- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784833420570
作品紹介・あらすじ
ビジネスのなかでセールスほど間違ったことが語られている分野はない。ハーバード・ビジネス・スクール出身のジャーナリストが世界中を飛び回って掴んだ"営業"の真実!頂点をきわめた営業のエキスパートたちが赤裸々に語る、売り込みの極意とは?ノーと言われても自分を奮い立たせる秘訣とは?
感想・レビュー・書評
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営業という仕事は生きていれば必ず避けられ避けられない。
ビジネスで売り込むことに限らず、生きていれば何かしらのアピールは必要になってくる。
営業が上手い人とそうでない人の分析が幾つも載っているが、この本で大きく納得できたことが一つある。営業という行為への苦手意識や躊躇いについてだ。食べる為には収入を得なければならず、その過程には営業が欠かせない。にもかかわらず、躊躇いがある。本書はそれを理論的には解決してくれたと思う。今後は、これまで生きてきた中で偏ってしまった考え方をほぐしていかなければと思う。
僕が大いに納得できたのは、営業が比較的得意な人とそうでない人がいるのはなぜかということ。僕は後者だが、なんでそうなってしまったのかという疑問の答えがあったのだ。
生きてきた環境の影響が大きい、そういってしまうと単なる逃げの口実になってしまうのだが、僕が納得できたのはそこではない。
営業が得意な人は、親が商売を営んでいたりして、生活の中で身近に営業が存在していることが多い。親が会社を経営していたり、自営をしていると売り買いによって自分の生活が賄われていることが実感しやすい。努力や苦労しながら売ることで利益を得て、それによって日々の食料や学費が払えるという実感がある。
一方、僕の父親は雇われサラリーマン技術者で母は専業主婦だった。父親は、同僚に営業職の人がいて、その人が会社にもたらした利益から給料を得て、僕はそのおかげで生活できた。会社の中での分業として父は技術者をしながら、父の分の営業は誰かがやっていてくれたわけだ。
そんな環境の僕にとって営業に触れるのは、客として売られる場合が多い。買い物やら勧誘やらで買いたくないものを勧められたりするようなイメージが多い。また日本には儲けることはよくないだとか、お金についての道徳や忌み嫌う空気が漂っている。父のように間接部門の仕事で、その家庭で生活していると、こういった営業ということの負の部分ばかりの意識ばかりが育ってしまって、生きていく上で必ず必要な売るという行為に偏見を持ってしまうのだ。
この本を読んだ後、自営をしている過程で育った人と話した。自営や経営者の家庭だと、営業して売ることのポジティブな面をよく理解していた、というかそれが染み込んでいた。
このことを実感し、僕の中の偏りを無くさねばと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1.タイトルに惹かれて買ってしまいました。
2.MBAでセールスを教えない理由は、成果が数字で出てくるから、つまり、自分の能力が正直に出るので恐怖を感じるからだと自分は結論付けてます。
営業は世界一ハードな仕事だが、世界一魅力ある職業であることを伝えたいのがこの本の目的だと思います。ロバート・マクマサーをきっかけに、心理学をビジネスに応用し始めましたが、それだけでは語ることができません。科学を用いてもなお理解が完全にならない営業は、そこに難しさが出てきます。著者はジャーナリストとして、セールスマンに取材し、どのようなセールスマンが一流なのかということを伝えています。
3.特に響いた言葉は、「営業に魔法などない」という部分です。一昔前の本では、「この一言でクロージング!」みたいなスキルに特化した本がちらほら出ていましたが、これはもう使えないのではないかと思いました。営業を担当してる身で、契約ほしさに、そのような必殺トークと呼ばれるものを使ってみましたが、効果は全くありませんでした。この本でも述べているように、営業に必要なのは2つで、自分を売ることとよく話しを聞くことです。これは営業マンの基礎能力と言っても過言ではありません。これがあってこそ、初めてお客さんが振り向いてくれるのだと思いました。
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そもそも原題が「The Art of the Sale」なのに、
なぜ邦題はこんな挑発的(?)なものをつけたのか、と
考えてみると、
もちろん売れることを狙ってだろうけれど、
必ずしも著者の意図と無関係っていうわけでもない。
というのは、著者のフィリップ・デルヴス・ブロートンは、
記者の身分を捨てて、実際にHBSで2年間を過ごし、
「Ahead of the Curve: Two Years at Harvard Business School」という
体験記を出版しており、
その中で、HBSのプログラムのリアルを伝えている。
私の印象では、彼は、HBSは「カネ稼ぎ」のための
肩書きを与え、スキルを鍛えてくれる反面、
日々のビジネスを積み重ねている人々に対する敬意を持たなく
なるようなところがあるという警鐘を鳴らしていると思うのだ。
そんな彼が、「Sales」に焦点を当て、
世界各地における、その達人たちの哲学や行動を丹念に描いている。
そこには、HBSのプログラムが重点を置くような戦略、データ分析、理論は
ほとんど出てこない。
あるのは、何を信じているか、そしてどう行動し続けているかという、
ライフストーリーである。
印象的なストーリーばかりだが、
特に挙げるとすると、日本の生命保険セールス、
第一生命の柴田さんとプルデンシャル生命の岡さんの話が興味深いと思った。
私は生命保険の営業をしたことはないし、
営業を受けたこともほとんどないが、
そのビジネスに対する印象は
「過酷そうだな」「本当に必要なものを売っているのかな」というような
正直、マイナスなものであった。
だが、トップセールスである柴田さん、岡さんの信念、言葉、行動を、
異国のライター目線で通して見たときに、
その印象は大きく変わった。
彼らは、過酷だと思っている訳ではないし、また、本当にお客さんに必要だと
思って売っているのである。
それを、たとえば宗教的だといって批判するのはたやすいし、
かつ、さも科学的にビジネスを扱っているように振る舞うこともできる。
でも、それでは、売れないのだ。
売れないのでは、利益が上がらず、ビジネスは回らないのだ。
それでは、企業は立ち行かない。
資本主義の社会で、企業活動が成果を出して、有機的にビジネスが回るためには、
そこに必ずセールスが入っている。
もちろん、プロダクトやサービスが劇的に優れているから、セールスがいらないように
見えることもあるだろう。
あるいは、セールスの手法を完全にデータと仕組みで管理することで科学的に
目標数値に達することができると考えることもできるだろう。
だが、その思考は必ず、落とし穴にハマる。
私は本書を読んで、そう思った。
もちろんそれは、本書が、セールスという行為を再評価したいという意図で
書かれているというバイアスがあるからだけど、
実際に、購入を決断するのは人間であり、とことん感情に左右されることは、
それこそ行動経済学が近年明らかにしてきたように「科学的真理」であり、
であるならば、その感情に働きかけることができる最強の武器、それは、
買い手に決断を促す技量を持った、人間なのである。
とりわけ、高額なプロダクト、サービスであれば、尚のこと。
そして、その人間を鍛えるのは、本書で繰り返し出るように、
1にも2にも、経験なのだ、と。
私自身、いま、全然希望していなかったセールスの仕事をしていて、
「なんでおれがこんな向いてないことを」
と思うことも多いのだが、一方で、失敗と成功の経験の小さな積み重ねから、
少しずつ適切に振る舞えるようになってきた実感があり、
そこに面白みがあるのもまた、本当である。
私のように、セールスをする中で色々もがいている人にとっては、
本書は、広い横幅でセールスを捉える学びのチャンスを与えてくれるという意味で、
価値があると思う。
The Art of the Sale: Learning from the Masters About the Business of Life [Kindle Edition]
Philip Delves Broughton (Author)
http://www.amazon.com/dp/B005GSYZZM
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(レビューは
http://evolution.edoblog.net/
に投稿のもの) -
・ビジネスにおいて最も営業が重要
・使命感を持つことが大事。スキルや能力よりも。
・拒絶されるまで提案することが大事。営業先と調整し最大限良い提案をする意識で。
・Appleがなぜ、家電量販店ではなくAppleストアをつくって、Apple好きなスタッフにApple製品のみを営業させているのか。(キリスト教がなぜ、公共の場所を借りるではなく教会をつくって、信者に免罪符を営業させているのか。)
という事例が面白かった。 -
こういう邦題にするとMBA批判の本のようにも取られるのではないかと思われたが、本の中身は全くそうではない。確かに著者がハーバード大学に入学したときに営業の授業があるものだと思っていたらなかったので、教授に聞いたらコミュニティカレッジの夜間コースに行けと言われたというエピソードが書かれているし、ハーバードの中で著者が唯一受けた営業の授業を担当するアンダーソンが「セールスは、結果が測れる唯一の分野だ。それがMBAの学生には死ぬほど恐ろしいんだよ」と言ったりもする。しかし、この本は断じてMBAで営業を教えない理由を解説するものではない。 著者がMBAの教育に対して懐疑的なことは確かだが、明白にセールスという仕事について愛を込めて色々な角度から光を当てて活写したものだ。イギリス版のタイトルは”The Art of Sales”、アメリカ版では”Life's a Pitch”(人生は売り込みだ)となっているらしい。解説のライフネット生命の岩瀬さんは後者の方がそれらしいと書くが、自分は”The Art ofSales”の方が好きだ。セールスというものが、ハウツーで語られるものではなく各個人の技量と個性による「アート」であるということがにじみ出るからだ。相手を見極める目はハウツーやマニュアルではないし、授業で教えられるものでもないのだ。リーダーシップに唯一の型がないように、営業にも唯一の成功の型というものはないのである。
本書の中では、モロッコの絨毯売り、第一生命のトップ生保レディ、プルデンシャル生命の日本人トップセールスマン、テレビ通販のカリスマ営業マン、ニューヨークの絵画商、など様々なセールスマンが登場する。どの人物も魅力的である。結構、日本人も取り上げられているところが共感がまた深まるポイントでもある。 トップセールスマンになることが、騙しのテクニックなどでは決してないことがわかる。著者がいうようにセールスに欠かせない資質が忍耐力であり、自信であり、粘り強さであり、感じの良さであることがわかる。そして、それがその人自身を魅力的にして、人生にも欠かせない要素でもあるのだ。
ドラッカーが、企業の目的はイノベーションとマーケティングであると述べて、マーケティングはセールスを不要とするものであるとしてからセールスの位置づけは経営学の中で不当に低く扱われてきたのかもしれない。ドラッカーの方も、ハーバードを初めとするMBAの中ではあまりまともに扱われていないという話もあるのだけれど。
フランス人心理学者のラパイユとの対話で出てきた「セールスマンを採用するとき、起業は販売の成功実績よりも失敗への受容性を見るべきだ。...「人生でどれだけ失敗してきましたか?」と聞くべきなのだ」は傾聴すべきだろう。最も成功したセールスマンは、最も多く断られたセールスマンなのかもしれない。そして、このことはセールスだけに当てはまることではない。こういった、セールスだけに当てはまるものではないストーリーがこの本の中には、ふんだんに盛り込まれている。
この後に、「ドナルド・トランプがセールスマンにこれほど賞賛されるのは、彼が成功者だからではなく、成功し、失敗し、そしてもう一度這い上がってきたからだ」となるのだが、大統領選にトランプが立候補する前に出版されたものであることを考えると興味深い。
「営業とは、ものを売ることではなく、自分を売り込むことだと考えている。お客様は商品を買うのではなく、信頼できるあなたが売っているもの、つまりあなた自身を買うのだ」という言葉も深い。そのためには、お客様の立場をまず知らなくてはならない。共感力が必要になってくる。セールスに魔法はない。勤勉であることと、よく聞くことの二つのことができればいいのだという。
モロッコの買い物の話が出てきたフェズの市場の様子などあのときに体験したことと同じだ。何を買うにしても値段交渉ありきだった。「セールスマンの力量ってのは、ものを買うときにわかる。儲けられるかどうかは、売るときじゃなくて買うときに決まるのさ。買った瞬間に儲けが確定する」っていうのは、恰好いいね。
プルデンシャル生命の社訓として、「考え方が変われば行動が変わる、行動が変われば習慣が変わる、習慣が変われば人格が変わる、人格が変われば運命が変わる、運命が変われば人生が変わる」という言葉が紹介されていた。よい言葉であり、この本にもふさわしいが、もともと心理学者ウィリアム・ジェームスの言葉と言われたり、ヒンズー教の言葉と言われたり、松井秀喜が星稜学園の監督から贈られたり、中村俊輔や野村克也といったプロスポーツ選手が引用したりと色々と使われているんですね。それだけ、いい言葉なのだと。
邦題に関しては、こういう名前の付け方はあまり好きではない。特に結果がすぐに出てしまう営業がMBAでは教えられていない、机上の空論で投資家や経営層を煙に巻く技術を教えられていて実際の結果がその高給に見合っていないという批判もありうるからでもある。そして、著者の想いは明らかにそこではないのだ。
営業という観点から、スティーブ・ジョブズ、イエス・キリスト、ネルソン・マンデラ、ダライ・ラマまで出てくる。読み物としても面白い。