絵本・物語るよろこび (福武文庫 Jま 601)

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  • ベネッセコーポレーション
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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784828831619

感想・レビュー・書評

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  • 福音館書店の編集者として、多くの名作とされる絵本の刊行に努めてきた著者の絵本にかんする文章を収録しています。

    第二章「絵本のおもしろさ」では、著者がすすめる7作品の解説がなされています。また第三章「絵本に生きる・人と表現」では、著者が出会った絵本作家や画家たちの人物像が記されています。とりあげられているのは茂田井武、寺村輝夫、土方久功、堀内誠一、中谷千代子、吉田遠志、林明子で、とりわけこれら作家たちの創作現場に著者が編集者として立ち会ったさいの記憶がつづられており、興味深く読みました。

  • 福音館書店の社長にして、絵本編集者の第一人者であった著者の絵本評論集。わかりやすく書いてあるので、読みやすいことは確か。ただし、この人の本にしてもなお、感覚的、主観的な評論が抜け切らないことに私はもう一つ不満が残るのだが。

  • 2009/12/8購入

  • P11 心に残ることば
    不思議なことに、これらの絵本のことを思い出すたびに、それを語り聞かせてくれた母の存在をはっきりと意識します。その母はもうこの世にはおりませんが、今も絵本の言葉と絵とともに私に語りかけ、行きつづけているようにおもえます。〜絵本とその読み手の存在が、どうしこのうようにはっきりと心に残り生きつづけるのでしょうか?あきることなく繰り返し読んでもらったせもありましょう。しかし繰り返し読み、読んでもらえば心に残るというものでもないようです。それなら小学校の一年生の国語教科書など、もっとはっきりと覚えていてもよいではありませんか。〜私はそこに言葉と絵本のもつ不思議な力を感じます。
    言葉が心に残るには、一つのはっきりした裏づけ、条件があるようです。その条件はこうです。心を開き、耳をかたむけ、喜びと楽しみを伴って一人の人から聞くことができたときにのみ、その言葉は心に残ります。そしてその場合、言葉といっしょに、その言葉を語った人の存在もまた、心に残るのです。

    大人が子どもに読む本
    言葉は、喜びと楽しみの中で聞く(読むのではありません)ときにのみ心に残ります。教えたり、役に立ったり、ためになったりする教科書は、学校教育上は必要なものであっても必ずしも子どもの喜びと楽しみをもたらすものではありません。役に立つが心には残らないのです。絵本は訳に立つ、ためになる、。といった何かを教えるためのものではありません。絵本は教材でもなければ、まして幼児用の教科書ではありません。また絵本は字を教えたり、読書を教えたりする本でもありません。そんな目的のために絵本を利用すれば、絵本の価値は失われてしまうでしょう。
    絵本は、子どもに読ませる本ではありません。絵本は大人が子どもに読んでやる「本」です。絵本は子どもにとって喜びと楽しみそのものでなければなりません。そのためには、お父さんお母さんが子どもに絵本をよんでやることが何より大切です。その時、絵本は親と子をしっかりつなぐ心の広場となるでしょう。

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著者プロフィール

松居 直(まつい・ただし):1926-2022年。京都生まれ。同志社大学卒業とともに福音館書店に入社。絵本の出版・編集に従事し、1956年に「こどものとも」を創刊。石井桃子、瀬田貞二、松岡享子などと交流を深めるとともに、加古里子、赤羽末吉、堀内誠一、長新太、瀬川康男、安野光雅、中川李枝子ら多くの絵本作家を発掘。『おおきなかぶ』『ぐりとぐら』『だるまちゃんとてんぐちゃん』など、今なお愛される絵本が生まれた。自身も絵本の文や再話を手がけ、海外の優れた絵本も紹介。日本の絵本文化の発展に大きく貢献した。1993年出版界で初めてモービル児童文化賞を受賞。1996年日本児童文芸家協会より「児童文化功労者」の表彰を受ける。著書に『私のことば体験』(福音館書店)、『絵本は心のへその緒』(ブックスタート)、『松居直のすすめる50の絵本』(教文館)など多数。

「2023年 『絵本とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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