季節を脱いで ふたりは潜る

著者 :
  • 雷鳥社
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784844137771

作品紹介・あらすじ

幾重にも着込んできた 季節をすべて脱ぎ捨てて、
今では遠く無くしたものに、水の中で手を伸ばす——。

『かのひと 超訳 世界恋愛詩集』以来、3年ぶりとなる菅原敏の新詩集は、
移ろいゆく暮らしを、やさしく抱き寄せ、綴った季節の詩。
〔読者特典:電話朗読付〕

燃やすとレモンの香る詩集や、毎夜一編の詩を街に注ぐラジオ番組など
数々の試みをおこなってきた菅原敏が、
今作では、遠い日々の断片を拾い集めてぺージに挟みこむように、
季節の情緒を12ヶ月の詩に写しました。

カバーを“脱ぐ”とあらわれる肌のような表紙や、
帯につくられた“小さな海” など、こだわり抜いた造本。
さらに朗読などの公演が叶わない今、一篇の詩を電話でお届けする
読者特典〔電話朗読室〕の電話番号を本書の中に隠しました。

雑誌『BRUTUS』での連載を中心に、
近年の代表作含む、12ヶ月×4編〔全48編〕を収録。

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>4月
暮らし
アスファルト上の片手袋を拾い上げると爆発する冬が終わって、動物たちが巣穴で目覚めるころ。やさしい光のなかでも私たちは少しだけ狂ってる必要があった。ほぼ毎日彼女は家にいるので、通帳なのか未来の姿なのか、私は何かを見ないようにと驚くほどに毎日眠る。オムレツリンゴヨーグルト、朝飯を食べ終わると午後三時。彼女の肌も荒れてきた。幸せな暮らしと正しい暮らし。睡眠薬とビタミン剤。それぞれの違いを交換したら洗濯機、私は彼女の下着を洗う。

>7月
冷たい水
肌と肌の輪郭が
あいまいに消えされば
国境を越えて
なめらかな山の稜線
カーテンの隙間から
初夏の日差しが
背中を打ち抜いて
ちいさな午後の死
ラジオのニュース
遭難者2名
同じコップで水を飲み
眠りに落ちる前に聞いた
ひとつのからだで
いきるための理由

感想・レビュー・書評

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  • 日々の暮らしのなかを移ろいゆく季節を。少しずつ切り取って差し出してくれる。ザアザアと雨が降るせいでところどころ聞こえないのを想像で補う楽しみ。相手ごと押し花にして思い出を閉じ込めたいという思い。バスタブで聞く音楽。

  • 四月から始まる、始まるのに遠く戻っていて、一年が過ぎていく。何度も読みたい。

  • チョコレート色の見返しをめくると、物語のような詩いちねんぶん。

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著者プロフィール

詩人。2011年、アメリカの出版社PRE/POSTより詩集『裸でベランダ/ウサギと女たち』をリリース。以降、執筆活動を軸にラジオでの朗読や歌詞提供、欧米やロシアでの海外公演など幅広く詩を表現。近著に『かのひと 超訳世界恋愛詩集』(東京新聞)、燃やすとレモンの香る詩集『果実は空に投げ たくさんの星をつくること』(mitosaya)。
東京藝術大学 非常勤講師

「2021年 『季節を脱いで ふたりは潜る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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