- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784845117130
作品紹介・あらすじ
1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけ。そんな中、関西生コン労組は、労組の活動を通じて、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も実現した。そこへヘイト集団が妨害を加え、そして警察が弾圧に乗り出した。なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合つぶしが行なわれているのか。迫真のルポでその真実を明らかにする。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
日本は企業別労組が中心で、産別労組が少ないので、労組の影響力が限られている、と昔習った記憶がある。そんな日本で、しかも労組の組織率が風前の灯の21世紀の日本で、営々と機能し続けてきた産別労組があることに、まず驚いた。そしてその労組の活動が「労働運動」でなく「暴力集団の所業」と読み替えられ、警察・検察・裁判所が束になってそれを認定していく、というそら恐ろしい出来事が丹念に描かれていく。大企業がカルテルを結んで利益を貪るのと、立場の弱い労働者や下請け業者が足並みを揃えようとするのを、意図的にであれ素朴にであれ、形式的に同一視するメンタリティが世の中に広く浸透していそうなのも怖い。労働運動はその性質からして、お行儀よくばかりはしていられないが、そうした活動を、お行儀よく勉強して検察官や裁判官になった人は理解できないのだろうなと思った。そしてそうした人々が、政治や経済で主導的な立場にある人たちと同化して、無自覚に権力の片棒担ぐ様に胸が苦しくなる。そしてまたそうした状況に警鐘を鳴らすどころか迎合しかねないマスメディアの惨状にもやりきれないものを感じる。そうやって労働者が皆お行儀良くされた結果が、先進国で唯一賃金の上がらない国となった日本なのだろう。本当に多くの人に読んでもらいたいと思う本だ。
-
こんなに理不尽なことがあっても世の中に正しく報道されないことが怖かった。
大手企業→政府→警察と手を組んで、合法的な労働運動を「恐喝」だの「威力業務妨害」として諸々取り締まる。
権利としての労働運動をした結果、89人も逮捕され、それは戦後最大規模だというのに、メディアは「恐喝未遂」「暴力的な団体」と報道する。
「それって、日本の話なの?」
と、著者が冒頭で述べた言葉もうなずける。
どこかの誰かの話ではない。今に自分もそうなるかもしれない。 -
関西生コン労組の逮捕事件を丁寧に取材した労作。
労組が崩壊した日本の行く末を憂う。 -
東2法経図・6F開架:366.62A/Ta64c//K
-
「闘う労働組合」潰しのため、産別組合によるまっとうな労働運動の犯罪化が行われているという観点で、ジャーナリストの著者が関西生コン事件を深掘り。
著者の問題意識、危機感は理解できたし、現代日本で起きた出来事としてちょっと薄ら寒い気持ちにはなったが、関生支部を擁護する著者の主張に納得がいったかというと、必ずしもそういうわけではなく、本書の評価については判断を保留したい。組合員のいない会社への団体行動や解決金の要求なども、労働組合の世界では国際的な常識と言われても、ちょっと違和感は拭えなかった(著者は、裁判官の無理解と指摘するが、実際、労働組合法の解釈として、会社側に組合員がいなければ争議行為の対象となる使用者性なしとの判決が出ているわけで、少なくとも労働法の解釈として著者と違う立場も十分あり得るのだとは思う。)。
なお、タイトルが『賃金破壊』となっているが、本書の内容からいうと、『労組破壊』などのほうがよかったのではないか。内容とタイトルがあまり一致していないような気がした。