今宵、あの頃のバーで (将棋連盟選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784839940805

作品紹介・あらすじ

週刊文春で好評連載中の「先ちゃんの浮いたり沈んだり」から選りすぐった81編を再編集して収録。

感想・レビュー・書評

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  • 将棋好きの人でない限りは絶対手にとらない本です。将棋界のこと、プロ棋士仲間たちのこと、たくさんの将棋指しが登場してくる。

    先だってら先崎学九段がうつ病を患ってその壮絶な苦難の乗り越えて回復するまでを綴ったエッセイを出したのは2018年のことだから、それ以前に書かれたものです。2000年頃から「週刊文春」に毎週掲載されたものを編集出版したものです。ですから懐かしい方達かでて来ます。広瀬章人五段、佐藤大五郎九段(懐かしい〜!)のこと、真鍋一男九段(もう亡くなられてたんですね)、
     将棋対戦でのことや、対局以外の過ごし方とか、将棋を指してない時の頭の中の思考の傾向とかが出てくる。普通の人とはちょっと違った世界である。
     大体一日中将棋のことが頭の中を占めてるみたいかな。でも、脳は休める時間が必要なので将棋以外の過ごし方も大切になってくる。その過ごし方を覗くのも楽しみのひとつと思って手にした。

     著者のリーグ戦対局のスタンスに「ブラス八分の一の状態」で戦うというのがある。著者の造語で自分の実力に及ばない結果を他の人の結果をにかけるということ、いわば「他力」にかけるんだそうだ。競争相手が3人負ければいいから八分の一というわけだ。

     将棋対局以外の時間の過ごし方は将棋教室、これは全国然久、どにでも行くらしい。旅行も兼ねてるかも。マージャン、読書、囲碁、食事会、居酒屋で一人で一杯。里見香奈女流名人がまだ高校生の頃もある。自分の駒を捨て「相手の玉頭に歩を進めるという過激で勢いのあるいい手を指している」ころだ。あと林葉直子の全盛期の頃がでてくる。この二人の出現期は似ていたそうだ。同じくセーラー服を纏いながら将棋を指していたとか。

     まあこんな感じで、将棋指しは狭いところで生きてるような気がしたが、この本を読んでるとどっぷりその世界の時間の流れがあまりにも穏やかにゆっくりと流れていくのを感じられた。それもいいなと思う。すべてを投げ出して、好きなものに没頭できるって素晴らしいことである。

  • 先崎学八段の週刊文春連載「フフフの歩」エッセイの単行本。同時期に出たエッセイ集「棋士・先崎学の青春ギャンブル回想録」がパチスロという余技ならば、こちらは本筋・本業の将棋に関するエッセイ。私が将棋観戦をするようになったのもこのエッセイがきっかけであり、言わば師匠に当るのが先ちゃんこと先崎だ。お蔭様で将棋の技術には全く詳しくないが棋士の生態には非常に詳しくなる一方だ。

    こういうエッセイで感想も何も無いのだが、幾つか記憶に残る話題がある。羽生二冠が勝ちを確信した際に指が震える、というのは比較的良く聞く話だが先ちゃんもまたこの震えを経験しているようだ。やはり勝ちを意識して絶対にここからは間違えられない、というときに震えたとのこと。羽生の指が震えると観戦記などで大きく書かれているが、ひょっとするとこれは結構棋士の中では一般的な現象なのかも知れないと本書を読んで思った。

    また良くある質問で「対局中に何手位読むのか?」と言う事に対して此れまで納得のいく回答は棋士から無かったのだが、ナント、先ちゃん実際に例を出して数えて見せている。序盤で65分の長考した際に読んだ手数の回答は、690手だそうだ。一分間に約10手・・・。それも頭の中でだ。恐らくタイトル戦の重要局面ではもっと読んでいる棋士も居るのだろうが、後日、改めてそれを解説し数えてみるなんてことは先崎以外には出来やしない快(怪)挙だろう。

    前作「山手線内回りのゲリラ」が出たのが2007年だから、既に4年余の時間が経っている。つまり4年もの記事を圧縮しているので随分と選に漏れてしまったものもあり残念という気持ちだが、厳選したものだからどこから読んでも楽しめ、ハズレは無い。

  • 著者の名は「3月のライオン」の監修者として知った。エッセイが何冊も出ていることを知り、ちょっと読んでみようかと手に取ったら、いやいやこれが面白い!以前の文春連載からセレクトされたものが収められているので、話題は少し古いけど、たいそう楽しんで読んだ。

    私は将棋は指さないが(理詰めで考えるのは苦手)、以前から将棋関連の話は大好きで、あれこれ読んできた。将棋って、ゲームではあるんだけど、「偶然」という要素が一切ない。とことん知力の闘いであるところがすごいと思う。プロになれるのはほんの一握りで、それをくぐり抜けても、待っているのは厳しい対局の日々。自分の頭脳だけを頼りに勝負に挑んでいく棋士の姿には、なんとも言えず胸に迫るものがあると思うのだ。

    そして昨年、彗星の如くあらわれたのが天才藤井聡太君。フィクション顔負けの展開に目が離せなくなり(プロ初対局の相手が加藤九段だなんて。やはり「運命の星」ってあるんだなあ)、これまでとは比べものにならないほど熱心に将棋界の動きに注目するようになった。そこで知ったのが、二十代の若手実力棋士がどんどん台頭しているというホットな状況。藤井君以外にも見所満載なのである。

    いやあ最近の若い棋士って格好いいですねえ。アイドルユニットを作ってもいけるんじゃないかというスマートな容姿の方がゾロゾロ。テレビ解説なんかのトークも達者で、まったく感心してしまう。駒の動かし方くらいしか知らないのに、アベマTVの中継なんか見たりして、こういうのも将棋ファンのうちに入るのか微妙だが、そんな人って結構いるような気がする。

    この本の中で先崎さんは、立派な大学を出ていたり、常識的で普通の社会人として十分通用するだろうという若い棋士について、「なんでまた棋士になんかなろうと思ったのか」と書いている。確かに、かつての将棋のイメージは今とは違っていたと思う。煙草の煙がもうもうと立ちこめる部屋で、強面のオジサン同士がしかめっ面で向かい合っているという感じ(あくまで個人の感想です)。

    修羅場をくぐり経験を積んだ方が強い、という「常識」を鮮やかに塗り替えたのが谷川浩司九段だと、作家の大崎善生氏が書いていた。その後羽生善治というスターが登場し、一大ブームを巻き起こすわけだ。羽生竜王(手が勝手に「名人」と書きそうになるが)のシャープで清潔な雰囲気が、棋界の印象を大きく変えたことは間違いないだろう。

    ギャンブル好きで大酒飲みだという著者は、かつての無頼な棋士の雰囲気をまとっている。勉強嫌いで「中学校中退」だとも。しかし、その文章はいたって知的。笑えるところも随所にあり、うまいなあと思う。近著の「うつ病九段」や以前のエッセイも読むことにしよう。

  • 図書館
    読みやすい。
    山口恵梨子2級が出て来てびっくり。
    そんな時代か。
    断捨離で1日で25袋捨てたのはすごいと思った。

  • 先崎学さんの「今宵、あの頃のバーで」、2011.10発行です。週刊文春連載のエッセイを単行本化したものです。家族、ギャンブル、食べ物、政治は避けてるそうです。当然のことですが、将棋関係が多いです。若くして女流名人になった順は、林葉直子、中井広恵、そして里見香奈(17歳、高校3年生)だそうです。改めて林葉、中井のすごさを感じます。その里見香奈さん、筋トレと格闘技好きだそうで、出雲の家では腹筋・背筋を、好きな漫画は「空手バカ一代」とかw。現在3段リーグで4連勝中、4段昇格を期待しています。

  • とある棋士の日常を綴ったエッセイ、というよりも、日記のような感じ。さすがに文章はそこそこうまいものの、それぞれの話でおもしろさ(そして著者のテンション)の落差が大きい。個人的には、やはり普段なかなか見ることができない棋士の舞台裏の話が好き。傑作というほどではないが、あほど飽きず、ダラダラと読むことができる。

  • これを読むと棋士の方々にも親近感がわいてくる。

    周りの棋士の言動を面白おかしく語り、あまり他の本では見えてこない将棋連盟の事柄についても触れていて興味深かった。

  • 先崎さんの本はどれも面白い。
    将棋会の裏を書いた本は、どれも面白い。
    ゆえに、この本はとても面白い。
    それでも以前ほどと感じないのは、若い棋士たちの個性が昔の人ほどでもないのか、先崎さんの切込みが浅くなったのか、丸くなったのか。
    まあ、そういうところですな。

  • 『3月のライオン』という漫画の将棋監修をしているという棋士のエッセイ集。
     棋士。
     勝負事を生業とする職業だけあって、エッセイもさぞや凄味のある語り口だろうと思いきや、話し言葉が主体で親しみやすい文体でした。
     内容も、普段は知る事のない棋士の世界を垣間見るモノであり、たまには将棋の一つも指してみようかという気になったものです。
     将棋…最後に駒を手に取ったのはいつだったか。
     中学の頃?
     していると、かれこれ10年以上はやってないわけだ…

     あと、先入観というか印象として。
     将棋というのは理詰めで勝負するモノだと思っていましたし、今ではやはり理詰めでアプローチされるモノらしい。
     しかしその昔は情緒的なゲームであり、情念のゲームとあったのは意外でしたな。

  • ストレスなく楽しく読むことのできるエッセイ。これを連載で続けるというのは、すっごいことだと思う。

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著者プロフィール

先崎 学(せんざき まなぶ)
1970年、青森県生まれの将棋棋士。九段。
エッセイストの側面もあり、多くの雑誌でエッセイ・コラムを持つ。羽海野チカの将棋マンガ『3月のライオン』の監修を務め、単行本にコラムを寄せている。
著書多数。代表作に『フフフの歩』、『先崎学の浮いたり沈んだり』、『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』など。

先崎学の作品

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