人はなぜ物を欲しがるのか:私たちを支配する「所有」という概念

  • 白揚社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784826902441

作品紹介・あらすじ

手に入れたい、独占したい、失いたくない……
所有という行為と「自分のものにしたい」という所有欲は、人間が生きていくうえで必ずかかわってくる。

そもそも所有という行為は、進化の中でどのように生じたのか?
個人の所有欲は、社会のあり方にどんな影響を与えたのか?
そして、私たちがいくら物を手に入れても幸福になれないのはなぜなのか?

心理学、生物学、社会学、行動経済学など多様な分野の知見をもとに、私たちの人生を支配する「所有」というものの正体を探る。

◆本書に対する推薦の言葉◆

自分の直感が果たして正しいのか、ページを繰るたびに試される。
――デイヴィッド・イーグルマン(スタンフォード大学神経科学者、『あなたの知らない脳』著者)

面白く、知的で、人生の中心となるテーマを論じている。
――ポール・ブルーム(イェール大学心理学教授、『反共感論』著者)

流麗な文体、見事な論理。ぜひとも所有すべき一冊。
――ダニエル・ギルバート(ハーバード大学心理学教授、『明日の幸せを科学する』著者)

感想・レビュー・書評

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  • 本書の結論(要約の要約)
    人はどこまで所有物を増やしても満たされることはない。そして心理的に他人と自分を比べ過大評価、あるいは過小評価しがちであり、その評価は不正確だ。だから完全を求めてあがき続けるのは馬鹿らしい。必要なのはもっと多くのモノではなく、いま手にしているモノの価値に気づけるだけの十分な時間である。

    内容
    人体、価値観、アイディア、情報、etc…。所有出来るものは多々あり、それらを豊富な事例をもとに語ることで「所有」というものの本質に迫っていくのが本書の主題である。
    つきつめれば「所有」とは慣習の一種に過ぎず、つまりは心のあり様なのだと著者は語る。ではその起源はどこにあるのか。

    所有の起源についての学説は大きく二つに分けられる。進化論に基づいた説明として、所有は競争本能の遺産で、資源を自分だけが独占できれば生存と繁殖に有利だという説。これは動物界でもよく見られる「占有」である。
    対して「所有」は共同体が定住し、政治体制や法制度が発展することで生じる。占有は動物界によく見られるが、所有は人間社会でしか見られないという。

    例えばバンクシーの絵は誰のものか、絵を描いたアーティストか?土地所有者である企業か?絵を見つけた人か?あるいは作品を保護する労力を割いた画廊なのか?社会が発展することでその概念は変わっていく。

    資金や資源が不足する非常時に人は利己的になりそうだが、実際には逆境は人間の最良の部分を引き出すものらしい。つまり「分け合う」という選択肢に至るのだ。それはグループで一団となるのが最善の解決策だからであり、所有が共同体の中で発展した概念だからこそだろう。では「なぜ人は必要以上に欲しがるのか」。

    それは生物の進化に由来する。生存競争は繁殖を成功させるため自分の遺伝子をいかに子孫に伝えるかを目的とする。つがい候補として自分がいかに適切かを相手に伝えるため何らかの特徴を進化させるという目的に。例えばクジャクもそうだ。人間に置き換えるならば所有物によって成功者だとシグナルを送る行為がまさにそれ。だから人は必要以上にモノを増やす。

    しかし、人生の満足度と幸福度に関する研究によって、ほどほどの年収に達したあとは、所有物が増えてもそれ以上は幸せにならないことがわかっている。モノ消費であれコト消費であれ、自分は人と違うことを必死で示そうと、ステータスを生存のシグナルとして伝えようとしても一定のラインで幸福度は高止まりする。

    これらのことから、いかに人間の論理的思考はあてにならないかがわかる。ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』では、意思決定について、早くて直感的な試行経路が「システム1」、論理的思考と推論によって時間をかけて意思決定に至る「システム2」という分類をしている。そして一般的には情緒的な「システム1」の「勘」に頼ることが多いとされている。

    欲しがることは、必要とすることとは違う。欲しがることは「所有する可能性があるもの」から心理的充足感を得ようとする行為だ。だが、意思決定においては、「失う可能性があるもの」が最大の影響力を発揮する。「すでに自分が所有しているモノを失う」場合はさらに影響力は強大だ。なぜなら所有物は所有者のステータスであり、その人を物語るものだから。

    人間が非合理な行動をとるのは、所有物を自己と同一視してしまうからだ。しかしそこには矛盾がある。人は自らの所有物を課題評価し、手放すまいとする。だが同時に大半の所有物にすぐ慣れて、さらに多くのモノの獲得に乗り出す。自己をよく見せるために。そこにはモノを蓄えるほど満足感が減っていくというパラドックスが生じる。

    人は他人を課題評価、あるいは過小評価しがちで、その評価は不正確だ。それは他者と相対比較することで価値を決め、何かを求める行為に他ならない。完全を求めてあがき続けるのは馬鹿らしい。
    必要なのはもっと多くのモノではなく、いま手にしているモノの価値に気づけるだけの十分な時間だ。

  • 物を所有すること自体に過剰に意識を向ける。誰かに買わされ続ける人生はろくでもないなと思った。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/571475

  •  

  • 割とタイトル詐欺。微妙。

  • なんかあんまりピンと来ないので途中であきらめ。

  • 私の足は誰のもの?バンクシーの絵は?
    所有権と心理学。

  • 人はなぜ物を欲しがるのか:私たちを支配する「所有」という概念。ブルース・フッド先生の著書。所有欲や支配欲から解放されれば人生をきっと楽になる。多くの人が所有欲や支配欲から解放されれば社会はずっとよくなる。人間同士のいざこややいがみ合いも人間関係トラブルも所有欲や支配欲からくるものが多い。国同士のいざこややいがみ合いもトラブルも所有欲や支配欲からくるものが多い。所有欲や支配欲をなくすための薬や脳外科手術が完成すれば多くの人が幸せになれるのかもと妄想してしまう。

  • 「私たちは、所有という悪魔に取り憑かれている」

    「どうしたらもっと獲得できるかではなく、どうしたらいま手にしているもので幸せになれるか」

    「必要なのはもっと多くのモノではなく、いま手にしているものの価値にきづけるだけの十分な時間」

    所有について心理学や法学、歴史学、社会学、行動経済学、しんか生物学、文化人類学、哲学などなど
    様々な幅広い分野で検討される
    様々な例が載っていてわかりやすいけれども、なかなかな量、、、(^-^;

    「所有の追求が幸福に結びつかない」

    全ては”足るを知る”という事が、自分にも地球にも優しいと言う事なのかも知れない
    今こそ1人1人が考えなくてはならない局面に来ているのだと思う

  • https://cool.obirin.ac.jp/opac/volume/913509

    ひなたやまにもあります

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著者プロフィール

ブルース・フッド
カナダ生まれ。ブリストル大学心理科学部発達心理学教授。
認知発達に関する研究で数々の賞を受賞。アメリカ科学的心理学会、イギリス心理学会および王立研究所のフェロー。テレビやラジオにもたびたび登場している。
著書に『スーパーセンス』(インターシフト)がある。

「2022年 『人はなぜ物を欲しがるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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