- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784833418829
作品紹介・あらすじ
「資本鎖国主義」vs「株主至上主義」、買収をめぐる論議にこの一冊が決着をつける。
感想・レビュー・書評
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M&Aが国を富ませるという理屈をやりとりしてる本。岩井先生の会社論の要点が、ほどよく散りばめられており、なるほど感が高かった。
以下は、その要点。
<モノとしての会社>
・モノ=商品としてみた場合の株式固有の性質は、「議決権」が含まれている点。
・総会議決権の中で最も重要なのは、取締役の選任、解任の権利。
・敵対的買収は、この支配権を巡る争い。だから防衛策も、授権資本制度から派生する仕組みを活かして、敵対敵対買収者の持株比率を低下させるという点は共通。
・新株発行の決定は取締役会決議事項。ただし、発行可能株式総数の範囲で。
・誰にどれだけ割り当てるかも原則として取締役会が決めることができる。「割当自由の原則」。ただし、特定の株主が、「著しく不公正な方法」で経済的な損害を被らないように、新株発行時の第三者割当に対する差し止め請求の規定を設けている。
・例外的に、経営支配権の維持・確保を主要な目的とする発行も不公正発行に該当しないと解せるケース
ニッポン放送事件高裁決定における”四類型”
①・・・ただ株価をつり上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的で・・・
②・・・いわゆる焦土化経営を行う目的で・・・
③・・・当該会社の資産を当該買収者やそのグループ会社等の債務の担保や弁済原資として流用する予定で・・・
④・・・当該会社の事業に当面関係しない不動産、有価証券など高額資産等を売却等処分させ、その処分利益をもって一時的な高配当をさせるかあるいは一時的高配当による株価の急上昇の機会を狙って株式の高価売り抜けをする目的で・・・
<ヒトとしての会社>
・株式会社の存在意義は、法人としての会社を企業資産の所有者や契約関係の主体に仕立て上げることによって、株主を所有や契約に伴う責任から解放してあげることにある
・モノであるという意味では道端の石ころと変わらない会社が、なぜ法律上のヒトとして扱われるかといえば、それはまさに付加価値を生み出し、国富を増大させる存在であるから
・経営者の仕事とは、会社の付加価値を大きくするために働くこと。だからこそ会社法においても、経営者は、株主に対してではなく、法人としての会社に対して善管注意義務、忠実義務を負う。利益相反行為を禁止する条項も整備されている。
・もともと経営者とは、株主の代理と組織の代表の二つの役割の間のバランスをとりながら会社の付加価値を高めていくという(難しい)仕事
・仮に優秀な経営者が生まれて成功を収めたとしても、変化が激しい時代の中では成功体験がいずれ負債になる。その時、経営者のクビを切る仕組みがあるか。
・会社買収にあたりできる限りよい経営者が選ばれるように、特別にルールを用意する必要がある。(できる限りよい株主が買うようにすべきではないか)
・会社組織を作り上げている人的ネットワークは、市場における契約関係とは性質をまったく異にしている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
・ライブドア日本放送と王子製紙北越を通して、日本の資本市場は変質
・株主総会議決権の中で一番重要なのは取締役の選任・解任の権利
・アメリカの会社のほうがはるかに取締役会の権限が強い。ほとんどは役会で決定可能
・大恐慌あたりからアメリカの格差は縮小するも、レーガン・サッチャーで拡大
・会社は、人間と同様の権利が法律で特別に認められている
・会社法において、経営者は株主に対してではなく、法人としての会社に対して善管注意義務・忠実義務を負う
・現在の制度:株主は高く売り抜ければよい。良い経営者を選ぶインセンティブがない
・委任状や書面投票を含め、株主総会で議決権を行使するのは六割~八割
・株式会社は二階建て。株主が会社をモノとして所有。会社は法律上のヒトとして会社の物的・人的資産を所有 -
会社とは何か、とい事から始まり
M&Aに関するルールを提言する。
もう少し勉強した上で読めば面白いと思う。-
取っつきにくそうだけど、興味ある!
これからの時代、企業買収もどんどん身近な問題になってくるんだろうね。取っつきにくそうだけど、興味ある!
これからの時代、企業買収もどんどん身近な問題になってくるんだろうね。2010/12/22
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M&A目的は、会社の生産性を挙げることというテーゼに沿って、新しいM&A規制を提案する本。M&Aルールなんて歴史の産物だから、頭で考えてこうやったら良いっていう制度を作っても、実際うまく動くかどうかはわからないと思うけどね。
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2009年3月21日購入
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おもしろくない
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もやもやがすっきりした。
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岩井克人の新しい本。「良い会社買収」を「良い経営者を選ぶこと」と定義し、「良い経営者」とは株主のみならず社会全体に良い影響を及ぼしていく経営者という観点から、M&Aの制度づくりを論じている。前提として、著者の「会社はだれのものか」「会社はこれからどうなるのか」を下敷きとしている印象があり、「会社は株主だけのものではない」という点からスタートしているようだ。
ハードカバーで分厚いものの、論点は明確。恥ずかしながら会社法や証取法などの知識が絶無なので、「ほぉ、そうなのか。そうかもね」程度の理解だったが、今後勉強を積んで読み返してみると示唆が多いのかもしれない。第5章だけを読んでも十分。あと、はじめは「国富論」という名前から右寄りな匂いを感じたものの、筆者は企業の社会全体への貢献という意味で用いているようである。