ファーマゲドン 安い肉の本当のコスト

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822250744

感想・レビュー・書評

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  • # いつも口にし、体へ運ぶものの現状と問題、そして今後を知れた一冊

    ## 面白かったところ

    - 食肉に関わる家畜の現状が、特に工業型農業で牧畜されるものはリスクが有るということを学べた点

    - 食肉関わらず工業型農業はその地域ないしは、地球の生態系に影響を与えるということを知れた点

    - 「アグリビジネス」という言葉を盾に、強引な半植民地化が行われていることを知れた点

    ## 微妙だったところ

    発売日が2015年で、少し古いこと

    ## 感想

    効率で考えれば工業というテクノロジーは生産性を伸ばし、より多くの製品を世界に届ける良い手法である。

    その反面、強力なウィルスや感染症培養の温床になっていることも我々は向き合っていかねばならない。

    工業型農業で割を食っているのは我々人間やそこに住まう家畜だけではなく、農場周りの川に生息する水や家畜の餌になる自然の動物たちである。

    人間に於いても人口稠密な都市部では、流行病が勃発することはかの古の時代から語り継がれてきた事実であり、動物に限った話ではない。

    そのような劣悪な環境で生育した食用肉はどんな仕上がりになるか、想像に容易い。

    だからこそできる限り我々も食べるものを見る必要があるし、カネで解決しようとしてはいけない。

    この本を読んで、また一歩農業に興味を持つことができた。

    #読書 #読書好きな人と繋がりたい #読書記録 #読書好き #読書日記 #読書部 #読書の時間 #読書タイム #読書時間 #読了本 #読了記録 #本スタグラム #本好きな人と繋がりたい #本好き #本好きさんと繋がりたい

  • 脳死状態にした鶏を透明のパックに入れて吊り下げ、チューブに
    よって栄養を送り込み成長させる。この鶏には羽もない。

    「どうせ食肉として殺されるのだから、生きるのには最低限の能力
    だけあればいいだろう」との発想から生まれたようだ。

    効率よく食肉を生産する方法として提案された未来型養鶏工場(?)
    の画像を目にしたのは数年前だ。気持ちのいいものではなかった。

    これはあくまで提案の域を出ていないようだが、そう遠くはない将来、
    現実になるのではないかと思われる。

    食肉、魚、野菜、果物、乳製品。私たちが口にする食べ物は、一体
    どのように育てられているのだろうか。産地や加工地のことは気に
    しても、育成の過程まで気にかけてはいない。

    本書は多くの国で行われている工場式農場の現状や環境に及ぼす影響
    などを詳述し、ではどうすればいいのかの提案をしている。

    農作物に関しては、やっぱり出たか遺伝子組み換え作物なのである。
    日本国内では本格的な商業栽培はされていないが、海外から輸入さ
    れる牛肉や豚肉が、遺伝子組み換え作物を餌にして飼育されている
    かどうか、確かめようがない。きっと…いや、絶対餌になっている
    ると思うわ。特にアメリカ産の食肉に関しては。

    しかも効率よく飼育する為に抗生物質や成長ホルモンをガンガン投与
    されている。

    それもこれも、大量生産・大量消費社会が招いたこと。将来的には
    そのツケが人間に回って来るはずなのだよね。工場式農場だって、
    食糧不足を補う為に始められたはずなのに、世界では今でも多くの
    人が飢饉に瀕している地域がある。

    私は研究者も何でもないので、広々とした牧草地で育った牛と、狭い
    檻の中で育った牛の肉に、どれだけの違いがあるのか分からない。

    分からないけれど、より自然に近い状態で愛情をこめて育てられた
    食肉を口にしたいと思うし、卵だって、乳製品だって、飼育方法
    が明記されていれば参考にしたいと思う。

    飼育する農場の方から見れば、消費者のわがままなのだろうけれどね。

    ただ、「より多く」を求めて行くと、冒頭に記した未来型養鶏だって
    当然になるだろうし、クローン技術の導入だってありえるだろう。
    農作物は害虫や病気に強い遺伝子組み換え作物が主流となるだろう。

    そうして、昔ながらの農場風景は姿を消し、肉も野菜も巨大な工場内
    で清算されるだけになったら?

    「沈黙の春」ならぬ「沈黙の春夏秋冬」がやって来るのではないか。

    本書では工場式農場からの脱却を目指す試みや、イギリスでの飼育方法
    表示販売、家畜の飼育方法を規制するEUの取り組みなども記されてお
    り勉強になった。

    惜しむらくは、本文中に出て来る参考文献の日本語訳があるのかが
    明記されていないのが難点。いくつか読んでみたいと感じた作品が
    あったのにな。

  • 日経の書評を目にして図書館で予約したのが4月。ようやく順番が回ってきた。

    副題「安い肉の本当のコスト」とあるように、効率的な生産を目指した工業型畜産の側面を明らかにして、
    その負荷によって地球の生態系が危機に瀕していると明らかにする。

    世界の人口増、人々の肉食化で増えた畜肉の需要を満たすために、世界中に広まる工業型畜産。

    伝統的な畜産システムとは異なり、大量の穀物や大豆が家畜に投与され、今では全世界で生産される穀物の1/3が餌になっているとは、こりゃたまげた。

    畜産での大量な需要によって、穀物や大豆の栽培も集約化され、単品栽培の大規模農場では、化学物質の影響で植物生物の数も減少している。

    化学物質に弱い蜂の数も減少しており、蜂が担ってきた植物の受粉も危機に瀕する。

    という下りで、先日見た映画「夏をゆく人々」を思い出した。
    伝統的な養蜂業をを営む父親が、新しい農薬を使用した近所の農家に詰め寄るシーン。
    文明への危機感という点では、よく重なる。

    中国経済の減速、年間販売1000万台を目指したVWのつまづきが取り沙汰される今、
    人類はどこまで成長や効率性を追求するのか議論が激しくなると思う。

  •  先日、P・リンベリー 氏らによる「ファーマゲドン 安い肉の本当のコスト」を読み終えました。
     レイチェル・カーソンの『沈黙の春』は、以前から読んでおこうと思っていた本なのですが、そちらより先に本書を手にとってみました。
     今、世界的に拡大している「農業・畜産・漁業の工業化」がもたらす地球規模の影響について、著者たちのリアリティ溢れる警鐘が興味を惹きます。先に読んだ「里山資本主義」で著者の藻谷浩介氏が抱いている問題意識とシンクロして、危機の切迫感や対応の緊急性・必要性等、強く印象付けられました。

  • 工場のような家畜飼育

    ファーム 農業 がもたらすハルマゲドン

    食料植民地主義

    バタリーケージ、クレート、ソウ・ストール

    ブロイラー用のケージ、A4用紙1枚
    子牛用の狭い檻、やわらかく白い子牛肉、
    妊娠した雌豚用の狭い檻

著者プロフィール

家畜の福祉向上を牽引する国際的な慈善団体、コンパッション・イン・ワールド・ファーミング(Compassion in World Farming、世界の家畜に思いやりを)の最高経営責任者。工業化された農業の影響について傑出した意見を述べてきた。彼のリーダーシップのもと、コンパッションは、英紙オブザーバーが主催する「オブザーバー・エシカル・アワード・フォー・キャンぺーナー・オブ・ザ・イヤー(最もすぐれた倫理的活動をした団体を讚える賞)」や、BBCRadio4の「フード・アンド・ファーミング・アワーズ・フォー・ベスト・キャンペーナー・アンド・エデュケーター(食料・農業分野のすぐれた活動家と教育者を讚える賞)」など、数々の賞を受賞した。生涯を通じて野生生物を愛しており、妻と養子の息子とハンプシャーの田舎に暮らしている。

「2015年 『ファーマゲドン 安い肉の本当のコスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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