猫を拾いに

著者 :
  • マガジンハウス
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本棚登録 : 716
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838726196

作品紹介・あらすじ

川上マジックがいっぱいの最新短篇集はたとえばこんな話が21篇も収められている。
     
《好きになった時には、好きは永遠につづくはずだったのに、いつの間にか恋はさめ、ひとときも離れたくなかった男はただのかさばる存在になり、そのたびにわたしは率直に、前向きに、「別れよう」と宣言した。》――〈わたし〉の新しい旅立ちを描く「旅は、無料」。
     *
《日本の人口が減りはじめたのは五十年ほど前のことだ。それまでにもすでに少子高齢化が進み、生殖可能な人口の絶対数が減ってしまっていたので、減りかたは急激だった。》
――若い人が激減した近未来の日本を描くSF風味の「猫を拾いに」。
     *
《私の人生で、最大の悔恨。それは、息子がゲイになってしまった、ということなのである。》――川上ファンならおなじみの〈ゲイの修三くん〉の母が登場する「はにわ」。
     *
《結婚なんてさ、脳天がしびれる感じでばかになってなきゃ、できないことだよ。きちんと考え始めちゃったら、怖くてできないでしょ。》――優しくって顔も声もいい、清潔で趣味もいい。そんな言うことなしの恋人と別れた〈あたし〉の心の底を描いた「ホットココアにチョコレート」。
     *
《そのお店はとても不思議なお店なのだと桐谷さんは言う。お店に入れるのは、恋の悩みを持つ人間だけ。悩みをうちあけると、店主が必ず解決してくれる。》――日常とファンタジーが入り混じる「まっさおな部屋」。
     *
《マルイさんは、僕の両のてのひらをあわせた上に乗っかってしまうくらい小さいけれど、れっきとした人間である。》――少年と〈小さい人〉の交流を描く「ミンミン」。
     *
《たぬきのつがいと鶴が三羽、くだをまきながらビールを飲んでいる。キッチンでは地球外生物らしき浅葱色のぼやけた存在が、よごれものをていねいに洗っていた。》――わたしの誕生日のパーティにはいろんな人がやってきた。地球外生物も現われる「誕生日の夜」。
     *
《なにしろ、京都は怨霊のメッカだから、と新田義雄は言うのだ》――あたしの同僚の新田は霊能者らしい。信長の怨霊とふたりの絶叫がこだまする「信長、よーじや、阿闍梨餅」。
     
技巧をこらしたヴァラエティ豊かな傑作が21篇――贅沢で楽しい短篇小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 特に好きなお話

    誕生日の夜
    はにわ
    真面目な二人
    ミンミン
    クリスマス・コンサート
    旅は、無料
    九月の精霊
    信長、よーじや、阿闍梨餅

  • 感情移入し過ぎずに淡々と気楽に読めるのが良いです!

  • やっぱり、川上弘美は良いな。おお、そう来たか。変!面白いな、好きだな。
    …と思いながら読むのだけど、読んだ後は余韻だけ残してスーっと消えてなくなってしまうような短編集。上等の和菓子かな。

  • 異次元に心を持ってかれるような不思議さと淡々とした日常が共存している空気感のストーリーが多かった。
    意外と自分の生活の中にも非日常なものが潜んでるのかな、と思わされるような、至極平凡な私もゆったり受け入れてくれるような懐の深い非日常なワールドだった。

  • 川上弘美さんはとても好きでちょくちょく読むけれど、いまだに謎に満ちた人だな、と思う。
    シンプルにストーリーを追うだけで面白いAタイプと、何回読んでもよく分からないBタイプがあるように思っていて、この本はAタイプなのだけど、短めの短篇集だから様々な種類のお話が収録されていて、どれも温度低めなところが川上さんだなぁと思いながら読んだ。
    読み終えたあともどれが印象的だったかと問われても分からない。どれも濃くはなくて、でも「面白かったな」と思いながら本を閉じた。
    やはり、謎に満ちている。

    せっかくなので表題作をもう一度読んでみたけれど、一度読んだはずなのに、これが「猫を拾いに」というタイトルなの?と驚いた。
    どういう日々を送っていたらこういう発想が生まれるのだろう。この人の頭の中覗いてみたいなぁ、と思う人はたまにいるけれど、作家の中なら川上さんが私はぱっと浮かぶ。

    この表紙の絵も何かな…猫…なのか…?
    やはり、謎に満ちている。

  • どこか悲しくて、平熱
    そんな感じだったな…
    川上弘美らしい熱が低い

  • 「誕生日の夜」「まっさらなお部屋」「信長、よーじや、阿闍梨望」「猫を拾いに」が良い。
    そもそも『大きな鳥にさらわれないよう』の文体と世界観が好きで川上弘美を読みはじめていたの、忘れていた。この人はただ恋愛を書くだけじゃないから好き。
    何より、文体が良い〜。川上弘美がかく女たちは、世の中をぼんやりと達観しているから嫌いになれない。
    ドライヤーで髪を乾かしたり、バスでうとうとしながら読んだり、ちょっとずつ読みすすめた。装丁も可愛いし、手元に置いておきたいから星5。

  • 個人的には大好きな1冊。全ての物語が面白過ぎて、読むのが楽し過ぎました。恋愛モノが多い。そんな人いるの?と思えたり、いるいる、と思えるような登場人物。そしてどれを読んでもなるほどな、面白かったなと思える結末です。ただ主人公が私と同年代(20代半ば)の作品が多めかも。私は年代が近く感じて、わくわくサクサクと読めてしまいました。他の作品も絶対読んでみようと思います。

  • *恋をすると、誰でもちょっぴりずつ不幸になるよ。いろんな色の恋がある。小さな人や地球外生物、そして怨霊も現われる。心がふるえる21篇。傑作短篇小説集*

    優しくて切なくて愛おしくて繊細で・・・一粒で二度も三度も美味しい、極上のスイーツを集めたような贅沢極まりない短編集。特に、恋の機微の描かれ方ときたら・・・!もうたまりません。短編なので読みやすいですが、一編一編、丁寧に味わって読まないともったいない。今からこの本を読める人が羨ましい・・・

  • 贈り物って悩ましい。相手が何を欲しているのか、わかるわけないし。そうなると、自分がもらって嬉しい、美味しいものにしちゃうなぁ。
    その贈り物を猫にしようと拾いに行く。猫好きならいいのかもね〜。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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