- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834086690
作品紹介・あらすじ
今から約800年前のトルコ。王女のトゥーラーンは物語に憧れ、主人公のように自由に生きたい、自分の意志でなにかを成し遂げたいと願っていました。やがて運命は、山奥の小さな王国ディヴリーへとトゥーラーンを導きます……。今も多くの謎に包まれたトルコの世界遺産、「ディヴリーの大モスクと治癒院」をめぐる人々の、壮大な歴史物語です。
感想・レビュー・書評
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ハードカバーで500頁越えと、持ち歩きにくいが、読み始めると面白く、続きが早く読みたくて持ち歩きたくなってしまった。上下巻別になっていると良いのに。
トルコで最初に登録された世界遺産の一つ、ディヴリーのモスクと治癒院という実在の建物を中心に、その時代にいた人達を描いたフィクション。
実在した人物もいるが、歴史的に古いので想像も多いのだろうと思われる。
主人公はその建物を建てるディヴリーの王妃が若い時代から描かれ、幼少期は病弱だが、大人になるにつれ活発になり、父の決めた政略結婚などとんでもない。という女性。
結婚後は周辺に戦争も多く起こるが、ディヴリーの王も戦争をしないよう回避するよう言われて育っており、慈愛に溢れ、賢く国を治めた様子も良かった。
内容は面白く、読みやすいのであっという間読めるのだが、小学生では、なにしろ本が大きくて手を出しづらいかも?
良く読める高学年児童には勧めたい。
トルコに行って実際に見たいと思ったが、2023年11月現在では、修復作業中で中は見られないらしい。残念。 -
先輩司書さんに勧められて。
ボリュームはありますが、それだけ深い。
教科書で歴史を勉強するより、これを一冊読んだほうが、ずっと歴史に興味を持ち、知りたくなるのでは、と思うほど。(実際私がそうです)
今はトルコ、シリア、エジプト、イランあたりはなんとなく怖いような気がするけれど、素晴らしい文明の生まれた土地だということ、イスラム建築や言語、宗教への興味も新たにしました。
登場人物もそれぞれ魅力があり、生き生きと描かれているので、読みながら何度もクスッと笑ったり、泣きそうになったり。
浴場(ハマム)が完成して視察する場面では、日本とは違った入浴法が、読むだけでも場面が目に浮かびました。
「旅に勝るのは書物だ。見ることのできない異国も、行くことのできない過去も、本から知ることができる。そして未来を見るには、観察と想像だ。ねばり強く見て、考えをはばたかせるといい」
「お父さまは戦をしない勇気をお持ちでした。戦で町やいのちをうばうのでなく、戦に巻きこまれないよう知恵をしぼる、それが本当の勇者です。」
「子どもたちを連れて、ひろい世界を見て歩きたい。できればあちこちに、いのちの木を彫って残すつもりだ。戦と無縁の地がふえるようにね。」
なお、「おもな登場人物」はいいですが、「王家の家系図」は読み始める前に見ないほうがいいと思います。
高学年以上におすすめ。
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久しぶりに分厚い児童書、おもしろかった!
イスラム圏のファンタジーとして読み
あとからモデルになった街が
本当の世界遺産だと知りました。
その大モスクと治癒院を作った王と王妃
建築にたずさわった人々を描いていたのね。
のちに王妃となるトゥーラーンも
王となるアフマドシャーも
まっすぐなキャラで読んでいて気持ちよかった。
彼ら王家の家族や大工、職人たち
登場人物それぞれ自分の生き方があって
少年時代から老年期まで「年代記」になってる。
それでこの長編なわけなのね〜。
イスラムの文化や風習の違いが
要所でわかりやすく盛り込まれているし
大好きな佐竹さんの挿絵は
イメージをふくらませてくれて嬉しかったわ。 -
現在のトルコに実在する世界遺産の大モスク建設をテーマにした歴史書みたいな物語。山間の小国ながら戦乱にも負けず壮麗な建造物が残された背景にはこんな歴史があったのでは?と思わされる。残された史実の隙間を想像で埋められるのが小説の醍醐味でもある。実際の大モスクの前に立ち、職人の仕事と悠久の時間を感じてみたい、と思わずにはいられない。
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分厚さがハードルをあげているもったいない本。
中のお話はとても読みやすく、少女漫画のよう。文章がやさしいので、背景知識が無くてもすんなりと頭に入ってくる。
やや女の子向きかと思うがぜひ手に取ってみてほしい。 -
今から800年ほど昔に、トルコのエルズィンジャンという国にトゥーラーンというお姫様がおりました。トゥーラーン姫は王の一番末の娘。彼女は、物語の本を何よりも愛しており、物語の主人公のように生きてみたいと願っていました。ある時、結婚することになった姉に付き添い向かった国で、彼女は生涯を共にすることになるディヴリー国の王子と運命の出会いを果たし…。
未完のまま長い年月埋もれていたトルコの世界遺産「ディヴリーの大モスクと治癒院」の謎に魅せられた著者が、この建築の魅力を伝えるために史実を創作で補った歴史小説です。 -
岩波書店の「あのね」というリーフレットに紹介されていたので興味を持ち、取り寄せました。
まず思ったよりも分厚くてびっくりしました。が、面白くてどんどん読み進めてしまってあっという間に読めてしまいました。
ベースは日本でいうと鎌倉時代くらいのトルコの歴史ですが、トルコの歴史に馴染みがないのでファンタジー感覚で楽しみました。
トルコ戦国時代の中で運命に翻弄されるトゥーラーン姫ですが、持ち前の明るさ、人懐っこさと強い好奇心、揺るがない意志で強く生きていきます。非常に魅力的な主人公でした。
土地や人物の名前もなかなか覚えられないのですが、見返しや巻頭に地図や家系図があるので、何度も戻りながら読みました。
壮大な歴史ファンタジーで非常に面白かったです。
挿絵も非常に綺麗。
最近の児童書で一番良かった本です。
死ぬまでに一度は舞台になった世界遺産の「ディヴリーの大モスクと治癒院」を見にいきたいです。
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見返しの部分にトルコ近隣の地図があるし、実在した国と歴史を描いた物語なんだろうな、とはわかっていても、少し読み進めただけでまるで空想の美しいファンタジーの世界に迷い込んだような気持ちになった。
くしゃっと目をつぶして笑う魅力的な姫、トゥーラーンが少女からやがて大人になり、老いていくまでの人生と、美しい建物や織物について描かれた、壮大で夢のような物語だ。
舞台は13世紀のトルコ。複数のイスラーム王朝が複雑な縁戚関係を結び並び立つ土地で、三人目の王女として生まれたトゥーラーンは、顔も知らない男性と結婚することに疑問を持ち、いつか恋した男性のもとに愛馬を駆って行きたいと夢を見ている。
そんな彼女がとても魅力的な主人公で、彼女を取り巻く多くの人々も個性的で読んでいてわくわくしてくる。
そして物語を彩る、モスクの石彫の美しさ、トルクメンの部族が織りなす絨毯の素晴らしさに、魅了される。
美しい挿絵で目を楽しませながら、わくわくとページを繰り、最後まで読み終えて、ちょっとした旅に出ていたような気持ちになった。
児童書ではあるのだけれど、大人になっても十分に楽しめる。
あとがきを読んで、ほんのわずかな事柄からインスピレーションを働かせて物語を膨らませる力の凄さに圧倒された。物語ってこうやって生まれるのか。
トルコには行ったことがあるけれど、本作の舞台となったディヴリーという土地はまったく知らなかった。いつか訪れてみたい場所になった。 -
2022.09.07