光車よ、まわれ! (fukkan.com)

著者 :
  • 復刊ドットコム
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本棚登録 : 151
感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784835441306

作品紹介・あらすじ

ある雨の朝、登校した一郎は、クラスの様子が、周囲がいつもと違うことに気づく。迫り来る闇の力に、一郎は神秘的な美少女、龍子たちと共に立ち向かう。「光車」とは何か?一郎たちは闇の力を無事に打ち倒すことができるのか?傑作ファンタジー復刊。

感想・レビュー・書評

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  • 闇と戦う幻想物語。一郎と龍子達は水の悪魔と戦うため,3つの光車を探し,悪の正体を暴く。土地に住みつく地霊文字や得体の知れない恐怖を堪能。龍子はカリスマを越えた存在。

  • 読み始めて割とすぐに「むむむ…。この雰囲気は…!」と思いました。
    昔NHKで夕方にやっていた「なぞの転校生」とか「未来からの挑戦」とかなんとか、その辺りの匂いがプンプンするのです。
    それもそのはず、この作品は1973年に発表されたもので、ちょうどそれらのドラマが放送されていた頃でもあるのでした。

    ほんの些細な異変がじわじわと自分を追い詰める。理由はわからない。
    ちょっとクラスメイトの様子が変だっただけなのに。
    追われる理由はよくわからないが、とにかく捕まってはいけないことはわかる。
    助けてくれる味方はできたけれども。

    悪夢のように理不尽。
    だって、追っ手の正体も目的も全然わからない。
    助けてくれたクラスメートの龍子たちと力を合わせて追っ手に対抗するのだが、一連の不可解な出来事の意味も、龍子に言われて探している光車がなにをするものなのかもわからない。

    いつもと同じように見えている6年2組だが、もう教室は安全な場所ではない。
    一郎や龍子たちの仲間。
    水を住処にしている黒子を遣う宮本、武田、斎藤達。
    緑衣隊を遣う吉川。
    何も異変に気づかない多くの児童たち。

    本当にページを繰る手が止まらない。
    次はどうする?敵はどうくる?そしてどうなる?
    そもそも敵はこの世界をどうしたいというのか?
    町をも巻き込んだ大きな事件になっても、まだ、何が起こっているのかわからない。
    龍子は何かを知っていそうだが、彼女は何も語らない。
    どうも龍子のおじいちゃんが事態のカギを握っているようなのだが。

    最後まで読んでも何が起こっていたのか、実はよくわからない。
    一郎たちの闘いは、善と悪の闘いではなかったようだ。
    そしてそれは、時間となんらかの関係があるようである。

    簡単に子どもたちが犠牲になって殺される。
    突き放したような作者の筆が、結局一郎たちを勝利に導かないのではないかとドキドキしながら読み進む。
    結果はどうであったか。それはもちろん書けないけれど、ハッピーエンドともバッドエンドとも言えない、何とも言えない感じ。
    何よりも謎は解けていない。

    事件のあとの子どもたちは、真っ当に大人になれるのだろうか。
    何か心に傷を負ってはいないのか。
    読み終わってもドキドキは続く。

  • この、表紙!光車をすごく繊細なタッチで描いてあって、なんだか胸がドキドキする。
    小学校四年生の時にはじめて読んでから、何回も読み返した。不思議な話。ドミノ茶がすごく、気にかかる。

  • たしか復刊ドットコムで見て知ったのかな。私的さよなら図書館フェアの9冊目。
    子どもたちのグループが現実の裏側に存在する邪悪なものたちの世界に気がついてしまうという、一見ありがちなダークファンタジーに見えながら、子どもが水たまりで溺れ死んでしまったり、「こちら側」の世界にも緑の制服を着た秘密警察のようなものたちがどんどん増えていき、人々を連れ去っていくなど、ファンタジーではおさまらない、異様な迫力のある恐怖感が横溢している。この作品を70年代という時代背景の中に置かないとしても、勘のいい子なら、学校の教師が子どもたちに監視の目を光らせていたり、少し年上の少年たちに子どもたちが組織されてスパイまがいのことをさせられたり・・・といった描写がまったく空想的ではないことも感じ取れるはずだ。作者は、そのような権力の頂点を「国家」だとはっきり名指している。

  • 加筆:20111125
     ポプラ社版の文庫本は、三浦しをんが解説を書いている。
     うれしい。

     小学生の頃に読んで、その後、大学生の頃にふと思い出して、復刻本を買い求め折に触れ数年おきに読んでいます。 児童書とは思えない、何ともほの暗い雰囲気のストーリー・描写が、子ども(私?)の持つ残酷な部分を捉えたのかもしれません。

  • 妹が読んでたので借りた児童文学。大人の鑑賞にも耐えうる素晴らしいファンタジーホラーの世界にびっくりです。永遠の名作だと思う。

  • 1970年代に出版された本が2000年代に復刊したやつだそうな。80年代に児童書を読んできた身としては、小学校高学年向けぐらいの読み応えのあるファンタジーって外国のやつしかないなぁと思ってたけど、日本でも頑張って作るぞーって頑張って作った感じの本でした。その当時読んだ子供にとってはすごくおもしろかったことは想像に難くない、復刊するのわかる〜
    関係ないけど空色勾玉出た時日本人にもすごいの書く人出てきたー!って子供ながらに思ったのを記憶している。今やめっちゃたくさんありますよねよき〜。物語の最後のオチだけは日本人作家さんのやつの方が納得いくの多いから好きです。

  • 水の魔物が街を襲う。それに対抗する子供たち、というストーリー。まあ、子供向けですから。

  •  仏文学者であり詩人である著者が本格ファンタジーを目指して書いた物語。昔読んだ時の読後感が忘れられず,40年ぶりくらいに図書館で取り寄せて読んでみた。
     主人公は小学六年生,仲間と共に雨の日から始まった怪異(あやかし)と勇敢に闘う。文字通り世界と命をかけた闘いだ。各戸に電話もなかった時代の物語で,文面から感じ取る町の様子も昭和中期の東京でレトロな雰囲気だが,繰り広げられる物語は地霊文字で説明を書かれた古文書など中二病全開って感じ。
     初めて読んだ中学生の時もそうだったが,先が気になり一気に読み進んでしまった。そして思い出した。実は物語はこれで終わりではなかった。続きってどこかにあるのだろうか? 龍子とおじいちゃんは何者だったのか。

  • 1973年に初版が発行されたこの本、子供の冒険心を誘うファンタジーです。子供だけじゃない、大人にとっても面白いファンタジー。

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著者プロフィール

天沢退二郎 訳者 天沢退二郎(あまざわ たいじろう)1936年東京生まれ。東京大学仏文科卒。詩人、評論家、宮沢賢治研究家、作家。詩集に『地獄にて』、『幽明偶輪歌』(以上思潮社)、翻訳に『青空』(晶文社)、『ヴィヨン詩集成』(白水社)、『ペロー童話集』(岩波書店)、『シチリアを征服したクマ王国の物語』(共訳、福音館文庫)、評論『宮沢賢治の彼方へ』(思潮社)、創作に『光車よ、まわれ!』(ポプラ文庫ピュアフル)、オレンジ党シリーズ(復刊ドットコム)がある。

「2013年 『犬のバルボッシュ パスカレ少年の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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