ⑤アナリストの視点
    自社の成長率が業界そして競合よりも高いのか?
    アナリストが推したくなる会社なのか?
    ------------
    D;IRは大きく3つの領域にわかれる。
    ①活動対象の視点。
    ②活動内容の視点。
    ③提供物の観点。
    ――――――――
    〈詳細〉

    社内と社外に区分。
    社内は、定量情報の裏の定性情報の収集、根拠。
    社外は、株主、機関投資家、アナリスト、メディアとの関係づくり。
    ②      
    法定開示適時開示と任意開示に区分。
     そして、伝える方法論は、
    1.記者会見
    2.会見後の電話対応
    3.アナリスト説明会
    4.アポ・個別訪問
    5.海外ロードショー
    ※用語。日本語、英訳一覧。

    3S
      Simple わかりやすさ
      Story 成長理由
      Specific 定量分析
    ------------
    E;機関投資家の視点
    ①自社そして業界の成長性と根拠。
    ②自社の成長性が、業界ならびに競合他社の成長性よりも高いこと。
    ③業界での市場シェアが高いこと。

     

  • 戦略的要素はないものの、実務的要素は広く取り上げられており、有用。

  • ◯情報開示には4つの区分がある
    情報開示には、法定開示、適時開示、IR、PR(パブリック・リレーションズ)の4つの区分。

    法定開示とは、「金融商品取引法と会社法により義務付けられている情報開示」で、有価証券届出書や有価証券報告書などが開示例です。
    適時開示とは、「金融商品取引所が義務付けている情報開示」で、決算短信や業績予想の修正リリースなどが開示例です。
    PRは「任意で開示する各ステークホルダーに有用な企業情報」で、いわゆる広報のことです。
    IRは、「任意で開示する投資判断に有用な企業情報」です。開示例としては、決算説明会資料やアニュアルレポートなどがあります。これらは任意開示のもので、法律や証券取引所の規則で義務付けられたものではありません。

    実務上のIR活動は、法定開示と適時開示を含めて対応しするし、IRとPRも内容の重複がある。

    ◯IRに関するステークホルダー
    ・アナリスト(セルサイドアナリスト/証券会社で働くアナリスト、バイサイドアナリスト/運用会社で働くアナリスト)
    ・機関投資家
    ・証券会社の営業部門
    ・個人投資家
    ・格付会社
    ・債権者
    ・経済記者
    ・IR支援会社
    ・官公庁の調査統計部門
    ・監督機関(金融庁、証券取引所、証券取引等監視委員会)

    ◯IRの担当部署
    ・経営陣
    ・経営企画部門
    ・財務経理部門
    ・総務部門
    ・専属部署

    ◯IRに必要な人的ネットワーク
    ・経営陣や各事業部門とのネットワーク
    ・アナリスト、投資家とのネットワーク
    ・経済メディアとのネットワーク
    ・IR担当者同士のネットワーク
    ・IR支援会社とのネットワーク

    ◯投資家・アナリストの評価軸
    ・業績の前年同期比での評価
    ・比較対象との相対評価
    ・先行きに対する評価
    ・株価水準に対する評価
    ・株主還元策に対する評価

    ◯セルサイドアナリストにカバーされやすい会社の条件
    ・市場シェアが高いこと
    ・市場規模を把握できていること
    ・成長ストーリーを語れること
    ・IR取材のアクセスが容易であること
    ・決算の増減要因分析ができていること
    ・必要な数値データを迅速開示できること
    ・事業構造を説明できること
    ・歴史的経緯を説明できること

    ◯コーポレートガバナンス・コード~上場企業が守るべき企業統治の行動規範~
    1. 取締役会の機能発揮
    ■プライム市場上場企業において、独立社外取締役を3分の1以上選任(必要な場合には、過半数の選任の検討を慫慂)
    ■指名委員会・報酬委員会の設置(プライム市場上場企業は、独立社外取締役を委員会の過半数選任)
    ■経営戦略に照らして取締役会が備えるべきスキル(知識・経験・能力)と、各取締役のスキルとの対応関係の公表
    ■他社での経営経験を有する経営人材の独立社外取締役への選任
    2. 企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保
    ■管理職における多様性の確保(女性・外国人・中途採用者の登用)についての考え方と測定可能な自主目標の設定
    ■多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況とあわせて公表
    3. サステナビリティ(持続可能性)を巡る課題への取組み
    ■プライム市場上場企業において、TCFD 又はそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量を充実
    ■サステナビリティについて基本的な方針を策定し自社の取組みを開示
    4.上記以外の主な課題
    ■プライム市場に上場する「子会社」において、独立社外取締役を過半数選任又は利益相反管理のための委員会の設置
    ■プライム市場上場企業において、議決権電子行使プラットフォーム利用と英文開示の促進

    コーポレートガバナンス・コードには、法的な強制力や罰則はないが、イギリスが採用している「従うか、説明せよ(comply or explain)」という原則に基づいている。
    従わない場合には理由を説明する責任が発生するという考え方。

    ◯プレスリリースとIRの違い
    PR:新製品の性能、価格、販売時期、販売ルート等→商品の内容
    IR:新製品の単価と目標販売台数(初年度、三年後)、業績貢献時期など→業績インパクト

  • いちよしのリサーチの中の人が著者。らしくアナリストの行動様式(質問の切り口とか)からの説明の側面がおもしろい。基本的なこと、規制の概観も多い用語辞典的な側面もあり、入門には手軽。

  • 評価は5と1のミックスで3、である。

    5の理由:IRの新任者が、IRオフィサーとして「開示にはどういった種類があるか」「ステークホルダーとは一体誰か」といったことを非常に丁寧に体系立てて説明されている。教科書的な位置づけである。

    1の理由:あまりにもセルサイドに迎合させすぎ。何も知らない新任者はそんなものなのかと信じてしまいます。
    まるで「発行体は商品なんだから、セルサイドの都合がいいように立ち回りなさい」と言わんばかり。
    第7章のケースなどはややミスリード感が強いと感じるのは私だけだろうか。

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著者プロフィール

日本ガバナンス・企業価値研究所の所長・経済アナリスト。iU 情報経営イノベーション大学客員教授。
経営士。元経済産業省職員。早稲田大学ファイナンスMBA。立命館大学政策科学部卒。株式アナリスト、広報・IR担当双方で所属会社受賞経験を持つ。経済ニュースアプリ・NewsPicksでは8万人以上のフォロワー。
著書は『IR戦略の実務』(日本能率協会マネジメントセンター)他計5作品。主なテレビ出演はテレビ東京のワールドビジネスサテライト等。主な講演は、日経メディアマーケティング、東洋経済新報社、早稲田大学WASEDA NEO等。

「2021年 『企業価値評価の教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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