- Amazon.co.jp ・本 (551ページ)
- / ISBN・EAN: 9784835537450
感想・レビュー・書評
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読了後感動のために激しい虚脱感に陥ったほどすばらしかったです。新撰組の輝かしい絶頂期のお話ではないので終始胸が苦しかったのですがそれも忘れてしまうほど土方さんが恰好良い。
時代の流れで戦の戦法が変わり、刀では敵わないことを痛感する場面ではこちらが滅入ってしまうほどです。しかしどんなに不利な状況、勝利の見込みがなくても、誠を尽くす姿に惚れ惚れします。
近藤との別れや江戸にひとり沖田を置いていく場面なども涙なくしては読めませんでした。女性ならではの描写も関心します。
作中の沖田の言葉を借りて言うなら、本当に「土方さんこそ、皆の光だ」ったんだなあと。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
土方歳三、この人の魅力はなんだろう?って思う事がある。
新選組にまつわるいろいろな本を手に取ってきたけど、この作品ほど土方に魅了されたものはない。
山南さんや藤堂の死、源さんの戦死、沖田との別れ、永倉さんや左之との別れ、近藤との別れ……目の当たりにしてきて、きっと深く傷ついてとてもさみしくて。じつはどこか不器用で。悶えながら士として生きていくその生き様は、きっと魅きつけられる物があるんだろな。
あぁ。土方歳三ロス。 -
苦手な歴史物だったが、とても読みやすく、新撰組のメンバーが現代に蘇った様な親近感がある。新撰組に特化しているわけではなく、土方の成人以降の生涯の物語。求心力があり、部下から慕われる人間性は素晴らしい。
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お話は、王政復古の大号令が発布されたあたりから始まります。
ところどころでそれ以前の新選組史を振り返るエピソードがありますので、結果的には全体を眺めることが出来ます。
どちらかと言えば、新選組初心者のための小説ではないかもしれません。
王政復古あたりから時を行きつ戻りつするのは、ちょっと気をつけて読まないと難しい。
ある程度、新選組史について知っている方のほうが、読んでいてわかりやすいでしょう。
しかしながら、副長のさらっとしたモテ振りはとっても惹きつけられます。
古参隊士から年若い新入隊士まで、副長の生き様に惚れないやつぁいない(笑)
だんだんと古い隊士がいなくなっていく心細さ、それを隠して新しい隊士を叱咤激励する強さ。
副長のこころの裏表がきめ細かく描写されていて、ぐっとくること受け合いです。
個人的には、戦闘のようすがだんだんと西洋風に切り替わっていく光景がわかりやすかったです。もっと早く旧幕府軍が西洋式の軍制に慣れていたらと思わずにいられません。
でも、それはつまり武士としての戦法を捨てなかったということなので、非常にジレンマを感じるところでもあります。 -
いっぱいブックマークしちゃいました。
土方ファンにやり&鳥肌もののシーンが続出です。
ストーリーは淡々と書かれているのですが、やっぱり作者が土方を愛しているが故なのか、
土方ファンの悶絶ポイントを良くわかってらっしゃる!という書き方をされています。
こちらの土方さんは、冷徹な鬼の仮面を脱ぎはじめ、人に対し優しさを滲ませていきます。
それでいて抜群の軍才があり、剣の腕も確かで、筋が通っていて、美男なんですよ?
当然、登場する男達はほとんどみんな彼に魅了され、惚れていきます。
本当にたくさんあるんだ、いい(悶絶)シーンが・・・・
いやあ満足。そんな本です。 -
今まで読んだ本に書かれていない数々の場面が、まるで史実のように、臨場感持って描かれていて、引き込まれた。
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作者が女の人だからだろうか、すごく優しい印象。人の性格がじゃなくて、全体の雰囲気が。
漫画小説映画ドラマいろいろな新撰組があるけれど、司馬遼太郎の新撰組・土方像に一番近いと思った -
飄々とした斎藤、明るい永倉、短気だけど優しい原田、土方さんの気持ちを誰より察してしまう沖田。そして函館まで土方さんを慕って共に駆け抜けた島田や相馬他大勢の隊士たちとの想い。
近藤という光の陰に自ら立ち続けてきた土方さんの本来の姿に魅力される。 -
■静寂が辺りを包み、人々は息を呑むように2人の男を見つめている。立ち合っているのは、後の「新選組」の2人、土方歳三と藤堂平助だ―。鮮烈なり土方歳三! 冷酷と情熱の男を清しく描く。
■■『新撰組藤堂平助』その後の土方歳三を主人公にした話。でも出版はこっちが先。『藤堂』のものよりも読みやすかったです。激しく腐女子萌え度の高いお話でした。『藤堂』では土方攻めだったんですが、こっちでは受けですな、明らかに。隊士達のカリスマアイドルみたいだった。色気むんむんで惑わせる惑わせる。笑えるシーンも多々。
正直。後半読むのが惜しいと思えるほど面白かったです。★十個付けてもいい。腐女子万歳。
凍てついた鬼副長と言われた男の、もう一つの顔。仲間を失い友を失い、一人孤独に駆けていく男の、繊細で優美で切なく優しい顔。死に場所を求めるようにして戦う姿が、凄絶。泣かされました。作者によって土方歳三の描かれ方はそれぞれですが、この作者の土方はどこまでも透明で綺麗でした。あ~。ホント思い出しただけでけっこう泣ける。久しぶりに良い物に出会いました。
「流れ弾だぜ」
と伊庭はかすれた声で語る。ところどころが無声になる。
「喋らない方がいい」
「あんたより先にはくたばらないさ。トシさん、ここに来な」
土方は伊庭の横に座った。
「あんた、寂しがり屋だろう。みんな知りゃしないんだ。だからどいつもこいつも先に逝っちまう。俺は知っているからね、ちゃんと後に逝ってやるよ」
「何・・・・・・言ってやがる。死に損ないが」
「トシさん、冥土の土産によ、あんたの泣き顔、見せてくれよ」
「くそったれ」
わすかに沈黙の後、
「ありがとうよ」
伊庭はひどく幼い顔で微笑した。
伊庭は江戸の友人だ。土方が新選組副長でもなく、旧幕府陸軍参謀でもなく、陸軍奉行並でもなく、ただのトシさんだったころの貴重な友人だ。
およそ六年前、土方は夢を抱いて江戸を発ち、武士になるために今日へ上った。そのとき、伊庭は律儀に見送ってくれた。
時はたたみかける速度で流れ、みないなくなり、土方と伊庭だけが雁首そろえて函館にいる。笑い出したくなるような奇縁だ。
「いいさ、お前さんの人生がいいものになるなら、行って来いよ」
過去の伊庭の言葉が土方の脳裏でこだましていた。