- Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
- / ISBN・EAN: 9784835444086
感想・レビュー・書評
-
本書は、絶版や品切れの本をリクエスト投票により、復刊させるサービスを行っている、「復刊ドットコム」から発売された、M・ウィリアムズの『ビロードうさぎ』の挿絵でもお馴染みの、イギリスの国民的画家、「ウィリアム・ニコルソン」の1929年作で、20世紀前半を代表する古典絵本と言われており、ちなみに彼の絵本は、本書と『かしこいビル』(1926年)の二作だけらしい。
ある夕暮れ、海辺で「メリー」が見つけたのは、「ふたごのかいぞく」だったが、その場所が、なんと貝殻の中といった、意外な展開から始まるものの、物語のテーマは親子愛に思われて、もちろん、メリーと彼等に血縁上の繋がりは無いが、そんなことは一切関係ないことを、本書は教えてくれる。
その後メリーは彼らを連れて帰り、お風呂に入れて、いろんなものを食べさせて、いろんなことを教えていく、そんな物語に於けるニコルソンの絵は、画家のそれとはまた異なり、少ない色数の薄らとした世界で確かにそこに存在するものたちの中でも、黒色の彼らの存在感は特に際立っており、彼らの何気ない動作や細かい喜怒哀楽の表情は、とても惹き付けられるものがあって、そのイタズラ好きな様子も含め、読み進める内に次第と愛着が湧いてくる。
しかし、そんな彼らにも自然と自立心が芽生え出し、いつかは親元を去らねばならない時が来ることを悟る中、そこはかいぞくらしく漕ぎ出していき、そこでの暗い背景のみ、周りと同化し揺らぐような彼らの存在感がまた悲しみを煽るが、それでも彼らの心の中にあったものは決して忘れることはなく、それは、彼女がしてくれた様々なことへの感謝だけではない、同等の立場として一緒に人生を楽しんでくれた彼女の愛情を、イタズラをしつつも覚えていたからであり、そんな愛情に対する恩返しとも思えるものは、最後の彼らの決まり事にしていることからも充分に感じられて、そこには親と子の織り成す素敵な一日が描かれていたのであった。
そして、こうしてみると、一見、奇抜に思えた貝殻の中にいた彼らは、まるで『ヴィーナスの誕生』のパロディとも思われたが、このような親子愛の物語で提示されると、私には決してそうとも思えず、それは彼らがもたらしてくれたものが、少なくともメリーにとっては、実の子ではなくとも確かに愛だったからであり、その素晴らしさが彼女だけではなく、彼らも共に育み合うことで、より深まりを増していった、それは双方にとっての、『愛の誕生』なのであった。
児童文学研究者の吉田新一さんの解説によると、本書誕生のきっかけとなったのは、ニコルソンの娘ナンシーが10代の頃に、彼がパリで買ったが使わずにいたソックスを使いストッキング人形を作ったことで(実際にその写真もあって、これがとてもそっくり!)、これを読んで思い出したのが、リンドグレーンの娘が「長くつ下のピッピ」の名を考えついたことであり、子どもの遊び心溢れる発想が、そのまま絵本へと結びつくのが面白いなと思うと共に、それを受け継いで形にする親の思いとが交錯する様に、親と子、それぞれの人間性のやり取りとも感じられるのが、絵本の持つ魅力の一つだと思い、大人の描く絵本に子どもが共感出来るのは、もしかしたら、そんなやり取りを、絵本作家自身が心の中で行っているからなのかもしれない。 -
絵がちょっと昔ふうでした。
-
2017/6/25(1年生)
-
ちゃんと 帰ってくるところが カワイイ♪
-
ちっちゃくても、海賊なんだもんなぁ。
でも忘れないんだよね。
メリーを思い出して涙する二人が
たまらなく愛しいです。 -
言葉と絵の競演?共演?
-
ふたごの海賊にはモデルがいた。
「復刊ドットコム」そんな素晴らしいお仕事があったのですね。
貝殻の中から出てきた小さな人たち…「おやゆび姫」や「一寸法師」を彷...
「復刊ドットコム」そんな素晴らしいお仕事があったのですね。
貝殻の中から出てきた小さな人たち…「おやゆび姫」や「一寸法師」を彷彿とさせますね、
コメントありがとうございます(^^)
「復刊ドットコム」。以前から、その存在は知っていましたが、実際に出版されている本を初めて...
コメントありがとうございます(^^)
「復刊ドットコム」。以前から、その存在は知っていましたが、実際に出版されている本を初めて見たのは、漫画の『佐藤史生コレクション』で、絵本は本書が初めてです。
ただ、どれくらいの票数で復刊するかは、謎だそうです。ちゃんとサイトを見たこと無いので、何とも言えませんが。
そうなのですね(*'▽'*)
「おやゆび姫」、「一寸法師」は、確かに幼い頃に読んだはずなのですが、話の内容を覚えていなくて・・・私が連想したのは、桃太郎でした(^_^;)