危機第三幕―次はアメリカ、そして日本が震源になる!

著者 :
  • ビジネス社
5.00
  • (1)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 8
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784828416052

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「最悪期は脱した」、「二番底は来ない」というセリフが聞こえ始めているが、「危機は決して終わっていない。本当の危機である"第三幕"はこれから起こる。」というのが著者である倉都氏の主張。

    米国から始まった金融危機を"第一幕"、PIIGSをはじめとする欧州で起こった財政・債務問題を"第二幕"とする。その危機対応過程で蓄積したマグマが噴き出す時がくる。それが"第三幕"、米欧日という先進国が同時に債務問題に苦しむ時代である。

    昨今の危機を受けて各国がとった対応は、決して今回の危機を引き起こした病巣を取り除いたわけではなく、緊急措置として①民間の債務を政府が肩代わり、②大幅な量的緩和による金利引き下げ、を行うことでひとまず混乱を抑えたに過ぎない。
    その後に残ったのは、巨額の財政債務(中央銀行に債務を抱えさせることで財政債務からは外している例もあるが)と、通貨の下落、そしてだぶついた資金が新興国に流れ込む構図である。
    そして、投資が伸びず雇用も回復しない先進国と、資本の過剰流入に対して警戒し始める新興国という対立構造ができあがった。

    今後本当に恐ろしいのは、金利の上昇である。行き場を失ったリスクマネーが国債に流れ込むことで長期金利は下落しているが、その国債の信用の裏付けとなっている国家財政にヒビが入った時、あるいは金融機関同士の相互不信が進んだ時、金利が上昇する。

    著者は国家のデフォルトやハイパーインフレのような過激な現象を唱えることで危機感をあおっているわけではない。より現実的な問題としての金利上昇により、経済や家計が被る直接的な被害を警告しているのだ。

    そこで著者は対応策として、①金利上昇による資本コストのヘッジ、②米の消費回復への幻想を断ち、新興国の持続的な成長を過信しない、③預金や融資といった金融機関との取引の見直し、の3点を提示している。

    豊富な国際金融畑での業務経験と、圧倒的な金融史の研究に裏付けられた著者の状況分析と今後の見通しは、世界経済を鳥瞰し自らの取るべき行動を考える上で非常に参考になった。

全1件中 1 - 1件を表示

倉都康行の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×