- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784822283223
作品紹介・あらすじ
ペレルマンによる解決は、リーマン〜ポアンカレ〜ミルナー〜スメール〜サーストン〜ハミルトンと連綿と続く数学研究の流れのなせる業だった。2006年8月、フィールズ賞受賞を辞退したペレルマンを、2003年4月のMITでの歴史的講演から追ってきた数学者オシアが描くストーリー。
感想・レビュー・書評
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ポアンカレ好きを加速させてくれた本。
難解なポアンカレ予想を、なんとなく掴めた気分にもなってくる。
数学者は芸術家に似ている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
トポロジーはちゃんと勉強したい。
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この手の本だと、「そもそも何が問題になっているのか」を説明するのが
大変だったりする(その意味ではフェルマーの最終定理は異様にわかりやすい)のだけど、
地球の形の想像から始まって、それを3次元に拡張する、と言う形で、
「そもそもポアンカレ予想とはどういう問題か」ということの説明は
かなりわかりやすい。
そこからペレルマンが証明するまでの数学者の奮闘の歴史が
語られるのだけど、さすがにそこはちょっと辛かった。理論がわからないことも
あるのだけど、人がたくさん出てくるのよね。この辺もうちょっと整理されてると
わかりやすかったかも。
読むのは大変だけど、わからないところは適当に流し読みして分かった気に
なるためにはいい本かも。 -
ポアンカレ予想とは、「多様体の基本郡が単位元であれば、その多様体は3次元球面と同相である」という命題である。数学を専攻しなかった人の為にいくつかの専門用語の解説をする。・多様体 局所的にはユークリッド空間と同相である連続した図形。球面や、平面などが代表例。・多様体の基本郡が単位元 その多様体の任意のループが一点に収束すること。・ループ 多様体上の一点から出発し、そこに帰ってくる曲線のこと。・ループが収束 多様体のループをヒモだと考えたとき、このヒモをどこにも引っかかることなしに引き寄せられること。球上の任意のループは、引っかかることなしに引き寄せられるので収束する。2次元トーラス(ドーナツの表面)は、真ん中の穴を周回するようなループが存在するため、ループは収束しない。・3次元球面 二つの向かい合う球面(2次元球面、普通の球面)の対応しあう点を同一とみなすことで造られる多様体。この内側に入ると、出てこれなくなる。片一方の球の中に入っているところを想像してみよう。その後その球から出るために、球面を突破する。と、もう一方の球の中に入ってしまう。この多様体は、コンパクトな3次元多様体の中ではもっとも単純である。 これでポアンカレ予想の命題自体が何を意味するかわかったと思うが、一応わかりやすく書き直すと「ループが収束する3次元多様体は、必ず3次元球面になる」ということ。20世紀最高の数学者の一人であるポアンカレが残した予想であるだけに、単純ながらも非常に難解である。どうやって解いたらいいのかの糸口さえ見つかりそうもない。事実、100年の永きにわたり、多くの数学者から挑戦をはじき返してきた。もしかすると、この問題はゲーデルの不完全性定理の落し穴にはまっていて証明不能であるのではないかとの憶測も生み出した。 この難問を解いたのがペレルマンというアマチュア数学者である。アマチュアといっても、彼は若いことから超一流の数学者として名をはせ、その後突然引退した。そしてまた突然、この難問の解をネット上に公開し数学会を激震させた。 本書はペレルマンの論文の解説書ではない。この問題がペレルマンの論文により終わりを告げるまでの数学の経緯を綴った歴史書である。 ユークリッドに端を発する平行線公理(ある点を通ってある直線と交わらない直線は唯ひとつだけ存在する)。それを定理として扱おうとした数学者の数々。結局は公理であり、これを否定した幾何は矛盾なく創れることにいち早く気づいたガウス、ボヤイ。これを定式化したリーマン。これとはまったく別の場所で、全く同じことに気づいたポアンカレ。このリーマン幾何学の手法では解決不可能なことを回避するために、ポアンカレによって創始された位相幾何学。その位相幾何学の中の難問中の難問であるポアンカレ予想を位相幾何の手法を使うことなく独創的に解いたペレルマン。 この数学の歴史を知りたい人には、実に興味深い本であると思う。一級品といってよい。しかし残念ながら数学を専攻したことがない人には、難しすぎる。位相幾何を得意としていた私にもいくつかわからない部分があった。もし、読まれるのであれば、そのあたりを覚悟して読んでください。
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歴史に登場する人たちは実にドラマチックな生涯を歩んで、中にはそうでない人もいるが、華々しく散ってゆく。それこそ一年がかりの連続ドラマができるほどです。
数学の系譜の中にも同じように様々なドラマが繰り広げられている。といっても、剣や銃で戦うのは稀ですが。(中には恋人を取り合って決闘で散った、なんて人もいるけど…)
この「ポアンカレ予想を解いた数学者」ではポアンカレ予想という数学界ではかなり有名な定理(当時は証明されてなかったので予想)を軸に古代ギリシャから現代までの数学や数学者の系譜を著しています。
ポアンカレ予想は100年ほど前にポアンカレという人が提唱した課題で、100年の間誰も解くことができずについには他の未解決問題6つとともに100万円の懸賞金が掛けられるようになりました。
(詳細は、一松 信 他「数学7つの未解決問題」森北出版株式会社(2002)等を参照。この本は結構難しめに書いてあるので注意)
タイトルにある通り、2003年に完全に解かれるわけですが。それまでに様々なドラマが繰り広げられます。
例えば、・地球は本当に丸いのか・戦争に巻き込まれる数学者たち・予想を解いたペレルマンのフィールズ賞の辞退
センセーショナルに書き立てられる事柄の裏に人々の生き様を見ることができます。
「私が書くのを楽しんだのと同じくらい、読者にもこの本を読むことを楽しんでほしい。」というのは、まえがきに書かれた著者の言葉です。数学が中心の本ですがあまり分からないことに拘らず、大河小説を読む気分で読んでほしいと思うのです。
(ラーニング・アドバイザー/ IIJIMA)
▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?bibid=1302048 -
ドラマ仕立て過ぎてなんか読んでいて具合が悪くなりそうだった。
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↓貸出状況確認はこちら↓
https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00127094 -
ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学の違いが分かった。小中学校で習うのはユークリッド幾何学なんだね。第5公準(平行線公準)と呼ばれるものから、端を発して、よくこんなことを考え付くもんだなと思う。もしボクが、若いときに読んでも非ユークリッドの考え方は受け入れられなかっただろうと思う。ポアンカレ予想もなんとなくでしか分からないが、宇宙の形について関係しているのは面白い。なんとなくでも、分かるだけの数学の基礎が自分にはあってラッキーだった。読後、ちょっと得した感じ。でも学問っていろんな形でつながってくれるから時々、「はっ」とするなあ。