だからあれほど言ったのに (マガジンハウス新書)

著者 :
  • マガジンハウス
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本棚登録 : 111
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838775231

感想・レビュー・書評

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  • 「だからあれほど言ったのに」
    うまい題名だこと!
    5音7音で題名を考えるという種明かしをしていたけど、確かにそれはいい考えだと思う。
    キャッチーで、尚且つ、何度も胸に響く。
    しかも今回のこの本は一つずつが短く読みやすいので、読み終わるたびに、「だからあれほど言ったのに」という内田樹の声が聞こえてきそう笑

    この人はホントやばいくらい魅力的なおじ様ですね。近くにいたらクラクラしたと思う笑

    「今の日本の『ダメな組織』はこの『督戦隊が多すぎて、戦う兵士が手薄になった軍隊』によく似ている」
    督戦隊とは「前線で戦況が不利になった時に逃げ出してくる兵士たちに銃を向けて『前線に戻って戦い続けろ、さもないと撃ち殺す』と脅すのが仕事だ」

    あー胸がすく!

    日本の国力は低下したとはいえ、気を取り直して余力をうまく利用して伝統芸能や観光資源を大切に使い延ばしで豊かで暮らしやすい国として存続させることはできそうなのに、
    「しかしまことに不思議なことだが、そういう穏やかな未来図を描くひとは政官財にはいない」「見かけるのは目を血走らせて『起死回生の大博打』を狙っている人たちばかりである」

    「大博打」笑。確かに!

    目の前のモヤモヤを霧が晴れたようにスッキリ整理してくれる気持ちよさ。
    もちろん何でも二項対立で単純化しようなんしてるわけではなく、複雑なものは複雑なままで受け取れる知性の大切さをきちんと述べる。
    そういった整理の仕方を私たちに提示してくれる貴重な存在だと思う。

    学ぶことに関しても
    「無知というのは、単に知識が欠けているということではない。そうではなくて、無知の知識が頭に詰まっているせいで、新しい情報入力ができない状態のことを無知と呼ぶのである」

    なるほどなるほど。

    5月下旬には複数の本が出版されるようだ。全部買ってしまうだろうなぁ。

  • 『だからあれほど言ったのに』まえがき&あとがき - 内田樹の研究室(2024-02-19)
    http://blog.tatsuru.com/2024/02/19_1057.html

    『だからあれほど言ったのに(マガジンハウス新書)』 — 内田樹 著 — マガジンハウスの本
    https://magazineworld.jp/books/paper/7523/
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    (yamanedoさん)本の やまね洞から

  • 紐解き始めると頁を繰る手が停められなくなり、素早く読了に至った。読後に、本書で話題にしていた様々な事項に関して頭の中に浮かんで巡っているかのような感じがする。余韻が深い内容だと思う。
    本書は、著者が様々な形で発表した文章、或いは講演活動を盛んにしているようなので、その講演記録という場合も交じるようだが、出自が異なる色々なモノを集めて生まれた一冊であるようだ。とは言っても、一冊に纏めるに際しての加筆等々の作業は入念に行っているらしい。そういうことなので、何処かで「色々な形で発表された文章を集めた?」と感じながらも、「幅広い話題に関して綴った一冊のエッセイ集」というようにも感じられた。
    本書で取上げられている話題は「社会と個人」、「個人の人生」、「現在を生きる世代と未来を担う世代」というような事柄に収斂されるように個人的には思った。そして“主流”となっているらしいような観方、傾向への異議や疑問を申し立てながら「こういうものなのではないか?」を説いてみようとしているような感を覚えた。
    「第1部」は「社会」ということに対しての観方、考え方という要素が強く、「第2部」はもっと「個人」に関する考え方という要素が強いように見受けられた。結局「一個人」は「社会」を見渡しながら「個人」の内側を見詰めて考えるものなのだということかもしれない。
    より大きな声で聞こえて来るような主張、論調というモノが在って、そういうのが所謂“主流”だ。そして何かの様子を観ていて、「最近はこういうような様子に?」と見えるモノが在って、そういうのが“傾向”だ。多くの場合、“主流”や“傾向”の中に然程の疑問も抱かずに入り込んで流されているのかもしれない。が、“主流”や“傾向”に関して「本当に正しいのか?」と各々が独自に考えてみることが大切で、そういうところからより幸福な何かが見出され、それを掴み得るというのが著者の伝えようとしている事柄なのかもしれない。
    豊富な話題が供される本書であるが、「貧乏」と「貧乏くささ」との差異という論、「境界線」という論、「愛しようとすること」に対する「傷つけないようにしようとすること」という論など、幾つも強めに記憶に残る話題が在った。
    殊に「境界線」という論である。考え方の明らかな違い、立場の違いで「境界線」を明確化するばかりでも、何かが如何なるのでもない。寧ろ「境界線」の逆側に在る人達が、線を越えて向かってくるというような可能性を排除しないべきだというような論だった。色々な事柄で「言い得て妙」なのではないかと思った。
    色々な形で、著者は「もう少しこうなのではないか?」という論を世の中に向かって問いかけ続けて来た。それでも何やら「閉塞感」のようなモノに包まれているような気分が拭えない。そういう中で「だからあれほど言ったのに…」という句が漏れ、それを本書の題名としてみたのであろう。
    何か、漫然と考えていて形が定かでも無かった事柄について、本書を読んでみて論客が与えられたというような感じで、読後の満ち足りた感じも少し大きい。
    自由に考え、自由に想像を試みる人達が見受けられる穏やかな社会に、無限の可能性を否定されない子ども達が徐々に入って行くというような様子を、著者は善いと考えているのかもしれない。全くそのとおりだと思う。本書のような材料も得ながら、人は自由に色々な事を考えるべきだ。御奨めしたい一冊との出逢いに満足している。

  • 改めて本を読んで視野を広げることの楽しさを感じました。人生には、即決できないことの方が多いような気がするので、周りに多大な迷惑をかけない程度に大いに悩んで喚いたりしながら、考えていこうと思います。

  • 単著は久しぶりかも。でもいつもの内田節。共著はちょくちょく読んでいるから、それほど久しぶりな感じもせず。安定感抜群の読み心地。本題とは外れるけど、前書きでタイトル決定について触れられていて、”本の雑誌”の特集がそれだったこともあり、なかなかに興味深かった。あと、これも前に読んで大きく首肯した部分だったけど改めて、子どもは愛するより傷つけないのが大事、と。この考え方には、今のタイミングでもう一度触れられてよかった。

  • 様々な媒体に発表した文章を集めたコンピレーション・アルバムのような本でした。極めて多作な内田センセー、相変わらずの切れ味ですね。子どもを傷つけず、無垢な大人に育て上げる・・・ ネオリベ全盛の現代では難しいでしょうね。現役時代は仕事柄登校拒否の子どもに係わることもあったのですが、今どきの子どもたちの受けるプレッシャーは半端ないようです。彼らが安心できる「アジール」を見つけることができればいいのですが・・

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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