- Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
- / ISBN・EAN: 9784837956808
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
なにはともかく、抽象的な言い回しに終始して読みにくい本だった。翻訳の問題もあるのかも知れないが、判りにくい本だったというのが正直な感想。この本はオリジナルの初版が1935年というから第二次世界大戦の前、世界の情勢がきな臭い時代に書かれたものと云っていいだろう。
機械文明に毒された世界を救うには、エリートの純潔性を守りながら優性教育を行うべし、無産階級などの社会的弱者は保護すべきではないとしてエリート中心の世界観を示す。しかもそれまでの世界は白人が築いてきたこと、白人こそが優秀な人種であることを前提にしている。うがった見方をすれば、当時勢力を伸ばしつつあった黄色人種の日本の蔑視とも受け取れる部分もあるし、また人種の優性に立つ立場としてナチスにも加担するもののようにも見える。
このアレキシス・カレルという人は医者であるが、人間と云うものは肉体や精神、個々の器官、機能などをパーツレベルで個別に見るべきではなく、総合的に見て評価すべきと主張する。また健康と云う問題についても科学的な処方にばかり目を向ける医学ではなく、自然な人間の立場から健康を考えるべきなど、首肯できることは多々あるとは云うものの、弱いもの能力のないものは切って捨てるというこの人の基本的なスタンスにはむしろ反感すら覚えると云って過言ではない。翻訳した渡部昇一さんがこの本に感銘したと云っているのは、優性主義論者の故なのかどうか知らないが、納得できることではない。
これまで読んできた本は、それまで読んだ本の関連でイモヅル式に知って読むことが多かったのだが、さて、この本はどういう情報源から知った本だっただろうか。10数ヶ国語に翻訳され世界各国で読まれたということに、最後まで期待を捨てずに読んだとは云うものの、結局は失望させられた本だったといえそうだ。たまにはこんなこともあるということか。 -
科学者が書いた人間には未知なる部分があるという本です。精神の分野で人格を高める努力をしていきたいと感じます。物質より精神、心を重んじる社会になればいいなと思いますね